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最強の男(?)が現れたのよ!

 私は箕輪まどか。中学生で霊感も強い、モテ期の美少女だ。


 何よ、モテ期って? 私は昔からモテるわよ。


 え? ウソを吐くな?


 う、うるさいわね!


 


 この前、あの綾小路さやかと牧野徹君に頼まれて、かのう秀明ひであきとか言う自称「イケメン」と対決した。


 そいつも霊能者だったが、私の足元にも及ばず、呆気なくケリがついた。


 ところが、その叶が、事もあろうに私にラブレターをよこしたのだ。


 もちろん私にそんな気はない。


 そして何より、私の絶対彼氏の江原えはら耕司こうじ君が、


「俺がぶっ飛ばす!」


と怒り心頭なのだ。


 で、心頭って何?


 私達はコンビニで待ち合わせて、遠回りをしながらの下校兼デート中だ。


「ダメよ、江原ッチ。弱い者いじめは良くないわ」


「そ、そだね」


 江原ッチは何かを期待していた様子だったが、私はそれほどワンパターンではない。


「ねえ、江原ッチ」


「な、何?」


 妙に焦る江原ッチが面白い。


「今、私にキスして欲しかったの?」


 私はニヤーッとして彼の顔を覗き込む。


「あ、いや、その、えーと……」


 江原ッチは真っ赤になった。肯定する事はできないし、かと言って否定したら私の機嫌を損ねると思ったのだろう。


「素直にそう言えばいいの」


 私は誰もいないのを確認して、彼のほっぺにチュッとしてあげた。


「わあお!」

 

 江原ッチは飛び上がって喜んだ。


「ほっぺくらいなら、いつでもいいわよ」


 私はあの探偵事務所のメイドに負けない笑顔で言った。


「ま、まどかりん!」


 江原ッチは号泣していた。


 そんなに喜んでもらえれば、私もした甲斐があるわ。


 その時だった。


「僕のまどかさんにチューさせたのは、お前か?」


 どこかで聞いた事のある気持ち悪い声がした。


「誰だ!?」


 号泣をピタッとやめて、江原ッチが周囲を見渡す。まさか、ウソ泣きじゃないわよね?


「僕だよ」


 思った通り、叶が現れた。何なのよ、こいつ?


「あいつが、さっき話した自称イケメンよ」


 私は江原ッチに囁いた。


「そうか。向こうからやられに来るとは、バカな奴だね」


「手加減してね、江原ッチ」


 私が言うと、江原ッチはフッと笑って、


「わかってるよ」


 すると叶は卑怯にもその隙を突いた。


「インダラヤソワカ!」


「うわ!」


 江原ッチはかわす事も防御する事もできず、雷撃を受けてしまった。


「江原ッチ!」


 私は痙攣けいれんしながら倒れる江原ッチに駆け寄る。


「まどかさん、そんな弱い奴と別れて、僕と付き合おうよ」


「はあ?」


 私は江原ッチを助け起こしながら、叶を睨みつける。


「あんた、自分の実力をわかってないの?」


 私もお返しとばかりに帝釈天の真言を唱えた。


「インダラヤソワカ!」


「無駄だよ」


 雷撃は何故か叶の手前で消滅した。


「何?」


 私は仰天した。


光明真言こうみょうしんごんか……」


 江原ッチが起き上がって言った。


 叶はニヤリとして、


「へえ、君、詳しいね。そう、僕はいかなる真言も弾いてしまう真言を身体に書いているのさ」


と言うと、いきなり服を脱ぎ始めた。


「キャッ!」


 一応乙女っぽく、手で顔を覆ってみせる。


 そこ! ホントは見る気満々とか言わないでよ!


「オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニパドマジンバラハラバリタヤウン。これさえ唱えれば、全ての仏様と通じ合える。だから、僕にはどんな真言も通用しない」


 指の間から覗くと、上半身にびっしりと墨で真言を書いた叶が見えた。


「さてと。君にはもう少し眠っていてもらおうかな、元彼君!」


 叶が兇悪な顔で江原ッチを見下ろす。


 私も江原ッチもなす術がない。                


「江原ッチ!」


「まどかりん!」


 私達は目を閉じて抱き合った。


 生まれ変わっても、また付き合おうね、と心の中で思った。


 ボカン、ドサッ。


 何かが倒れる音がした。


「おいおい、江原、こんなとこでラブシーンかよ」


 聞いた事のある声PART2だ。


 私達は目を開いて声の主を見た。


 そこには、私の親友近藤明菜と、明菜の彼の美輪幸治君がいた。


 ふと見ると、地面に叶が倒れている。美輪君に殴られたようだ。


「こいつが二人に何かしようとしてるのをアッキーナが見つけて、俺を呼んだんだよ」


 すると明菜が冷たく一言言う。


「いつまで抱き合ってるのよ、あんた達」


 周りには野次馬が集まっていた。


「わわ!」


 私と江原ッチは、真っ赤になって離れた。


「それにしても、この変態、何者?」


 明菜が叶を軽く蹴飛ばして尋ねる。


「綾小路さやかのストーカー」


「は?」


 明菜と美輪君は、キョトンとした。


 


 私は明菜達に簡単に事情を説明した。ここはコンビニの通称「たむろ場」。


「全く、あの女、いつまで私達に迷惑かければ気がすむのよ」


 明菜はさやかにかなり深い恨みがあるから、いつになくご立腹だ。


「まあ、そう言わないでよ。今は牧野君と付き合っていて、大人しくしてるんだからさ」


 私は怒る明菜をなだめた。


「そうだよ、アッキーナ。人を怨むと醜くなるんだぜ」


 美輪君がそう言うと、


「え、私って、そんなに醜いの?」


 明菜が狼狽える。美輪君は、


「少し醜くなった方がいいくらい可愛いよ」


と臆面もなくいってのけた。、私と江原ッチは呆れて顔を見合わせた。


「あら、やだ、美輪君たら……」


 おおお。照れる明菜なんて初めて見たぞ。




 それにしても……。


 叶の奴、あれで諦めてくれたのかな?


 不安が残るまどかだった。

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