サヨカ会本部に突入するのよ!
私は箕輪まどか。
現在、サヨカ会と言う宗教団体の本部を目指している。
私の憧れの西園寺蘭子さん達がピンチなのだ。
そして私達自身も。
心強い江原耕司君のご家族と一緒だから、何も心配はしていないのだけど、一つだけ心配な事がある。
小松崎瑠希弥さん。
高校を卒業したばかりの、ボンキュッ、ボンのお姉さんだ。
私の絶対彼氏のはずの江原ッチが、瑠希弥さんに心惹かれている。
それは確かに私はまた「スルペタ」かも知れないけど……。
但し、「スルペタがいい」と言うG県警鑑識課の宮川さんは嫌だ。
「まどかりん、着いたよ」
私の妄想タイムは終わった。
今は江原ッチを信じるしかない。
「行きますよ、まどかさん」
江原ッチのお父さんの雅功さんが言った。
「はい」
私達は車を降りた。
「あれは?」
車が一台停まっている。蘭子お姉さんのとは違う。
誰のだろう?
「急ぎましょう。異変があったようです」
お母さんの菜摘さんが告げた。
確かに強烈な波動だ。
これ、蘭子お姉さんの波動に似ている。
でも、何か違う感じがするのは、何故?
「何者だ、お前達は!?」
中から怪しい黒尽くめのおっさん達が現れた。
「正義の味方ですよ」
雅功さんのギャグが炸裂する。雅功さんと菜摘さんは瞬く間に男達を打ち倒した。
「先は長い。行きますよ」
「はい!」
私達は、その奇妙な建物の中に飛び込んだ。
中は天井の高い廊下がずっと続いていた。
次々に現れる敵を雅功さんと菜摘さんが倒す。
不意に現れる陰陽師の式神を私と江原ッチが連携して吹き飛ばす。
どれほどの敵を倒したのかわからなくなった頃、前から見た事のある人達が駆けて来た。
冬子さんと瑠希弥さんと……。誰だっけ?
「ご無事でしたか?」
雅功さんが笑顔で言った。
「まだ蘭子が戦ってるとこや。あのおっさん、無限に死霊を繰り出して来るねん。キリがないで」
見た事はあるが、名前が思い出せない関西のオバさんが言う。
「大仙の術具を見つけないと、蘭子さんが危ないわ」
冬子さんが言った。雅功さんが頷き、
「私達はその術具を探しましょう。西園寺さんは大丈夫です。負けたりしませんよ」
「わかりました」
瑠希弥さんは泣いていた。蘭子お姉さんが心配なのだろう。
こんないい人に嫉妬するなんて、私は何て嫌な奴なのだろう。
自分を恥じた。
「さあ、行きましょう」
雅功さんが走り出す。それに続いて菜摘さんと関西のオバさん、冬子さんが走り出す。
「行きましょう」
江原ッチが私を忘れ、瑠希弥さんの手を取って走り出した。
「え・は・ら・っ・ち!」
私は呪いの言葉を吐くように江原ッチを呼んだ。
「あ」
江原ッチは瑠希弥さんに詫びてから、私のところに戻って来た。
「ご、ごめん、まどかりん。俺、泣いてる女性に弱くてさ……」
「知らない!」
私は顔を背け、
「行きましょう、瑠希弥さん」
「え、ええ」
瑠希弥さんは私に手を取られて驚いていたが、そのまま走り出す。
「まどかりーん」
江原ッチが泣きそうな顔でついて来た。
「冬子さん、術具がどこにあるかわからんか?」
関西のオバさんが尋ねた。
「さっきの広間にはなかったわ。どこかに隠しているようね」
冬子さんが普通に話しているのを初めて見た。
「探してみるわ」
冬子さんの身体から、得体の知れない何かが飛び出し、あちこちに消えた。
何、今の?
「貴様ら!」
また雑魚が現れた。今度は関西のオバさんが一人で全員倒してしまった。
「邪魔じゃ、ボケ!」
やっぱりこの人、強いんだ。蘭子お姉さんが「親友」というだけの事はある。
今度こそ名前を覚えよう。
「こっちね」
大回廊とも言うべき廊下を右に曲がり、私達は進んだ。
「ここから先は行かせんぞ!」
陰陽師軍団が大挙して現れた。大量の式神が放たれ、私達に襲い掛かる。
「行くわよ、江原ッチ」
「う、うん!」
私が笑顔で声をかけると、江原ッチはようやく元気を取り戻した。
喧嘩は後でできる。
今は蘭子お姉さんのために戦う!
「オンマカキャラヤソワカ!」
江原ッチとのダブルパワーで威力倍増の大黒天真言を放つ。
「ぐえええ!」
式神が全部消え、陰陽師達も倒れた。
「凄いわ、まどかさん。さすが、先生が一目置く存在です」
瑠希弥さんにそう言われ、私は照れた。
「いやあ、それほどでも……」
何故か一緒に照れている江原ッチは放置する事にした。
「さ、先を急ごう」
雅功さんが走る。
私達もそれに続いた。