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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
70/235

冬休みは江原ッチとデートなのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。


 という訳で、冬休み。


 待ちに待った、と言うほどでもないけど、それなりに嬉しい。


 成績は思ったより悪く、大らかなお父さんは笑ってすませてくれたけど、お母さんには、


「お弁当のおかずを一品減らします」


と残酷な仕打ちをされた。


 え? 初めてお母さんとの会話が出て来たな、ですって?


 仕方ないじゃない、この話は、家族団らんを描くのが苦手な作者が書いているんだから。


 あ! 何て事言わせるのよ!? また怨まれちゃうわ、私……。


 そんな私の事を感じてくれたのか、絶対彼氏の江原耕司君からメールが来た。


「今日、デートしませんか?」


 私は速攻で了解の返信した。


 すると今度は江原ッチから電話。


「どこに行く、まどかりん?」


「ハワイがいいな」


 私がふざけて言うと、江原ッチは、


「そこは新婚旅行で行こうよ、まどかりん」


「まあ」


 江原ッチはそういう事をサラッと言ってのけるけど、全然嫌味にならないのが素敵。


 取り敢えず、近所のファミレスで落ち合う事にして携帯を切った。


「おい、どこ行くんだ?」


 玄関で鉢合わせしたエロ兄貴に尋ねられた。


「江原ッチとデート」


「許さん!」


 兄貴は時々全然笑えない事を言う。


「意味わかんない」


 私は兄貴が更に何かを言っているのを無視して、


「行って来ます」


と外に出た。


「さぶ!」


 G県は北部山沿いを除いてまだ雪は降っていないが、G県名物の空っ風が吹いている。


 特に私の家があるM市は、とりわけその空っ風が強い地域なのだ。


 危なくて、ミニスカートなんか履いて行けない。


 だから今日はしっかりジーパンだ。


 足フェチの江原ッチは、私がスカートを履いて行かないとテンションが落ちるのだが、そこは譲れない。


 


 ファミレスに着くと、江原ッチはまだ来ていなかった。


 いつものようにカウンターに座り、お目当てのクリームソーダを注文する。


「あれ?」


 建物の中なのに、強烈な風が吹いた気がした。しかし、周囲の人は誰も騒がない。


「きゃあ!」


 私の後ろを通り過ぎようとしていたお店のお姉さんが叫んだ。


 あれ、と思って振り返ると、お姉さんは足から血を流してうずくまっている。


「大丈夫ですか?」


 私はビックリしてお姉さんに声をかけた。周囲の人達も何事かと私達を見ている。


「怪我人です!」


 私はカウンターの中にいた女性に声をかけた。


 その女性も驚いてお姉さんに近づいた。


「どうしたの、川崎さん?」


 お姉さんの名前のようだ。


「すみません、主任。いきなり足に痛みがあって……」


 私はさっきの妙なつむじ風もどきを思い出した。


 あれは風じゃない。


 その証拠に私のクリームソーダの脇にあるストローは飛ばされもせず、そのままだ。


「とにかく、手当てを」


 二人は私に礼を言い、店の奥へと行った。


 霊現象? それしか考えられない。


「まどかりん、何かあったの?」


 江原ッチが入って来た。


「胸騒ぎがしたんで、急いで来たんだ」


 私は江原ッチにさっきあった事を話した。


「かまいたちかな?」


「サウンドノベルの?」


 私のボケは気づいてもらえなかった。


「でも、今は何にも感じられないね」


「ええ」


 さっきはつむじ風もどきを起こした霊を感じたのだけど、今は何も感じられない。 


「もしかして……」


 私は江原ッチに目配せして、カウンターから離れ、店の奥を見た。


「そういう事か」


 さすが、箕輪まどかね。 もう事件は解決よ。


「奥にいる女の人に何か憑いてるね」


 江原ッチもわかったようだ。


「理由を話しても取り合ってもらえないだろうから、取り敢えず入っちゃおうか」


 江原ッチは勝手にカウンターの奥へと入って行く。


「ああ、お客様、困ります……」


 押し問答が続くかと思ったが、


「大丈夫だよ、まどかりん。入って」


「う、うん」


 江原ッチが笑顔で言ったので、私はキョトンとしながらカウンターの中に入った。


「あれ?」


 奥に行くと、従業員の女性達が何故かウットリして江原ッチを見ている。


 何なの、一体?


 一番奥に、川崎さんがいた。


 彼女は椅子に崩れるように座っている。


 憑依現象だ。


 霊に取り憑かれ、意志を支配されている。


「川崎さん、しっかりして!」


 店長らしき大きな身体の男の人が川崎さんに声をかけるが、反応はない。


「生霊?」


 私は霊の正体を見破った。


 川崎さんの元彼だ。


 川崎さんはすでに別れたつもりらしいのだけれど、元彼は納得していない。


 しかも悪い事に元彼は霊能力があるようだ。


 更に悪い事にそいつはあのサヨカ会と関わりがある。


「オンマリシエイソワカ!」


 私と江原ッチは声を揃えて摩利支天の真言を唱えた。


「グゲェ!」


 生霊は川崎さんの身体から弾き飛び、


「おのれ、覚えていろ!」


と悪代官のような捨てゼリフを吐いて消えた。


「もう大丈夫ですよ、川崎さん」


 江原ッチが笑顔で言うと、周囲の女性達がざわつく。


「はい、ありがとうございました」


 川崎さんまで目がハートになっていた。


 おまけに店長まで、江原ッチに熱い視線を向けていた。


 怖い……。


 


 こうしてファミレス生霊事件は解決し、私達はクリームソーダの代金をサービスされ、おまけにケーキまでお土産に頂いてしまった。


「いい事すると、気持ちいいね、まどかりん」


 江原ッチは何かを誤魔化そうとするようにスタスタと歩き出す。


「江原ッチ、正直に答えなさい。さっき、ファミレスのお姉さん達に何かしたでしょ?」


 私は仁王立ちで江原ッチの行く手を遮った。


 江原ッチの全身から汗が流れ出す。


 相当焦っているのがわかる。


「言いなさい!」


「は、はい!」


 江原ッチは観念して、話し始めた。


 あろう事か、江原ッチはあの小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんから、「魅力アップ」の方法を伝授されたのだと言う。


 私を差し置いて、何してるのよ、全く!


「まどかりんが誰かに取られないようにするために、教えてもらったんだ。だから怒らないで」


 江原ッチはいきなり土下座をした。


「ちょ、ちょっと、やめてよ」


 ここは公道だ。たくさんの人達が歩いているのだ。


 これでは私が悪い人みたいでしょ!


「許してくれる、まどかりん?」


 江原ッチは上目遣いのウルウル瞳で私を見る。


「し、仕方ないわね」


 私は半分嬉しいのを我慢して言った。


「良かったあ」


 江原ッチは大喜びして立ち上がり、


「じゃ、デート行こう」


と私の手を掴んで走り出す。


「ちょっと待って、江原ッチ!」


 私は転びそうになりながら、走った。


 


 でも。


 川崎さんの元彼は、サヨカ会のメンバーだった。


 しかも霊能力者だ。


 不安だ。何か起こるような気がする。


 でも、私は負けない。


 今は江原ッチと、瑠希弥さんもいるのだから。


 


 どうして瑠希弥さんは、私より先に江原ッチに「魅力アップ法」を伝授したのだろうと、少しだけ不満なまどかだった。

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