第19話 魔力
手加減か...。
そんなつもりはなかったんだが...。
思い当たる節が無いわけではない。おそらくあのことが原因の一つだろう。だがどうやって無意識でしてしまう手加減をやめることができるのかが分からない。というかまず、自分の全力が分からないな....。だが知ろうと思っても無意識のうちに力を制限しているから結局分からないのかもしれないな....。何かきっかっけでもあればもしかしたら無意識のことまで変わるかもしれないが....。
「まあ、取り敢えずはできることからしていこうかのぉ。」
「...ああ、そうだな。ちなみに師匠はどのくらい手加減していたんだ?」
「ふむ...。まず初めに言っておくが最初から儂とまともにやり合えるとは思わないことじゃ。お主らと儂では文字通りレベルが違いすぎるからのぉ。素のステータスで簡単にお主らの攻撃は防げてしまう。じゃから儂は敢えてお主らと同じくらいまで制限してしておった。お主が儂の防御を突破できなかったのは一番大きな要因は魔力じゃの。お主は確か魔力操作は覚えておるんじゃったか?」
「覚えているぞ。」
「それならばいずれできるようになるはずじゃが。魔力を体に纏うことで防御力を上げたり身体能力を上げたりすることができる技術がある。さらにうまく扱えるようになると剣などの武器に魔力を纏い斬れ味や破壊力を強化することができる。」
「なるほど。それで金属のように硬かったのか...。」
「そうじゃ。それにさらにその上の段階もあるからのぉ。まあそれは今は置いておくとするかの。まあ、まずは瞑想でもしながら体の中で魔力を自在に操れるようになることじゃの。自分の体の中の魔力は最も制御しやすいからの。」
「分かった。」
「まあいずれはこのくらいできるようになってもらうぞ?」
そう言うと近くの木に向かって手を横に振り抜いた。
フッ
「ほれ。その木を押してみるのじゃ。」
言われた通り押す。
ギィー
ドンッ!!
すると木がゆっくりと倒れた。
なっ!木に触れてすらいなかったぞ!それに木の断面はとてもすべすべきれいだ。
「今のは右手の先に剣のような形に魔力を集めたのじゃ。剣士でない儂ですらこのくらいできるのじゃから本当の剣士だともっとすごいこともできるのじゃろうな。まあ剣を持たぬ剣士がおるくらいじゃからの。まあ儂は殴るほうが好きなのじゃがのぉ。ふぉっふぉっふぉ!!」
「そ、そうか...。」
そうこういっているうちに家まで帰ってきた。
「明日から本格的に修行を始めるからの。しっかりと寝るようにするのじゃ。」
「ああ。」
何気にゲームの中で寝るのは初めてだな。ちなみにゲームの中で寝ても当然周り時間は進んでいる。そしてある程度の時間が経つか、何らかしらの要因によりアバターが強く影響を受けた時に目が醒めるようになっているらしい。
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「・・・・れ・・・・し・・・・これっ!起きるのじゃ!」
「っ!」
「全くやっと起きたのぉ。」
「す、すまない。よいしょっ。」
外に出たがまだ薄暗い。
まだ明るくなる前か?
「こんな早くから起きるのか?」
「当たり前じゃ。それより早くいくぞ。最初は起きたばかりじゃから軽く体を動かすぞ。」
「ああ。」
「まずはあそこじゃ。見えるかの....あの赤い葉のある木がてっぺんに見える場所じゃ。あそこまでそうじゃのぉ。サスケお主は30分、HAKIお主は40分以内に到着するように。」
あそこか...かなり遠いな。
「それじゃあ儂は先に行っておるからの。」
フッ
そう言うと一瞬でこの場から消えた。
なんだあのスピードは!?今のは転移のように移動したんじゃない。ただ走って移動しただけでまるで消えたかのように見えたのか!こんなにも差があるのか....。
「ウキキ!」
「そうだな行くか!『速度上昇』」
そう言って走り出す。
最初は俺の方が速かったが木が段々と多くなってくるとサスケが地面を走るのではなく、木から木に向かって跳び移りながら移動し始めた。するとドンドン速くなっていき、やがて見えなくなった。
段々と地面も凸凹になり走りにくくなってきた。目的地まで段々と勾配が大きくなっていくことと、地面の悪さを考えると制限時間の半分の20分までには残り三分の一の地点までにはいないと間に合わないな。走り始めてから今5分41秒だからこのままのペースだと遅すぎるな。後からかなりキツイだろうがペースをあげないとだな。
・
・
・
「はっはっ。」
キツイ...。だが何とか20分で目的地まで三分の一の地点までこれた。
ザー
ん?なんだ。水...?
もしかして川か!?
まずいな。スタート地点からは見えなかったから分からなかった。
大きさはそれほど大きくはないが跳びこえられるほどでもない。しかし流れがかなり速いためそのまま入って渡ろうとしてもおそらく流されてしまうな。
んーどうしようか....。おっ!あそこ川の近くに大きめの木があるな。枝が川の上まで突き出ているからあそこから跳んだら渡れそうだな。
「よいしょっ。」
木によじ登ったがあの枝の上でバランスを取れないと川に真っ逆さまだ。勢いよく走り抜けたらいけるか?
ふぅ...。
今!
木の幹から手を離し、枝の上を駆け抜ける。
トットットッ
あとちょっと...........ここだ!
脚に力を入れ思いっきりジャンプした。
ヒュ〜
「うっ!」
着地するときにかなりの衝撃があったがなんとか無事に渡ることができた。
よし。このままいくぞ!




