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イケメン転校生は吸血鬼とお知り合い?

 私は箕輪まどか。


 もう、いい加減わかってもらえたと思うけど、お笑い芸人とは関係ない。


 ちなみに私のお兄ちゃんは超イケメンだが、超エロ兄貴で、実は隠したい家族の筆頭なのだ。


 何故、エロ兄貴の話が出て来たのかと言うと……。




 その日は日曜日。昨日遊び過ぎた私は、お昼近くまで惰眠を貪っていた。この使い方で正しいのかな?


「まどか、起きてるか? 彼氏が迎えに来たぞ」


 エロ兄貴は何度言っても私の部屋にノックもせずに入って来る。


「お兄ちゃん、いい加減にしてよね! 私が着替え中だったらどうするのよ!」


「嘔吐するぜ」


 エロ兄貴がバカ兄貴に転職した瞬間だ。私はお兄ちゃんを部屋から追い出して、


「彼って誰よ? 牧野君はもう彼じゃないわよ」


「牧野君じゃないぞ。あいつより、数段イケメンだ。それでも俺には敵わないが」


 エロ兄貴のバカ話はさて置き、牧野君より数段イケメンと言えば、あの子しかいない!


 私は猛スピードで着替えをすませ、階段を駆け下りて玄関に向かった。


 玄関のドアを開くと、そこには彼が立っていた。


 白鳥慎之介君。


 私の運命の人。


 そう思ったのは、初めて会ったあの日だけ。


 彼の心の奥底に潜む何か得体の知れない物を感じて以来、できるだけ話をしないようにしていた程だ。


「やあ、箕輪さん。相変わらず可愛いね」


 そんな言葉に騙されはしない。


「えへへェ、白鳥君たら、お世辞がうまいんだから」


 すっかり騙されモードの私。口からよだれが垂れそうなほど、顔がニヤついてしまっている。


「時間ある?」


「うん、あるある。どうしようもなくあるゥ」


 もう自分で話しているとは思えない状態だ。


「じゃ、出かけようか。支度はできてる?」


「いつでもOKよん」


 私は自分でも恥ずかしくなるくらい白鳥君のとりこになっていた。


「さ、乗って」


 彼の家のリムジンに乗り込む。


「行こうか」


「はい」


 私は夢見る乙女のような顔で白鳥君を見つめた。


 リムジンは走り出した。地獄へと向かって。




 いつの間にか、私は眠っていた。


「君の血が必要なんだ。僕の伯父さんを救うためにね」


 白鳥君がそんなことを言ったのを耳にした気がする。




 次に私が目を覚ましたのは、地下室のような所だった。


 部屋には窓がなく、裸電球が一つぶら下がり、私を照らしていた。


 私は台の上に縛りつけられている。


「どういうこと?」


 周りを見渡しても、誰もいない。


「気がついたかい、僕のプリンセス?」


 どこからか、白鳥君の声がした。


「何のマネよ、白鳥君? 私をどうするつもり?」


 私は何かとてもいやらしい事をされる気がして、怖かった。


「君には、僕の伯父さんを助けるための生贄いけにえになって欲しいんだ」


「はあ?」


 何を言ってるの、白鳥君? 私に「死ね」と言うの?


「あ!」


 部屋のドアが開き、白鳥君と妙なオヤジが入って来た。


 非常に顔色が悪いオヤジだ。貧血だろうか?


「伯父さんを紹介するよ」


「初めまして」


 そのオヤジは風貌に似合わず礼儀正しかった。でも、キモい。


「伯父さんは吸血鬼になってしまったんだ。だから、処女の生き血が必要なのさ」


 白鳥君はイケメンの顔をどこかに置いて来たような凶悪な形相で私を見た。


 処女の生き血? マジヤバいじゃない! おまけに私、美少女だし!


『娘、手助けするぞ』


 不意に白鳥君のおじいちゃんが私のそばに現れた。


『あ、おじいちゃん!』


『慎之介は本当は霊は見えんのだ。力はあるのだが、バカな伯父のせいで、おかしな事に興味を持ってしまってな』


『おかしな事?』


『女の子の裸じゃよ』


 それは健康な小学生男子なら、全員興味津々です、おじいちゃん。


 ちょっと待て。という事は、やっぱり私は服を脱がされるって事?


 それは嫌! 絶対嫌!


『奴らの隙を突く。何か連中が怯むような事を言ってくれ』


『怯むようなことって……』


 何があるの? 私は考えた。今、こいつらに一番の打撃は?


 あ! これが一番効くはず!


「残念ね、私はもう、牧野君とすませてるのよ!」


「何ーっ!?」


 我ながらトンデモ発言だったが、確かに二人は怯んだ。


 その隙におじいちゃんが私を縛っている縄を解いてくれた。


「な、何だ?」


 白鳥君はビビリまくって後ずさりした。


 キモいオヤジは、私の血が吸えない事を知って落ち込んでいる。


「お仕置きよ! インダラヤソワカ!」


 私は二人に雷撃を放った。


「グゲーッ!」


 白鳥君とキモいオヤジは痙攣した。


「ち、畜生、このままですむと思うなよ」


 白鳥君はそう言いながらオヤジと重なり合うようにして倒れた。




 私は地下室を脱出し、お兄ちゃんに連絡をとった。


 オヤジは警察に連行され、白鳥君は迎えに来たご両親に叱られ、帰って行った。


『ありがとう、娘。これで慎之介もまともになるだろう』


「そうかな?」


 ま、イケメンなんだから、まともになってくれた方が、日本の将来のためだとは思うけどね。




 ところが。


 前言を撤回するような事が、翌日待っていた。


「箕輪まどかは牧野徹とデキている」


 そんな怪文書が、学校の掲示板に張られていたのだ。


 白鳥ーッ!


 悔しがっても、彼はすでに転校した後だった。


 必ず探し出して、シバき倒してやるから!




 その後、私は牧野君とよりを戻した。


 めでたいの、これって?

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