サヨカ会対策を練るのよ!
私は箕輪まどか。もうすぐ中二の霊能者。ちなみに美少女である。
何なのよ、ホントに……。
只、「中二」を言いたかっただけでしょ?
2ちゃんで話題になったからって、嬉しがってるんじゃないわよ、全く。
ちなみに、久しぶりに念を押すのだが、私は決してお笑い芸人ではない。
更に、銭形平次のライバルの親分でもないからね。
古過ぎて、日下部先生くらいしかわからないわよ!
先日、私達はある宗教団体の残党に拉致監禁され、危うく命を落とすところだった。
そいつらは、サヨカ会というカルト教団のメンバーだった。
但し、宗主であった鴻池大仙の息子の仙一を除けば、洗脳されていただけだった。
多くのカルト教団がそうらしい。
ところで、カルトって何?
今回は、ちょうど私達が春休みだという事もあり、私の絶対彼氏の江原耕司君の邸で研修会だ。
あれれ?
確か、連中に拉致されたのは、卒業式前だったはずなのに……。
様々な事情で、思ったより時間がかかったので、いつの間にか、あの前生徒会長である原西誠司さんと生徒会副会長の隅田真保さんは卒業していた。
可哀想な二人ではあったが、時の流れは無情なのだ。
江原邸の道場には、江原家の四人と私、そして私のお師匠様でもある小松崎瑠希弥さん、それから、すでに力は失っているけれど、サヨカ会の事情に詳しい小倉冬子さんがいた。
実は、江原ッチの親友にして、私の親友近藤明菜の彼氏である美輪幸治君も、研修会に出たがっていたのだが、明菜の強烈な反対に遭い、あえなく撃沈した。
要するに、美輪君は「瑠希弥さん目当て」がバレバレだったのである。
私だって、江原ッチに参加して欲しくないくらいなのだ。
現に江原ッチは、瑠希弥さんをヘラヘラして見ている。
瑠希弥さんは感応力を制御しているはずなのだが、一度瑠希弥さんの虜になった男はなかなかその呪縛から抜け出せないらしい。
江原ッチのお母さんの菜摘さんの話によると、症状は「デレデレしてしまう」で留まるので、あまり心配はいらないらしいのだが。
「今回は、三人共無事で何よりでした」
講師である江原ッチのお父さんの雅功さんが言う。
私達はそれに応じて黙って会釈した。
「サヨカ会の残党がああも大胆な手口で近づくとは思ってもみませんでした」
雅功さんが続ける。
「予測通り、彼等が別の術具を持っている事がわかったのは収穫でした」
菜摘さんが付け加えた。
そう。仙一は、「鈴」と「撥」を持っていたのだ。
それを打ち鳴らされると、気を失ってしまう。
ところが、何故か美輪君にはそれが通じなかった。
その事もあったので、雅功さんは美輪君を呼びたかったのだが、明菜の反対があまりに壮絶だったので、諦めたのだ。
「美輪君の事に関しては、私と菜摘で彼に会って調査する事にしました」
雅功さんはチラッと瑠希弥さんを見た。
ちょっと天然な瑠希弥さんはそれに気づかない。
「私も同行したいのですが?」
瑠希弥さんが思わぬ参加要請。ゲゲ。
雅功さんと菜摘さんは顔を見合わせてしまった。
「ダメよ、小松崎さん。貴女は行ってはいけない」
冬子さんが言ってくれた。
瑠希弥さんはキョトンとしてしまった。
真面目な性格の瑠希弥さんは、美輪君に、
「はいはい、どうぞどうぞ」
と言われたので、行くべきだと思ったのだ。他意はない。あるはずがない。
「貴女の感応力が美輪君に影響してしまうから、今回は遠慮して」
冬子さんは優しく微笑んで言った。
「そうなんですか」
わわ! 油断してたら、やっぱり瑠希弥さんがNGワードを放り込んで来た。
どことなく悲しそうな瑠希弥さんに、江原ッチはキュンとしているようだ。
まあ、我慢だ。あれは仕方ない。私もキュンとしてしまったのだから。
「靖子は必ず耕司と登校するように。お前が狙われないとも限らないからね」
雅功さんの言葉に私はドキッとした。
江原ッチの妹の靖子ちゃんは、四月から中学生だ。
お兄ちゃんの江原ッチが一緒にいれば、靖子ちゃんも安心だろう。
「靖子は俺が守るから」
いつになく凛々しい顔で靖子ちゃんを見る江原ッチ。
ちょっとだけ、靖子ちゃんに嫉妬してしまう。
「ありがとう、お兄ちゃん」
靖子ちゃんは笑顔で応じた。可愛い。
え? お前と同じ妹属性なのに、全然違うな、ですって?
ほっといてよ!
兄貴の質が違うのよ、ウチとは!
「それで、その鈴対策なのですが」
雅功さんが話を進める。
「どうやら、使用者の敵意に反応して、対象を攻撃するようです。私の師匠に問い合わせて、それがわかりました」
「つまり、鴻池仙一の憎しみが深い程、対象者は鈴の力の影響を受けるようです」
菜摘さんが付け加えた。だとすると……。
「西園寺先生が……」
瑠希弥さんが呟いた。雅功さんがそれに気づき、
「西園寺蘭子さん達には遠野泉進さんを通じて連絡します。安心して下さい」
「そうなんですか」
瑠希弥さんはニコッとして言った。ああ、またNGワード。
でも、瑠希弥さんの嬉しそうな顔に免じて、何も言わない。
最終決戦が近い事を感じ、最終回じゃないだろうな、と不安になるまどかだった。




