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高速道路は危険がいっぱいなのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者よ。


 今回は急いでるから、何も突っ込んであげないわよ!


 何でそんなに悲しそうな目で私を見るのよ!?




 私は、私の彼の江原耕司君と、彼のご両親である雅功まさとしさんと菜摘さんと共に山梨県に向かっていた。この前乗せてもらった四駆車だ。


「西園寺さん達はすでに山梨県に入っているようね。急がないと」


 助手席で菜摘さんが言う。すると雅功さんが、


「そうだね。できるだけ、急ごう」


と応じ、アクセルを吹かす。四駆車はグングン加速して、遅い車を抜いた。


「まどかさん、西園寺さん達に呼びかけてみて下さい。サヨカ会が妨害しているので、難しいでしょうが」


 雅功さんが言った。後部座席に江原ッチと座っている私は大きく頷き、


「やってみます」


と答えると目を瞑って念じた。


(蘭子お姉さん、聞こえますか? 瑠希弥さん、聞こえますか? 冬子さん、答えて!)


 あれ、もう一人いたような気がするけど……。ま、いっか。


「まどかりん、俺も手伝うよ」


 江原ッチが爽やかな笑顔で言ってくれた。


「ありがとう、江原ッチ」


 私はニコッとして応じたのだが、


「瑠希弥さん、答えて下さい」


と嬉しそうな顔で呟く江原ッチを見て、


「この!」


と頭を叩いた。すると江原ッチは、


「誤解だよお、まどかりん。瑠希弥さんが一番感応力が強いから、瑠希弥さんに呼びかけたんだよ」


「ホント?」


 私は疑いの眼差しを向けた。江原ッチは苦笑いをして、


「ホントだって。まどかりんも瑠希弥さんに集中してよ。それが一番効率がいいはずだから」


「わかった」


 その時、ふと気づく。


「江原ッチ」


「何?」


 私の声のトーンが変わったので、江原ッチはギクッとしたようだ。


「何で瑠希弥さんが感応力が一番強いって知ってるの?」


「う……」


 容疑者耕司の目が泳ぐ。


「答えなさい」


「すみません、メールしてるんです」


「……」


 私は呆れてしまった。確かに瑠希弥さんの名刺には、メールアドレスが入っていたけど。


「瑠希弥さんは霊媒師の家系だから、感応力は高いって言ってたんだよお。許してよお」


 江原ッチは私を仏様のように拝んでいる。


「わかった。信じる」


 私は前を見て、


「それから、瑠希弥さんて呼ぶの、やめて」


 江原ッチは何か言いたそうだったが、


「わ、わかったよ、まどかりん」


 私はニコッとして江原ッチを見た。江原ッチはホッとした顔で、


「何だか嬉しいな」


「何が?」


 意味不明だ。江原ッチは俯いて、


「まどかりんにヤキモチ妬かれた気がしてさ」


 私は耳まで赤くなった。


「そ、そう」


 それは、妬くわよ! 


 瑠希弥さんて、蘭子お姉さんと違って、江原ッチの恋愛対象に入るんだもの。


 瑠希弥さんが全く江原ッチに興味がないみたいだから、それほど心配はしてないけど。


 それでも、江原ッチが嬉しそうに瑠希弥さんに呼びかけるのは気分が悪いの!


「と、とにかく、二人で呼びかけるわよ、江原ッチ」


「おう」


 私達は瑠希弥さんに集中して念を送った。


 


 私と江原ッチの必死の呼びかけにもかかわらず、全然瑠希弥さんと交信できない。


「サヨカ会が相当強い妨害の念を送っているようだね。困ったな」


 雅功さんが呟く。ところが、私はそれどころではなかった。


 緊急事態なのだ。


 所謂いわゆる尿意が押し寄せている。


 でも、何となく切り出しにくい状況だ。


 かと言って、このまま最後まで我慢できる水位は超えてしまった。


 私は涙目で江原ッチを見た。


 すると江原ッチはすぐに気づいてくれて、


「父さん、次のサービスエリアで停めてよ。俺、もう漏れそうだから」


と言った。ああ、惚れ直したわ、江原ッチ!


「わかった。少し休憩しようか」


 四駆車は新しくできた狭山パーキングエリアに入った。


「まどかりんも行く?」


 江原ッチのフォローに泣きそうになる。


「う、うん、一応」


 私達は全員車を降り、トイレに行った。


 江原ッチは私に気を遣ってくれて、


「急ごう!」


と駆け出す。私は限界水位を気にしながら、急いだ。


「ふう」


 つい溜息を吐いてしまうほど、私は安堵感に包まれていた。


「さあ、出発しようか」


 雅功さんが運転席に座り、エンジンをかけた時だった。


「え?」


 周囲にいた観光客達が一斉に私達の車を取り囲んだのだ。


「サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ、サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ……」


 大きな鈴を鳴らしながら、その人達がそう叫んでいる。何?


「サヨカ会の信者達だ!」


 雅功さんが叫んだ。私と江原ッチはギョッとして顔を見合わせた。


「一体何人いるのかしら?」


 菜摘さんが周囲を見渡して呟く。


「百人ではきかないな」


 雅功さんも歯軋りしていた。


「サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ、サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ……」


 信者達は次第にその数を増やし、私達の車を何重にも取り囲み始めた。


「仕方ないな。突破するぞ、菜摘」


「はい」


 雅功さんがハンドルから手を放し、早九字を切った。


臨兵闘者皆陣列在前りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん!」


 途端に車の前にいた信者達が、


「ぐあああ!」


と呻き出して車から離れた。


「まどかりん、行くよ!」


「うん!」


 叶秀明との戦いで修得した私と江原ッチの合体攻撃よ!


「インダラヤソワカ!」


 雷撃が信者達を遠ざける。


「今だ!」


 雅功さんがその隙を見逃さずに車をスタートさせた。


「サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ、サーヨカサヨカ、サヨカ、サヨカ……」


 信者達はブツブツ言いながら、近くにあった観光バスに乗り込んだ。


 そして、追いかけて来た。


「何て事だ……。連中がここまでするなんて……」


 雅功さんがドアミラーを見て言う。


 サヨカ会。恐ろしいところね。


 


 でも、絶対に蘭子お姉さん達と合流しようと心に誓うまどかだった。

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