第9話 精霊郷
眩しい!
強烈な光が発せられ目の前が真っ白になる。
くっ見えない。
段々と目が慣れてきて周りが見えるようになってきた。
っ!なんだここは?!
そこには非現実的で幻想的な空間が広がっていた。
すごい綺麗な景色だ!さっきまでの木が鬱蒼と生い茂り薄暗い森とは違い明るく澄んだ空気の夢のような空間だ。奥には色とりどりの花が咲いているのが見える。
ヒュー
心地よい風が吹き抜ける。
!!なんだ!
「ようこそ!お待ちしておりました。」
「だ、誰だ?!」
急に気配が現れた。そしてそこを見るとそこには何か神聖な雰囲気を纏った女性の姿があった。
うわぁ!綺麗な人だな!ん?なんか透き通っている?
「おっと失礼いたしました。私はフルールと申します。ここへあなた様をお呼びした者です。」
「俺をここへ呼んだ?あの猿を使って呼んだってことか?」
「はい。詳しい話はあちらでしましょう。どうぞあちらの方へお越し下さい。」
そう言い残し一瞬でいなくなった。
言われた方を見るととても大きな巨木の根本に扉があった。
よく分からないが行くか!
巨木に向かって歩きながら周りを見渡すと辺り一面花が咲き乱れていた。様々な花が咲いている。
ん!あれは精風草か!?かなり沢山咲いてるな。他にも色の違う似たような花が沢山咲いている。
っと、周りを見ながら歩いていたらあっという間に辿り着いた。
「どうぞこちらです。」
さっき女性とは別のメイド服を着た女性が扉を開けて待っていた。
「ど、どうも。お邪魔します。」
扉をくぐると木の中とは思えないほど広々と開放的な空間が広がっていた。
「階段をのぼり真っ直ぐ進んでください。」
「はい...。」
言われた通り階段をのぼり、その先を真っ直ぐ進むととても大きな扉があった。
キィー
木の軋む音を立てながら扉がゆっくりと開く。
扉の先を見ると玉座のような大きな椅子の上に一人の女性が座っていた。そしてその斜め後ろには先程初めに会った女性、フルールが立っていた。
「どうぞこちらまでいらしてください。」
言われるがままに部屋に入り真ん中あたりまで歩いていく。
パチンッ
唐突にフルールが指を鳴らす。
すると先ほどまではまるで王に会うための謁見の間のような所だったはずだが、大きなテーブルのある部屋へと変わっていた。
「どうぞお着席ください。」
「は、はぁ...。」
席に座るといつの間にか後ろにいたメイド服の女性がお茶を淹れて目の前にテーブルに置いた。
ちなみに席に座っているのは、俺とフルール、玉座に座っていた女性の3人である。
「改めて、ここまでお越し頂きありがとうございます。私はフルールと申します。そしてこちらが..。」
「フィオーレと申します。」
「急なこと戸惑っているかと思いますが、順を追って説明していきます。まず、この場所は精霊郷と呼ばれている場所です。精霊郷はその名の通り精霊の集まる場所で他にも幾つかあります。そして彼女はこの精霊郷の現女王で私は彼女の前の前の女王です。」
「精霊か...。」
「ああすみません。精霊について説明していませんでしたね。精霊というもの自体は一部の特殊な場所を除き、どこにでも存在しているのです。ですがそのような精霊は力が弱く、光の粒のようなものです。しかし精霊は魔力の多い場所だとより強い力を得ることができるのです。そうして力を得ると段々と姿も変化していきその中でも特に力をつけることができた個体は私たちのようなはっきりとした意識を持ち、肉体もこのように現実に干渉できるようになるのです。」
そう言ってティーカップを持ち上げる。
「なるほど。」
「そしてその魔力が多く集まるような場所に精霊は惹かれて多く集まり精霊郷が生まれるのです。精霊郷の中で特に力が強いものが王又は女王となり精霊郷を守る役目を果たします。ちなみに精霊は形が決まっているわけではないので私たちのように人の形をしているものや動物の形のものなど様々です。」
「そうだったんだ。もしかしてあの猿も?」
「えーとあの猿は少々事情があって...。その元々あの森には何種類も猿の群れがありまして、群れごとに毛の色が違っているんです。そして群れごとに縄張りを争っていまして、あの猿の黒猿は元々数が少なかったため縄張り争いで負けてしまいまだ幼かったあの猿を除いて絶滅してしまったのです。そして偶然あの森に出ていた精霊がここに連れて帰り、私たちで育てたのです。」
「そうか。ちなみにあの猿に盗られたお金は返してもらえるのか?」
「えっ!お金?!す、すみません。あの子に色々教えたのですがどうもイタズラ好きみたいで私たちもよくイタズラされていたんです。本当にすみませんあとで返しますので...。」
「ああ。それで俺がここに呼ばれたのはなぜなんだ?」
「それは、私たちはこれまでずっとある条件に当てはまる人物が現れるのを待っていたのです。そしてその条件に当てはまる人物が貴方だったというわけです。」
「条件?その条件とは?」
「幾つかあります。まず今まで一度も死ぬことなくあの森の奥までくる、具体的には精風草を見つけるというものです。次はテイムのスキルを持っているということで、他にもレベルが30未満で1人で辿り着くというものやプレイヤーのフレンドがいないといった条件もあります。他にもいくつか細かい条件があったりします。」
「な、なんだそれ...。」
プレイヤーのフレンドがいないってそんな条件があるのかよ!まあ確かにこれ全て当てはまる人なんてなかなか少ないだろうけど...。
「そして最も大切なことはあの黒い猿に攻撃しなかったということです。」
「まあ敵意は感じなかったしな。金は盗られたが...。」
「す、すみません。ですがこの敵意など正しく判断でき、判断にあった行動をできるということはとても大切ですので。」
「それはどうして?」
「それは場所を移動してからにしましょう。そこで本題もお話します。」
「本題?」
「はい。なぜあのような条件に当てはまる人物を探していたかということです。」
「そうか...。」
「それでは、移動しますのでついてきてください。」
そう言ってフルールは立ち上がり歩き始めた。そしてフィオーレがその後に続く。
なんか移動ばっかしてる気がするが...仕方がないついていくか。




