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新たなる戦いが始まるのよ!

 私は箕輪まどか。


 尊敬する西園寺蘭子さんが窮地に立たされるというかつてない強大な敵との戦いも終わった。


「ありがとう、まどかちゃん。助かったわ」


 蘭子お姉さんにそう言われ、私は本当に嬉しくて天に昇りそうだ。


「そ、そんな……。蘭子お姉さんには凄くお世話になっているから、当然の事をしただけです」


 私は顔を火照らせて言った。


「謙虚なのね、まどかちゃんは」


「えへへ」


 それにしても蘭子お姉さんて、女の私も惚れてまうやろーなくらいだ。


 エロ兄貴がよく諦めたと思う。


 まあ、兄貴は兄貴なりに身の程を知ったという事か。


 あ、今の発言、兄貴の彼女である里見まゆ子さんに失礼かな?


 ふと見ると、私の絶対彼氏の江原耕司君は性懲りもなく、また小松崎(こまつざき)瑠希弥(るきや)さんとデレデレしながら話している。


「さすが、江原ご夫妻のお子さんですね、耕司君。素晴らしいです」


 瑠希弥さんが賞賛するのをヘラヘラしながら聞いている江原ッチ。


 私はソッと彼の背後に回った。


「ひっ!」


 私が強烈な視線で睨んでいるのに気づいた江原ッチは、


「ま、まどかりん、誤解しないでね。俺は別に瑠希弥さんと仲良くなろうなんて考えていないんだからね」


と見苦しい程狼狽えている。


 私は蘭子お姉さんがいるのでその場は我慢した。


「後でゆっくり話しましょう、江原耕司君」


「……」


 私が「江原ッチ」と呼ばずにフルネームで呼んだので、江原ッチは蒼くなっていた。


 そこへ江原ッチのお父さんである雅功(まさとし)さんが近づいて来た。


「まどかさん、菜摘と耕司と三人で先に帰って下さい。私は西園寺さん達と話があるので」


「はい」


 有無を言わせない雰囲気を感じ、私は何も質問をしないで返事だけした。


 まさかその時は、蘭子お姉さんとしばしの別れになるとは知るべくもなかった。


 江原ッチのお母さんである菜摘さんの運転で、私達はG県への帰路に着いた。


 かなり疲労していた私と江原ッチは、人目も憚らずに抱き合うようにして爆睡してしまった。


 


 やがてG県に着き、家の前まで送ってもらった頃には、日が暮れかけていた。


「また明日ね、江原ッチ」


「うん、まどかりん」


 私は菜摘さんを見て、


「ありがとうございました」


 菜摘さんは私を見て、


「今日はゆっくりお休みなさい、まどかさん」


「はい」


 私は車が見えなくなるまで手を振り、家に入った。


 


 あれほど車の中で眠ったのに、夕食を食べてお風呂に入ると、また睡魔が襲って来た。


(壮絶な戦いだったもんなあ)


 思い出すだけで怖くなる。


 いや、サヨカ会のオッさんの事ではない。


 あの黒い着物の少女。


 一体何者なんだろう?


 悪霊なんて言う、そんなチャチな存在ではない。


 あれほど威圧感のある悪霊は今まで見た事がないのだ。


 蘭子お姉さんと瑠希弥さんは見た事があるらしかったけど。


 霊を怖いと思った事はないけど、あの少女だけは震えるほど恐ろしかった。


 そんな事を回想しているうちに、私は眠りに落ちていた。


 


 そして翌日。


 私はどうしても気になる事があり、江原ッチの家に行った。


「おはようございます」


 玄関に入り、奥に声をかける。


「はーい」


 聞いた事がある声が応えた。あれ? 誰だっけ?


「いらっしゃい、まどかさん。どうぞ」


 何故かエプロン姿の瑠希弥さんが現れた。


「えっ?」


 私は混乱して、何も考えられなくなった。


 


「落ち着いた、まどかさん?」


 ふと我に返ると、私は居間に通され、ソファに座っていた。私を心配そうに見ている瑠希弥さんと菜摘さんがいる。


「あ、あの……」


 私は菜摘さんを見た。菜摘さんは微笑んで、


「ごめんなさいね。まどかさんに何の断わりもなく、雅功が話を進めてしまって」


「はい?」


 事情が呑み込めない私に菜摘さんが説明してくれた。


 蘭子お姉さんと関西のオバさんが山形に修行に行った事。


 そして、瑠希弥さんの能力をもっと引き出すために菜摘さんが瑠希弥さんを指導する事になった事。


 更に、江原ッチと私は、瑠希弥さんの指導の下、真言の会得を更に進める事になった事。


「男はそういう事に鈍感なので困ります。まどかさんは耕司の彼女なのに、瑠希弥さんのような若い女性を同じ邸内に住まわせる事がどんな影響を与えるのか考えもしないのですから」


 菜摘さんは呆れ顔で言った。


 どうやら、雅功さんは菜摘さんに意見されて、しょんぼりしているらしい。


 そして江原ッチは、瑠希弥さんが同居する事を知ってあまり嬉しがったので、菜摘さんに(たしな)められて落ち込んでいるようだ。


「あ、その、私、別に……」


 私の動揺をすっかり見抜かれている気がして、顔が火照る。


「まどかさん、心配しないで。私は貴女の彼を取ったりしないから」


 瑠希弥さんが神妙そうな顔で言う。私はバツが悪くなり、


「そんな事、心配していませんから……」


と言うのが精一杯だった。


 瑠希弥さんが江原ッチに恋愛感情ゼロなのは以前からわかっている。


 この場合心配なのは、江原ッチの理性だ。


 美人を見ると過敏に反応する江原ッチ。


 しかも、ストライクゾーンは蘭子お姉さんより年齢が下で、妹の靖子ちゃんより上。


 つまり、瑠希弥さんはほぼど真ん中なのだ。


 ああ。私にも欲しい、あの巨乳が……。


 


 本当はもっと他にも心配事があるはずなのに、やっぱり一番心配なのは江原ッチだという悲しい境遇のまどかだった。


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