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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
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山寺に着いたのよ!

 私は箕輪まどか。中二の美少女霊能者だ。


 今、私達は、サヨカ会というカルト教団の残党が巣食う新潟県村上市の廃寺に向かっている。


 廃寺と言っても、「アルプスの少女」と関係ないのは既出だ。


 え? 無理してネラーッぽく振舞うな、ですって?


 そ、そんなつもりないわよ! へ、変な事言わないでよね!


 


 山形から、親友の八木麗華さんとやって来た西園寺蘭子さん。私の憧れの人。


 蘭子お姉さんは、小倉冬子さんの幼馴染の濱口わたるさんと共に麗華さんの車に同乗している。


「これだけのメンバーが揃ったんだから、楽勝だね、まどかりん」


 いつの間にか、小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんの車に移って来た私の彼氏の江原耕司君。


 本当は嫌だったんだけど、仕方がない。


「後ろでイチャイチャしないでよね」


 綾小路さやかがしっかり助手席を確保し、私達を見る。


「それどころじゃないわよ。ね、江原ッチ」


 私は鋭い視線を江原ッチに投げかける。江原ッチは即座にその意味を悟ったのか、


「は、はい」


と妙に丁寧な受け答えだ。瑠希弥さんは、そんな私達のやり取りをクスクス笑いながらルームミラーで見ていた。


「あ」


 瑠希弥さんの大きな胸が振動する。あ、いや、胸のポケットに入っている携帯が鳴る。


「あ、俺、出ます」


 江原ッチがなんの躊躇いもなく、瑠希弥さんの胸に手を伸ばした瞬間だった。


「私が出ます」


 さやかが江原ッチの伸ばした手をバチンとはねつけ、瑠希弥さんの胸のポケットから携帯を取り出す。


 ナイスさやか! 私とさやかはハイタッチしてファインプレーを喜ぶ。

 

「江原耕司君、ここで車を降りてもらっても構いませんよ」


 私は呪いの言葉を吐くように言う。


「ひいい!」


 江原ッチはビクッとして身を縮めた。


「見えて来たわ。あれがそうみたい」


 さやかが、江原ッチのお父さんの雅功まさとしさんからの連絡で、前方に見える小高い山の上に建つ小さなお寺を指差す。


 言い忘れたけど、電話をかけて来たのは私の親友の近藤明菜の彼の美輪幸治君で、雅功さんは隣で話しているだけよ。


 交通ルールは守ってるんだからね。


「禍々しいわね」


 瑠希弥さんがその寺を見て呟く。私も微かにだが、寺の妖気のようなものを感じた。


 雅功さんの話では、サヨカ会の宗主だった鴻池こうのいけ大仙だいせんと同じく、息子の仙一も霊能者ではないらしい。


 だからこそ、日本各地で霊能者を拉致しているのだ。


「あんな事、二度とさせない」


 以前の戦いを思い出したのか、江原ッチは拳をギュッと握りしめた。


 久しぶりに見る凛々しい江原ッチだ。何か、カッコいい。




 寺に近づくにつれ、道は細くなり、やがて舗装のされていないガタガタ道になった。


 周りは昼尚暗い森。カラスの鳴き声が妙にたくさん聞こえるのも、何だか不気味だ。


「何も仕掛けて来ませんね」


 江原ッチは周囲を警戒しながら言う。敬語で言ったという事は、会話の対象は瑠希弥さんだという事だ。


「ええ。返って気味が悪いわね」


 瑠希弥さんはパワー全開で周囲を索敵中だ。


 ところで、索敵って何?




 やがて、森の木々が途切れ、私達の車は寺の山門の前に到着した。


 その山門の奥には、気が遠くなるほどの石段が見える。その先に寺があるのだ。


 何年も前から放置されているらしく、山門はボロボロだ。


 野犬やその他の森の動物達の住処になっていたようだ。


 サヨカ会残党が使うようになって、動物達は追いやられたらしいけど。


「結界が張られていますね」


 車を降り、雅功さんが山門を見上げて言う。


「いっちょ、ぶち破ったろか!」


 麗華さんが嬉しそうに右腕をグルグル回しながら言った。


「その必要はないみたいですよ」


 わたるさんが言った。


「何でですの?」

 

 聞いた事がないような猫撫で声を使い、麗華さんがニッコリ微笑んでわたるさんに近づく。


 もしや、狙っているのか、わたるさんを?


 それは怖い。第二次「冬子麗華戦争」が始まりそうだ。


「結界が解かれたからよ」


 蘭子お姉さんが代わりに答えた。


「ほォ、さよか」


 わたるさんとの会話を邪魔された麗華さんは不機嫌そうに言った。


「ほうほう、皆さん、たいそうなお顔ぶれですな」


 ニコニコしながら山門の奥から現れたのは、鴻池仙一とその手下ABCだ。


「そうや。これだけのメンバー呼んだんやから、ギャラは高いで、おっさん」


 早速凄む麗華さん。すると仙一は、


「それは困りましたね。当方は見ての通りの貧乏寺でして、お金はありませんよ」


ととぼける。麗華さんはヒートアップし、


「ふざけるな、ボケ! すぐに降参させたるから、覚悟しいや!」


といきなり印を結んだ。


「そんな強気でよろしいのですかな? 当方には、客人がいらっしゃるのですよ」


 仙一はニヤリとして言う。客人? 何だ、それ?


「あああ……」


 何故かさやかが震え出し、涙を流し始める。


「どうしたの、さやか?」


 私はしゃがみ込んでしまったさやかに近づいた。


 その時、懐かしい気を感じた。これって、まさか?


 私は仙一を睨んだ。


 奴の後ろから現れたのは、目も虚ろな牧野徹君。


 私の元彼にして、さやかの彼。


「な、何や?」


 牧野君と面識がない(いや、本当はあるはずなんだけど、覚えていないのだ)麗華さんは、キョトンとして蘭子お姉さんを見る。


「卑怯ね、貴方」


 蘭子お姉さんの目が鋭くなる。


「その言葉、光栄ですねえ」


 仙一はそう言って、高笑いをした。


 


 形勢不利のまどか達だった。

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