-眩しい季節-
呉の告白は、失敗したが、そうめげている様子ではなく、部活で知り合った子と仲良くLIMEしてるらしい。
「いい季節になりましたなぁ。敦くんや」
「ほんとだなぁ。眩しすぎるぜ、呉さんや……」
今日から6月で、衣替えの季節となった。
これまでの冬服とは違って、夏服は……
半袖!!ミニスカート!!の季節!!
そして!!
「水着だよなぁ」
「そうそ……げっ」
俺らのおかしな声が出て聞こえたのか、亜澄率いる数名の女子が、俺らを睨んでいた。
「な、なんだよ!」
「あ、江尻さーん!」
呉、お前振られたんだよな?亜澄、お前も手なんか振りかえすな!
「男子の制服は、変わらないのね?」
俺らの制服は、冬から夏へ生地が違うだけで、見た目変わらず。
女子のは、生徒会が掛け合って今年から変わる事が去年決まったとかで、制服目当てにこの高校を選んだクラスメイトもいた。
「でも、残念ね」
「何がだよ!」
「あなたたち男子が期待してる、体育の授業。今年は、別々にやるのよ? 知ってた?」
亜澄の少し棘のある言い方に、周りの男子が食らいつく。
「え? なんで?」
「今年の授業から、プールのみ男子と女子は別々なんですってよ!」
「……」
─別々?
「「「はぁぁぁぁぁぁっ!!」」」
「「「なんじゃそりゃぁぁぁっ!!!」」」
嬉しがる女子!
落胆する男子!
「あ、澤田くん。知らない?」
そう声を掛けてきたのが、近江櫻子。
「何が?」
「今年から女子のプールね、中央体育館のプールで……」
「「「はぁぁぁぁぁっっっ!!!」」」
「俺らの癒しがぁ!!!」
「なんで、女子だけなんだよぉ!!」
市内の中央体育館のプールは、去年新しくされて、俺も行った事がある。広いし、温水だし、デッキチェアにサウナにジャグジーがついている。普通に体育館使うだけで、2000円も取られる!!
「ざーんねんでした! 行こっ」
ゾロゾロと亜澄達が、教室を出ていくと、何故か教室には男子しかいなかった。
「しかも、今年から水着は自由になったってーのに!」
「セパレートのみだけどな……」
「見たかった……」
「……」
「俺の江尻さんっ!」
バシッ……
─なにが俺の江尻だ!お前、振られたんだろーが!
「あ、俺水着買ってねーや」
「俺もだ。注文した日、忌引きで休んだんだっけ」
「俺らも水着は、派手で無ければ自由だし?」
「いっちゃう?」
「買っちゃう?」
って事で、学校帰りに男3人で買いにきた!
「すごい……」
「なにこれ? こんなちっちゃいの?」
─いや、お前らが見てるのは、女の!
「変な目で見られてるから! こっち!」
周りで水着選んでる女性の視線が、痛かった。
「ベースが、黒なんだって……」
「うん……」
前に貰った水着購入のチラシをみながら、それと似た感じのを探す。
「これか?」
「こっちは?」
「あ、俺これが…ダメか」
それでも、なんだかんだ探して、やっと大丈夫そうなのを見つけた。桃子さんには、夕飯はいらないといってあるから、3人でマック!
「…で、なんでお前らがいんだよ!」
「いいじゃん、別に…」
「ねぇーっ!」
「それよりも、あなたたちちゃんと水着買ったの?」
「は、はい! 江尻さぁん」
─呉は、今度処刑しよう?
「そういや、澤田さんたち。テスト勉強……」
「テスト?」
「勉強?」
「なにそれ……」
ハンバーガー齧りつつ、ポテト貪りつつ……
亜澄達に、来週行われる数学のテストの範囲(予測)を教えて貰った。
そして、家でも……
「ね、ちゃんと聞いてるの?」
湯上がりのいい匂いが、亜澄から漂ってくる。俺も風呂は入って、パジャマではあるが……。
「あ、うん。一応、出来たけど……」
亜澄が教えてくれた基礎問題なのに……
「一点って、あんた。5問あるんなら、せめて3点は取りなさいよ! ばかっ!」
「俺、勉強嫌いなんだよ」
決して、全ての勉強が嫌いではないが……。数学と英語だけ頭に入ってこない。
「あのね、私だって前から勉強なんか好きではなかったわよ」
「……。」
「ほら、ちゃんとして……」
「はいーはい」
渋々、勉強に取り掛かる。わからないところは、亜澄に教えて貰いながら…。
その甲斐あって、なんとか平均点以上取る事が出来た。
やはり、このクラスのトップは亜澄だった。2番手は、副委員長の小松崎。
最近、こいつはやたらと亜澄に寄ってくる。
「ムカつく…」
「へ? なにが? 俺?」
「じゃねーよ! おい、そろそろ行くぞ」
5時間目は、プール開きでこの日だけは、男女混合らしく、女子がうるさい位に騒いでた。
この高校もかなりお金をかけてるだけ合って、1つのプールに2クラスも入っても余裕あるし、それがあと1つある。
俺は昨日亜澄に、水着を見せて貰ったからいいが……
亜澄のプロポーションは、かなりいいらしく……
─停電の時、偶然にも俺の右手は亜澄の……
「おい、敦。お前、大丈夫か?」
「へ?」
「先生! 敦、鼻血ー!!」
鼻血?え?なにこの量?!
たかが鼻血でも、俺の出した量は多かったらしく……
楽しみにしていたプールを見学する羽目になった。
「残念だったわねぇ」
「うん……」
父さんは、今日明日大阪に出張で桃子さんと3人での夕食。
「まーた、なんかやらしい事でも考えてた?」
「は?」
─言える訳がない。亜澄の胸の感触を思い出していただなんて……。
「亜澄、それは言い過ぎよ」
桃子さんが嗜めると、小さくごめんと呟いた。
「ごちそうさま。風呂いってきます」
「あ、じゃ、私も!」
「「え?」」
「変? だってお風呂入ってる時に、急変したら嫌だし?」
「は? 急変?」
桃子さんは、照れたような感じの笑い方で、
「水着、着てくれるなら」
オッケー出した。
─桃子さーーーんっ!!!止めて!止めて!
「ね、変じゃない?」
「いや、普通に可愛いと思います」
「そう? ならいいけど……」
確かに水着を着た亜澄は、可愛いと思う。思うが、目のやり場に困るのだ。サイズはわからないが、水着の小さな布では隠しきれない胸のサイズに、下は下でお尻も前も盛り上がってて……。
「痛かったら言ってね?」
ボディソープを泡立てたタオルで俺の身体をゆっくりと洗ってくれるのはいいけど……。
「どうして? どうしてダメなの?」
「いや、ここはいいから!! ここは、自分で洗うから!!」
こんな行動、桃子さんが知ったら卒倒しかねないし、父さんにバレたら俺追い出されかねん!
狭いバスルームの洗い場で、タオルで前を隠し逃げる俺と何故そこを洗わせてくれないのか?と懇願する亜澄。
「いや、もう十分だから! な、湯船に浸かって?」
「……でも。君は、今日鼻血出したし。もしかしたら、また倒れるかも知れないでしょ?」
─いや、単にプールを見学しただけだろ?倒れてはいないし。そもそも、鼻血出したのも…。
狭いバスルームの中で、攻められる俺!
それでも、なんとか亜澄を湯船にぶっ込もうとして、手が滑り、足も滑り……。
ガタッ……
壁に亜澄がぶつかり、俺はそのままぶつかって……
ブチュッ……と唇が当たった。手は、なんか柔らかい……。
「ば、ばかっ!!」
思わず突き飛ばされて、亜澄は水着のまま出て行ったのを、桃子さんに見られ、30分位説教のような?事情聴取のような?をされた。