第10話 本題
遅くなりました。
2人の後を続けて歩いていく。
それにしてもさっきからずっと階段を降りている気がするんだが?
「あの...これ何処まで降りるんだ?」
「すみません。地下にあるのでもう少しかかります。」
「そうか。」
段々と明かりが少なくなってきた。降りていく階段を照らすのは壁の松明だけである。
そのまま歩いていく。
――――――――――――――――――――――
「着きました。」
先頭を歩いていたフルールが振り返り言った。
ボッボッボッボッ
ボゥー!!!
フルールが前に手をかざすととても暗くてよく見えなかった前に火が灯り、巨大な扉が照らされる。
「でかいな!」
謁見の間の扉とは比べ物にならないくらい大きな扉であり、金属でつくられているのかかなり頑丈そうに見える。
「ブツブツ・・・・・・」
フルールが扉の前に立ち何か唱えながら両手を前に突き出す。
ピカッ
一瞬、魔法陣のようなものが扉で輝いた。
ガチャンッ!
ガタッ!
ゴーーー
鍵のあくような音が聞こえるとその後扉が大きな音を立てながらゆっくりと開いていく。
!
ビュ〜。
冷たい風が扉の奥から吹いてきた。
な!なんだ!?よくわからないが何か圧のようなものを感じる。
ギィー
ガコンッ!
動いていた扉が止まった。
「それでは行きましょう。」
そう言ってフルールが一歩踏み出す。
ボゥッ!
歩みにあわせ壁に火が灯る。
何だ?洞窟なのか?かなり広いぞ!
中に入ると少し肌寒く火の灯っていない奥の方はどこまで続いているのか分からない。
ん!?真ん中に何か巨大なものがある?なんだ?
そしてその前に立ち止まると一気に周りが明るくなった。
こっ!これは!!!
「骨!?なんだこれドラゴンか!?」
そこには先程の扉よりもさらに大きな骨の死体があった。大き過ぎて分かりにくいがファンタジー物語であるようなドラゴンに見えた。
「正確には龍です。ドラゴンといっても龍と竜は一応区別できますし多くはプライドが高いので間違えると最悪殺されますからお気をつけください。」
「そっそうか。それでこれが俺を呼んだ理由なのか?」
「はい。詳しく説明すると長くなるのですが...。」
「長くても大丈夫だ。」
「そ、そうですか。それではお話します。まず龍と精霊は古くから良き隣人という関係でした。そして人々からは崇められていました。ここまではよろしいですか?」
「はい。」
「次に私の事なのですが私と彼、つまりこの龍は友人でした。そして今から数千年前の話ですがこの大陸には今とは全く違った国々がありそれぞれ領土や資源などを巡り争い合っていました。そして彼はその当時最も大きかった国の守護者として君臨していました。彼は龍の中でも特に強力な力を持つ真龍と呼ばれる龍であり、そんな彼の庇護下にあった国はとても力をつけました。しかしそうなってくると黙っていないのが周りの国々です。その国が力を持ちすぎたがために周りの国々は一旦互いの争いをやめ同盟を組み戦争を仕掛けました。そうして1つの大国対周りの国々の戦争が始まりました。しかしなかなか決着せず、長い間膠着状態になりました。そんな時に彼に子供ができたのです。」
「子供?ツガイがいたのか?」
「いいえ。彼と言っていますが正確には龍は性別がありません。そのため子供も1体のみで生まれます。そして子供ができる時期は龍本人には分からないため、正直運が悪かったとしか言えませんね。そして子供ができるのはとても体力を消耗しますし、力も一時的にですが大きく失います。そのよう彼が弱っている時に国内で反乱が起きます。長い間戦争状態だったため不満に思う人が増えてきており、裏切る者がでてくるなどと国内の状態が悪くなった所に一気に攻め込んできました。さらに敵国はとある兵器を開発しており、その兵器によって国はかなり劣勢になってしまいます。彼自身も国を守ろうと戦いましたが力が弱っている状態でお腹にいる子を守りながらでは満足に力を出すことができずにいました。そして遂に国は滅ぼされました。そして次に狙われたのは国を守っていた彼です。龍、それも真龍となると全身どこをとっても人からすればとても素晴らしい素材だったようです。その為、兵器を用い彼を狩ろうとしたようです。ですが彼も弱っていたとしても龍ですので初めは討伐軍を壊滅させ、兵器も破壊していましたが、段々と兵器も改良されまた他の龍や竜、精霊などいくつもの勢力をとりいれて攻めました。」
「いくつもの勢力?」
「はい。それ程までに真龍というのは大きな存在でしたので。神に最も近いともいわれていた真龍を倒すことができれば自分こそ最強だとでも思っていたのでしょう。まあ、そうして彼は負けてしまいます。そして致命傷を負った彼を素材などと死体を辱められたくなかった私はこの精霊境へと彼を転移させました。ちなみに私はずっと彼と共に戦っていましたよ。」
「負ける前に逃げなかったのか?」
「ええ。彼にとって逃げるのは恥だったようでたとえ死のうがプライドは捨てたくなかったのかと...。私が逃げることを提案しても決して逃げようとはしませんでしたから。」
「なるほど。」
「ちなみにその時の国は今は全てなくなりましたが、当時の国の後継のような国はありますし、この話もどうやら周辺国視点で都合の良いように改竄された話として伝わっているようです。」
「そうか。」
「はい。そして彼は、この子と共に成長できるような奴を探してこの子を託して欲しい、と告げ亡くなりました。」
「それが俺だと。」
「はい。あなたはまだレベルが低いながらもかなりの戦闘のセンスがあると思いましたし、フレンドがいないようなので秘密がばれる恐れも少ないかと思いました。」
「そういうことか...。」
「それからテイムは子龍と共にいるには1番良い方法かと思いましたので。」
「そうなのか?」
「はい。ああ、まだなにもテイムしていませんでしたね。テイムするとテイムした者と意思疎通が取りやすかったりするんです。まあその個体の知能レベルにもよりますがね。」
「ちなみになんであなたたち精霊が育てるよう託さなかったんだ?」
「それは私たちは基本的にあまり大きく移動することがないからです。そのため強敵と戦い成長するといったこともあまりないでしょうし、自由に冒険できる者に託したかったのかと思います。」
「ちなみに秘密っていうのは何を秘密にした方が良いんだ?」
「それは龍のことや精霊郷のことつまりここに来てからのことは大体秘密にして頂きたいです。この龍の亡き骸を狙っている者や子を狙っている者もいますのでなるべくバレないようにしてください。ここがバレると襲撃を受ける可能性もありますので...。狙っているのは精霊や魔物の他にも人など国単位で狙っている者たちもいます。」
「国か。それはなんともまあ...。」
「はい。お気をつけください。」
「それで子供は?」
「あちらに。」
そう言ってさらに奥へと進んでいく。




