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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
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裏の裏の裏をかくのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。


 突っ込んでる余裕ないから、華麗にスルーね。


 


 私達は、以前戦ったサヨカ会の残党の本拠地がある新潟県村上市に向かう途中、敵の挟み撃ちに遭ってしまった。


 前にいるのは黒い袈裟を着た僧侶。


 後ろには私達の車をつけて来ていたムサオヤジ達。


 しかも、私と綾小路さやかがムサオヤジ達に捕まってしまったのだ。


 今までにないピンチと展開だ。


 


「この嬢ちゃん達の命が惜しかったら、大人しくしな」


 悪役の聞き飽きた台詞。他に言う事はないのだろうか?


 それから、羽交い絞めにしたままで喋らないで欲しい。


 口、臭過ぎ。歯を磨いた事ないでしょ?


「あ、そうか」


 私は両手が開いている事に気づき、さやかにアイコンタクトをとった。


 さやかもそれに気づき、頷く。


「インダラヤソワカ」


 私とさやかは、帝釈天の真言を同時詠唱した。


 雷撃がムサオヤジ達を襲う。


「無駄だ」


 誰かがそう言った。


「何で?」


 その誰かの言葉通り、雷撃は途中で消えてしまった。どういう事?


「我らには、最高神のご加護がある。その程度の真言など、通じぬ」


 前方にいる僧侶が言ったようだ。笠を持ち上げ、こちらを見ると、ニヤリとした。


「なるほど。光明真言ですか。しかし、それは万能ではありませんよ」


 私の彼氏の江原耕司君のお父さん、江原えはら雅功まさとしさんが言った。


 そうよ! 私も以前、光明真言のせいで危なかった事があったけど、それ以上の力を合わせれば破れるのよ!


「万能ではないが、今のお前達には破れぬ。我らの方が数段力が上だからな」


 僧侶は笠を投げ捨て、その顔を露にした。それなりに年取ってる感じの僧侶だ。


「ほう。貴方でしたか」


 雅功さんはフッと笑った。知り合いなの?


「我が名は乗如じょうにょ。以前、西園寺蘭子に苦杯を嘗めさせられた者だ。今回はそうはいかんぞ」


 乗如? 確か、G県のS村の自害沢で騒ぎを起こした腐れ坊主だ。


 蘭子お姉さんに聞いた覚えがある。


 根に持つタイプか。嫌だな。


「そうですか? 私にはそうは思えませんがね」


 雅功さんは負けずに言い返す。


 乗如という坊主がどれほどの力の持ち主かわからないが、ムサオヤジ達は霊能者じゃないみたいだし、勝ち目ないと思うんだけど?


「では、行くぞ」


 乗如がニヤリとして印を結ぶ。途端に奴の気が一気に高まった。


「江原雅功、お前がちょっとでも動けば、あの二人のガキの命はないぞ」


 乗如はドヤ顔で言った。そういう事か。


 蘭子お姉さんにボコボコにされるはずだ。


「了解だ!」


 いきなり美輪幸治君が走り出す。


「美輪君!」


 私の親友で、美輪君の彼女である近藤明菜が叫んだ。


「な、に、い!?」


 乗如は何もできないまま、美輪君のパンチで吹っ飛んだ。


「おのれ! ガキ共を殺せ!」


 顔を腫らした乗如がムサオヤジ達に怒鳴る。


「そうはいかないですよ」


 どこからか声がした。この声は確か……。


「何!?」


 ムサオヤジ達はギョッとして振り返った。


 そこには、小倉冬子さんの幼馴染にして、現在いい感じの人でもある、濱口わたるさんがいた。


「はああ!」


 わたるさんが気合を入れると、ムサオヤジ達は硬直してしまった。


 不動金縛りの術だ。すごい!


「まどかりんから離れろ、この!」


 動けなくなったムサオヤジを江原ッチが蹴飛ばす。


「江原ッチ!」


「まどかりん!」


 私と江原ッチは人目も憚らず、抱き合った。


「無事で良かった」


 小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんがさやかを助けた。


「江原耕司君」


 私は、さやかと瑠希弥さんが抱き合っているのをジッと見ている江原ッチに言った。


「ご、ごめんよお、まどかりん」


 江原ッチは慌てて土下座した。全く、懲りないんだから。


 ふと見ると、美輪君も明菜に正座させられていた。


 ホント、男って……。


「貴様ら、許さんぞ!」


 そうそう、まだ乗如が片づいていない。


「我が秘術で、全員あの世行きだ!」


 乗如が立ち上がって印を結んだ時だった。


「あら、貴方、どうしてここにいるの?」


 懐かしい声がした。


「い?」


 乗如の顔色が悪くなる。汗がダラダラと頭頂部から流れ落ちるのが見える。


「ひいいい!」


 彼は声の主を見ると、


「お、覚えておれ!」


とものすごい速さで逃げ去ってしまった。


「失礼ね、全く。私を見て、絶叫するなんて」


 そう言って、不満そうに腕組みをした女性。


 西園寺蘭子お姉さんだった。


「先生!」


 瑠希弥さんが誰よりも早く反応し、駆け出す。


「瑠希弥」


 蘭子お姉さんは、まるで菩薩様のような穏やかな笑顔で返した。


「会いたかったです!」


 瑠希弥さんはいきなり蘭子お姉さんに抱きついた。


 やっぱりこの二人ってば……。


「お久しぶりです、西園寺さん」


 雅功さんが言った。蘭子お姉さんはすでに号泣している瑠希弥さんの頭を撫でながら、


「お久しぶりです、江原先生」


 あれ? 誰かいない気がするけど?


「そう言えば、八木麗華さんはどうされましたか?」


 雅功さんが尋ねた。すると蘭子お姉さんは苦笑いして、


「この先で検問に引っかかって、今警察の人と揉めてます」


 私達は思わず顔を見合わせた。麗華さんらしいな。


「とにかく、皆さん、ご無事で何よりです」


 蘭子お姉さんは瑠希弥さんをなだめすかしながら、私を見た。


「まどかちゃん、大人っぽくなったわね。見違えたわ」


「あ、ありがとうございます」


 何だか恥ずかしい。胸は全然成長していないけど。


「では、参りましょうか、鬼退治に」


 蘭子お姉さんは真顔になった。


 私達はそれに応じて頷いた。


 さあ、本番だ。

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