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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
92/235

敵の本拠地に乗り込むのよ!

 私は箕輪まどか。中二の美少女霊能者だ。


 飽きないわね、その自己紹介。少しはパターンを変えたら?


 


 週末。とうとう私達は、サヨカ会残党が根城を構える新潟県村上市に向けて出発した。


 朝五時集合が、宵っ張りの私には辛い。


 ところで、「根城」と「宵っ張り」って何?


 エロ兄貴は、西園寺蘭子さんと会えるらしいのを知り、


「俺も行く」


などと不謹慎発言をした。


「ダメです」


 当然の事ながら、G県警鑑識課の同僚で、恋人でもある里見まゆ子さんにあっさりと却下された。


 何を考えているのだろう? 我が兄貴ながら、理解不能だ。


 


 私は兄貴の車で、私の彼氏の江原耕司君の邸まで送ってもらった。まゆ子さんも一緒だ。


「まどかを頼むぞ。絶対に守ってくれよ」


 珍しく真顔の兄貴が、江原ッチに言う。


「はい、お兄さん」


 江原ッチも真顔だ。


 しかし私とまゆ子さんにはわかっていた。


 このエロ男二人は、私に右半分の顔を見せ、左の目でしっかりと小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんの赤いジャージ姿を見ていたのだ。


「箕輪慶一郎さん、後でお話があります」


 まゆ子さんは目が笑っていない得意の笑顔で言った。


「ひいい!」


 兄貴は顔を引きつらせた。


「江原耕司さん、貴方にも後でお話があります」


「ひいい!」


 江原ッチも顔を引きつらせた。


 朝から疲れる事させないでほしいわ。


「恥ずかしいから、あまり見ないで下さい」


 部屋着のジャージ姿で、モジモジしている瑠希弥さんは、私も可愛いと思ったけど。


「寝過ごしてしまったので、出先で着替えます」


 瑠希弥さんはスーツを車のトランクに積み込む。それを手伝う綾小路さやか。


 彼女は夕べは江原家に泊まって、瑠希弥さんと一緒に寝たらしい。


「おはよう」


 そこへ親友の近藤明菜と、彼氏の美輪幸治君が現れた。


「あれれ、昨日の夜は一緒だったのかな?」

 

 私が冗談で言うと、


「バ、バカな事言わないでよ!」


 明菜は酷く動揺した。え? まずい事言ったの、私?


「ハハハ」


 笑っているだけの美輪君。真相はどうなのだろう?


「揃いましたね。では、出発しましょうか」


 江原ッチのお父さんの雅功まさとしさんが言った。


 私達は大きく頷き、それぞれの車に分乗した。


 


 車はまずMインターチェンジで高速道路に入り、新潟県の胎内市まで向かう。


 私はさやかに気を使って、彼女を助手席に座らせた。


「ありがとう、まどか」


 さやかは嬉しそうだ。


 昨日一晩で瑠希弥さんと随分仲良くなったようだ。


「何か、懐かしいですね、まどかさん」


 瑠希弥さんが言った。


 昨年の秋に二人で山形県の鶴岡市にいる蘭子お姉さんに会いに行った時の事を思い出す。


「はい」


 私は笑顔で応じた。


「そこにあるバッグにお弁当が入っているから、お腹が空いたら食べてね」


 瑠希弥さんがミラー越しに言った。


「もちろん、さやかさんもね」


「はい」


 さやかは本当に嬉しそうに返事をする。


 確かに瑠希弥さんて、優しさオーラが半端ないからなあ。


 蘭子お姉さんと過ごした日々が、瑠希弥さんを強くしただけでなく、優しくしたのだと雅功さんから聞いた事があったけど。


 さすが、蘭子お姉さんね。


 


 車がトンネルを越え、新潟県に入った頃、お腹がグウと鳴ってしまった私は、


「お弁当いただきます」


とバッグから可愛いお弁当箱を取り出す。


「私はまだ大丈夫」


 さやかは言った。何だか一人で食べるの、恥ずかしいな。


「おお!」


 タコさんウィンナーとうさぎの林檎だ。


 江原ッチのお母さんの菜摘さんが作ってくれたのだ。


「いただきます!」


 奇麗な形の玉子焼きとまだ温かい手ごねハンバーグ。


 よだれが垂れそうだ。


「美味しそうな匂いね」


 瑠希弥さんが言った。さやかも気になったのか、振り返る。


「やっぱり、食べる」


 彼女が恥ずかしそうに言うのは、初めて見た気がする。


 私は箸を置き、バッグから別のお弁当箱を取り出して、さやかに渡した。


 こんな日が来るなんて、想像もしなかったけど、私はさやかと笑顔をかわしながら、お弁当を食べた。


 


 途中、トイレタイム等のため、サービスエリアに立ち寄る。


 富士山麓にあったサヨカ会本部に向かった時は、サービスエリアで妙な一団に囲まれたっけ。


「心配いりませんよ。ここにはサヨカ会の連中はいないですから」


 雅功さんが言ってくれた。


 瑠希弥さんはトイレで着替えをすませ、雅功さんと一緒にお弁当を食べている。


 それを遠くからジッと見ている江原ッチと美輪君。


「こら!」


 私と明菜はソッと後ろから近づき、脅かした。


「ひいい!」


 江原ッチと美輪君はギャグマンガのように飛び上がって驚いた。




 やがて休憩を終え、また先へと進む。


 車は新潟市を越え、新発田市に入る。


 もう少しだ。


 サヨカ会の連中との戦いより、蘭子お姉さんと会える事の方が私の気持ちを占めていた。


 私達は知らなかった。ずっと私達の車を尾行している黒塗りの車がいた事を。

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