第3話 怪しい店
コン、コン、コン
「お邪魔します。」
中に入って見渡すと薄暗く埃っぽい店内にランプが一つ周りを照らしていた。
「おや?いらっしゃい。」
(おかしいですねぇ...。証が異邦人に渡ったなんて話は聞いていないんですけどねぇ?)
そこには怪しい風貌の人物がいた。
まるでピエロの様な赤い丸い鼻がついており、深めの帽子をかぶっている。サングラスでもしているのだろうか目元は暗く見えない。赤、青、黄の縞々な服を着ており、その上に黒と白の上着を着ている。
見るからに怪しいな。
「ここはどんな店なんだ?」
「見ての通り雑貨屋ですよ。」
「雑貨?剣や槍みたいな武器が多いように見えるんだが?」
「ふふふ...。これですか?これはですねぇ私どもが収集した珍しい物や良さそうな物を置いているのですよ。もちろん本当にただのガラクタやゴミみたいなものもありますがね。」
「これ全部集めたのか?かなりの量あると思うんだが...。」
「うふふふ。もちろん私1人だけではありませんよ。」
なんか胡散臭い笑い方だな。
「それにしても、どうやってここを見つけたのですか?証を持っていないとここに来れないはずなのですが...。一応確認しますが証を持ってはいませんよねぇ?」
「ん?証?何だそれは。そんなの持っていないぞ。」
「本来ここに来る為には証が必要なのですよ。というか証がないとそもそもここを認識できないようになっているはずなんですがねぇ。」
「その証とやらがあればこの店に来れるのか?」
「ええ...。正確にはこの店というわけではないのですが概ねその認識で合っていますよ。私たちの店は固定の場所ではなく魔法により様々な場所に色々なかたちで現れるのです。」
「様々なかたち?」
「ええ...。少々お待ち頂けますか?確認してきますので...。」
「ああ...。店内を見させてもらって良いか?」
「ええ、ご自由にどうぞ。ただ危険なものもありますので触らないようにしてください。あーそれと鑑定はこの店内ではできないようになっているので。」
「そうか。」
それにしても色々あるな。巨大な斧に鉤爪?みたいなものがついた三節棍。禍々しい処刑鎌。剣もかなり多くあるな。3メートル以上もある巨大な剣やレイピア、真っ黒なナイフ。あとなんか光ってる剣もあるな。おっ刀もいくつかあるな。武器以外にも鎧や指輪、ネックレスなどの装備品や装飾品もある。あとはなんだかよく分からない道具?機械?も多くある。見てるだけでも時間がすぐに過ぎていきそうだ。ん?これは...。
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「いやぁ、すみません。お待たせしました。どうやら少し魔法が弱まっていたようで...。ですがこのくらいでここが見つかるとも思えないのですが。因みにどうやって見つけたか教えて頂けますか。少し割引しますので...。」
「割引とは?」
「ええ、本来は1人につき証は一度しか手に入らないようになっているのです。そしてここにたどり着いた方はこの店の商品の中で気に入ったものを一つその人が持っている所持金の全額で購入することができるのです。そこを今回は全額ではなく所持金の8割でお売りいたします。もちろん、今回何か買ったとしてもお客様が証を見つけた際にはまた店に来ていただけます。」
「うーん、分かった。それでお願いしよう。というか所持金が少ないほうが安く買えるってことか?」
「ええ、もちろんそうですよ。ただし、所持金が0又は借金がある場合は何も買うことはできません。それに一度店に入りその後店を出るともう二度と入ることはできなくなります。まあ、あなたはもう一度だけ入れますが。つまり、お金がない状態でこの店に出会ってしまうと貴重な一回を失ってしまいとても勿体無いことになるのですよ。」
「そうか。」
「ええ。それでは教えていただけますか?」
「ああ。といっても、正直俺もよくは分かっていないぞ...。まずこの裏路地に入りかなり奥の方まで進んだのだが、そろそろ一度戻ろうと思い来た道を引き返していたんだ。そしたら、この店があるあたりで何か違和感を感じてなあ。何だろうか考えていたんだが、どうもこの店が一度通ったときの記憶と違っているような気がしてな、少し気になったから入ってみることにしたってわけだ。」
「なるほど...。それにしても一度通っただけの道を細かく覚えているとは...。ですがなんとなくですが分かりました。どうやら魔法が弱まっている時にあなたという桁外れの記憶力をもったイレギュラーがここを通ってしまったと...。はあ。とりあえず一安心です。」
「?そうか。よかった。」
「それにしても自力で見つけるとは...。そうだ何かスキルが手に入っていませんか?」
「スキル?」
「ふむ。おかしいですね?自力でここを見つけられたのですからスキルが手に入っていてもおかしくはないのですが...。もしかしてステータス画面を開かないと通知が分からないような設定になっているのかもしてませんね。」
「そうか。では、ステータスオープン」
ピロン
『スキル【看破】を手に入れました』
『スキル【直感】を手に入れました』
『称号《見破る者》を得ました』
ん?称号?それにスキルも2つ手に入っている。
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称号《見破る者》
隠されたものを自力で見破った者に与えられる。
効果:隠されたものを見つけやすくなる
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なるほど。どのくらい効果があるかは分からないが、あるに越したことはないな。
「どうですか。ありましたか?」
「ああ、あったよ。ありがとう。」
「ふふ、これからはこまめに確認するか設定を変えておいた方がよろしいですよ。」
「すまない。そうするよ。」
「ええ。それでどうします?何か気になるものはありましたか?」
「あぁ。2つほど気になるものがあるのだが...。」
「ふむ...。それでしたらどちらかをもう一度来る時まで他の人が買わないように取り置きしておくこともできますよ。どうします?」
「それでじゃあお願いするよ。」
「かしこまりました。それで、どれが気になったのですか?」
「ああ、ここにある刀とあそこの剣がなんか気になるんだよなぁ。」
「ふむ、こちらの刀とあの剣ですか?あの剣、どうやら錆びているようですがよろしいので?」
(この刀に目をつけるとは面白い。ふふふ、果たしてこれに認められるのでしょうかねぇ?それにしてももう一つの剣はどうして選んだのでしょうか?それにあんな物ありましたかねぇ?)
「ああそうだ。刀の方はまだ扱える気がしないから次来た時にするよ。取り置きしておいてくれ。今回はあの剣でお願いするよ。」
「かしこまりました。」
(意外ですね。明らかに強そうな刀でなく錆びた剣を選ぶとは...。ですが、今のままでは扱いきれないと自覚しているのは好感がもてますねぇ。どうやら異邦人は自身の力を過信する人が多いらしいですからねぇ。)
「それでは所持金の8割の8000Gを頂きます。」
確かステータス画面からお金を払えるんだったよな。えーっと、こうしてこうか?
『8000Gを払った』
「これでいいか?」
「はい。確かに頂戴いたしました。それではこちらの剣をどうぞ。」
「ありがとう。ふむ、しっかりとした重みがあるな。それになんだか手になじむようだ。しっくりとくる。」
真っ黒な剣だがかなり錆びているように見える。それに刃も錆びついて切れないのでは?うむ...。なんか気になったからこれにしたが他のやつの方がよかったのか?まあ、とりあえず使ってみればわかるだろ。それに店を出れば鑑定できるからな。
「それは良かった。」
「ああ...。」
「それではまた証を見つけていらっしゃるのをお待ちしております。あーそれからこの店のことはどうかご内密に。人に知られ過ぎるのはあまり好ましくないのでねぇ。噂くらいがちょうど良いのですよ。それでは扉を出ると元の場所に戻りますので。」
「ああ、また来る。」
ピロン