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牧野徹君が久々にメインで登場なのよ!

 私は箕輪まどか。中学生で霊能力がある。そしてみんな、私の事を「美少女霊能者」と呼ぶ。


 ……。あのね。


 最近、自己紹介で完全に遊んでるでしょ?


 え? 「美少女を入れろって言ったのはお前だろ?」ですって?


 言ったかも知れないけど、言い方ってモノがあるでしょ!


 もう、いいわよ、いじわる!


 


 この前、涙で別れた綾小路さやかが、実は私の絶対彼氏の江原耕司君が通っている中学に転校したのを知った。


 あの時の涙を返して! そう叫びたかった。


 さやかの転校を知り、誰よりも動揺したのは、親友の近藤明菜だ。


 この前、明菜の彼氏の美輪幸治君が、さやかの策略であいつの彼氏になりかけたからだ。


 明菜はそれでも表面上は冷静を装い、


「あ、美輪君」


と言いながら間違って私の携帯にかけるという、昭和の時代のお約束をやってくれた。


「大丈夫よ、アッキーナ。美輪君には江原ッチがついているから。心配しないで」


 私はそう言って明菜をなだめたが、前回の事件が事件だけに、彼女の動揺は収まらなかった。


 階段から転げ落ちそうになったり、間違って男子トイレに入り、しかも気づかずに用を足してしまったりと、明菜とは思えない混乱振りだった。


「ああ、死にたい……。男子トイレに入って気づかないなんて……」


 明菜は机に顔を突っ伏したまま、呟く。


「いやあ、俺、ビックリして、ションベン止まっちまったよ」


 肉屋の力丸卓司君が無神経な事を言う。


 いつもなら、リッキーに鋭い突込みを入れる明菜だが、そんな気力はないようなので、


「アッキーナを苛めると、靖子ちゃんに言いつけるぞ!」


と代わりに言ってあげた。


 靖子ちゃんとは、江原ッチの妹さんで、驚いた事に現在リッキーと付き合っている可愛い小学生の事だ。


「や、やめてくれよ、箕輪ァ」


 靖子ちゃんの名前を出されると、リッキーは途端に大人しくなる。


 そんな会話を交わしている間も、明菜は机に顔を埋めたままだった。


「今日、様子を見に行って来るから」


 私が言うと、明菜はようやく顔を上げて、


「ありがとう……。私、怖くて行けないから、後でメールで教えて」


「わかった」


 明菜がこれほど落ち込むような事をしたさやかが許せない!


 きっちり話をつけてあげるわ!




 そして放課後。


 私は江原ッチにさやかの監視を頼み、江原ッチの中学校へ向かった。


 すると、


「まどかちゃん」


と何もかも皆懐かしい声。決して沖田艦長ではない。


 振り返ると、そこにはかつて私と付き合った痕跡がわずかながら残っていると思われる牧野君がいた。


「どうしたの、マッキー?」


 私が尋ねると、彼は苦笑いして、


「まだそう呼んでくれるんだ。嬉しいよ、まどかちゃん」


「そ、そう?」


 牧野君は何故か悲しそうだ。彼の気を探った。


 何て事? 牧野君は、さやかがいなくなって寂しいのだ。


「マッキー、さやかがいなくなって寂しいの?」


 私は単刀直入に訊いた。もったいぶった言い方は好きではないのだ。


「え? どうしてそんな事がわかるの?」


「顔に書いてある」


 私は悪戯っぽく笑って言った。牧野君は赤くなった。


「そ、そうなんだ」


 彼は俯いて、


「最初は、彼女に操られていた。だから、まどかちゃんと別れさせられて、凄く悲しかったし、悔しかった」


 私は黙ったままで彼の話を聞いた。


「でも、さやかちゃんと一緒に帰ったり、いろいろなところに行ったりしているうちに、彼女に操られていないのに、さやかちゃんといると楽しいって思うようになっていたんだ」


「そうなんだ」


 牧野君は、私や明菜の知らないさやかを見ていたんだ。


「で、気づいたんだ。僕はさやかちゃんが本当に好きなんだって」


 胸がズキンとしなかったと言えば嘘になる。


 今でこそ、牧野君は只の同級生だけど、小学校の時は密かに憧れていた存在だったのだから。


「だから、この気持ちを彼女に伝えに行こうと思うんだ」


 牧野君は私を真っ直ぐに見た。付き合っていた時、私達はこれほど相手を見ながら話しただろうか?


 あれは恋愛と思っていただけの只の「お遊び」に過ぎなかったのかも知れない。


「だから、僕も一緒に行きたいんだ。いいかな、まどかちゃん?」


 何だか、急に牧野君が大人っぽく見える。


「いいよ。でも、手はつながないからね」


「アハハ」


 そんな冗談でも言わないと、私は泣いてしまいそうだったのだ。


 心のどこかで、私は牧野君に酷い事をしているのではないかと思っていたのかも知れない。 


 だから、牧野君を応援したかった。


 でも、それを言葉にするのは恥ずかしかったので、ついあんな事を言ってしまった。


 ごめんね、牧野君。素直じゃないまどかを許してね。


 


 私達はしばらくして江原ッチのいる中学に着いた。


 私と牧野君が一緒に現れたので、江原ッチが動揺しているのがわかって、何だか嬉しくなった。


「ま、ま、ま、まどかりん、まさか、()りをもどしたんじゃないよね」


「違うよ、江原君。僕はさやかちゃんに会いに来たんだ」


 牧野君の大人な発言に、江原ッチはすっかり飲まれていた。


「あーら、やっとおでましね、箕輪さん……」


 さやかには、私が話があると伝えてもらっていたので、彼女は牧野君が来る事は知らない。


 あんなに驚いているさやかを見るのは初めてだった。


「ど、どうして貴方がここにいるのよ、牧野君?」

 

 さやかは逆ギレのような態度で怒鳴った。しかし、大人の牧野君は、


「さやかちゃんにどうしても僕の本当の気持ちを伝えたかったので、来たんだ」


 さやかはますます動揺した。おかしくて笑ってしまいそうだったが、何とか堪える。


「僕は確かに最初は君の力で操られて、君の事を好きだと思い込まされていた」


「そうよ! その通りよ。貴方は私の事なんか好きじゃないのよ。私も貴方の事なんか、好きじゃないけどね」


 そんな強がりを言いながら、さやかは涙ぐんでいた。


 どうしてこいつ、こんなにツンデレなのよ。私みたいに素直になりなさいよ。


「あんたにだけは言われたくないわ!」


 私の心を読んださやかに言われた。


「でも、今は違うよ。君に操られていないのに、君の事が好きなんだ」


 牧野君のその言葉に、私と江原ッチまで顔が赤くなった。


「嘘吐かないでよ! あんたは私の事なんか、好きじゃないわ! からかうのはやめて!」


 さやかは泣きじゃくりながらもまだツンデレキャラを続けていている。


 周囲に他の生徒達が集まり始めた。


 いい加減、そのツンデレ、やめればいいのに。


「だから、あんたにだけは言われたくないわ!」


 また心を読まれて怒鳴られた。


「からかってなんかいないよ。僕は本当にさやかちゃんの事が好きなんだ。だから、もう一度僕と付き合って欲しい」


 牧野君は、さっき私を見てくれたのと同じ真っ直ぐな目で、さやかを見ていた。


「私は、あんたを利用したのよ。(もてあそ)んだのよ。なのにどうして、そんな私を好きになったりするのよ?」


 さやかのツンデレは国宝級だ。私も彼女には敵わない。


「だから、何度も言わすな! あんたにだけは言われたくない!」


 更に突っ込まれた。


「何でかな? 多分、本当は、さやかちゃんがいい子だってわかったからかな」


 牧野君のセリフは、往年の大○テレビにも負けないくらい臭かった。


 堀ち○みもビックリです、教官!


 さやかは大泣きしながら、歩み寄った牧野君の胸に飛び込んだ。


 私も江原ッチも、その昭和爆発の恋愛ドラマに涙してしまっていた。


「ありがとう、まどかちゃん」


 牧野君は何故か私にお礼を言って、泣いたままのさやかをしっかりと支えたまま、校庭を出て行った。


「これにて一件落着だね、まどかりん」


 江原ッチが爽やかな笑顔で言った。私もあのメイドに負けない笑顔で、


「そうね、江原ッチ」


と応じた。


 


 今回は珍しく、霊が出て来ないまどか劇場だった。 

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