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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
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瑠希弥さんはモテモテなのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。


 ……。


 何だかその自己紹介、恥ずかしい。


 今、私の絶対彼氏の江原耕司君の家に西園寺蘭子お姉さんのお弟子さんである小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんがいる。


 江原ッチのお母さんである菜摘さんの指導で、瑠希弥さんはもっと霊媒能力を高めるのだという。


 私は口では心配していないような事を言いながら、本当は酷く焦っていた。


 だって、瑠希弥さんに勝てる要素が一つもないんだもん。


 美人だし、性格は穏やかだし、頭も良いし、スタイルもボン、キュッ、ボンだし。


 え? 口は勝てるだろう、ですって?


 フンだ!


 


 私は気もそぞろで学校に行き、授業中何度も先生に注意された。


「どうしたんだ、箕輪?」


 クラスメートの力丸卓司君が声をかけてくれた。


 その隣で親友の近藤明菜も心配そうな顔をしている。


「ああ、ごめん、ちょっと疲れてるの」


「大丈夫? 保健室に行く?」


 明菜が言った。私は苦笑いして、


「保健室に行っても良くならないよ」


「そんなに重傷なのか?」


 リッキーが惚けた事を訊く。江原ッチの妹の靖子ちゃんに言いつけるぞ!


「まどかはこの前、凄い敵と戦ったの」


 明菜が説明してくれた。


「そうなんだ」


 リッキーはもう今晩の夕食を考えている顔だ。


 よだれを垂らしながら教室を出て行った。


 明菜にだけは、本当の事を話そうと思い、ソッと打ち明けた。


 明菜は呆れ顔になった。


「心配性ね、まどかも」


「あんたには言われたくないわよ!」


 ホントにそうだ。明菜の嫉妬深さには、私も驚くのだから。


「まあ、お互いモテる彼を持ったんだから、仕方ないと割り切るしかないわ」


「そうなんだけど。江原ッチの場合は、瑠希弥さんが全然そんなつもりがないから、余計心配なのよ」


「どうして?」


 明菜は不思議そうだ。


「私がそうだったように、瑠希弥さんも江原ッチに落とされるんじゃないかって……」


「同じ霊能者だから?」


 明菜が腕組みをして言う。私は黙って頷いた。


「そんなに心配なら、美輪君に頼んで意見してもらおうか? あんた達には、助けてもらった事があるから」


「ありがとう、明菜」


 美輪幸治君は、江原ッチの親友だから、江原ッチにビシッと言ってくれるだろう。


 私は気持ちが楽になった。

 

 


 ところが、だ。とんでもない展開が待ち受けていた。


「まどか、どうしてくれるのよ!」


 教室に入るなり、明菜に泣きつかれた。


「どういう事よ?」


 私は訳がわからずに尋ねた。明菜は泣きそうな顔で、


「美輪君が江原君に話をしに行って、瑠希弥さんと会っちゃったのよ!」


「え?」


 嫌な予感。冷や汗が出て来る。


「あのバカ、『瑠希弥さんて、スタイルいいよなあ』ですって! もう、許せない!」


 明菜が叫ぶ。ああ。瑠希弥さん、パワーあり過ぎ。どうしたらいいの?


「しかも、江原君と意気投合して、瑠希弥さんのファンクラブを立ち上げるとか言ってるのよ」


「何ーっ!?」


 さすがにそれは聞き捨てならなかった私は、放課後、江原ッチの家に明菜と行く事にした。


 ホントに、男って奴は!


 


 これほど一日を長く感じた事はなかった。


 私と明菜は風のような勢いで教室を飛び出し、


「廊下を走るな!」


と怒鳴る藤本先生を無視し、校舎を出た。


「許さない!」


 それが二人の合言葉だ。


 


 江原ッチの家の前まで来て、私達は唖然とした。


 バカはこんなにたくさんいるのか?


 辺り一面男子中学生だらけだ。


 いつの間に作ったのか、瑠希弥さんのポスターが門に貼られている。


「押さないでね……」


 行列を整理している江原ッチと美輪君が私と明菜の闘気に気づき、蒼ざめた。


「後で話があるから」


 私と明菜はそのまま屋敷の中に入った。


「いらっしゃい、まどかさん」


 玄関でエプロン姿の瑠希弥さんが出迎えてくれた。


 明菜はビックリしているようだ。


「勝てない……」


 彼女は無条件降伏してしまった。


「耕司君と美輪君、ホントにいい子ね。私、こっちに来て、友達も知り合いもいないからって、いろいろ考えてくれて」


「……」


 嬉しそうに話す瑠希弥さん。私と明菜は顔を見合わせた。


「ちょっと大袈裟だけど、とっても嬉しい」


 邪心のない瑠希弥さんの笑顔に、私と明菜は恥ずかしくなった。


 そして、この人なら、絶対に江原ッチに落とされたりしないと感じた。


「どうぞ、上がって」


「は、はい」


 私は明菜と目配せして、靴を脱いだ。


 


 奥の居間に通された私達は、菜摘さんに話を聞いた。


「ごめんなさいね、お二人共。多分、それは瑠希弥さんの霊能力が上がっているせいなの」


「え?」


 私は菜摘さんと瑠希弥さんを交互に見た。


「瑠希弥さんの感応力はあの西園寺さん以上。ですから、その一点に絞って指導しました。その副産物として、瑠希弥さんの魅力が向上したのね」


「はあ」


 それじゃあ、ますますまずいのでは……。また明菜と顔を見合わせる。


「もう少し経てば、瑠希弥さんが自分の力を制御できるようになるから、それまでは我慢してね」


 菜摘さんが申し訳なさそうに言った。私と明菜は、


「はい」


と応じた。まあ、それなら仕方ないか。


「制御できるようになったら、まどかさんにも教えるわね」


 瑠希弥さんが屈託のない笑顔で言った。私はついニヤけてしまった。


 隣で明菜が冷たい視線を浴びせているのも気づかずに。




 その後、私と明菜は、江原ッチと美輪君に、事情はどうあれ、しっかりお説教した。


 心配事が尽きそうにないまどかだった。

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