表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/235

謎の溺死事件を解決するのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。


 やっとまともな自己紹介になったわね。


 え? 普通自分の事を「美少女」って言う奴はいないですって?


 仕方ないじゃない、本当の事なんだから。


 文句がある人は、「りったん」あてにメッセ送って頂戴(ウソです、送らないで下さい)。


 


 今日は、私の住んでいるM市の隣、T市の市営プールに来ている。


 デートではない。霊視の仕事でだ。だから、プールは臨時休業で、私達以外誰もいない。


 一緒にいるのは、エロ兄貴の慶一郎と鑑識課員さん達だ。


「何でえ何でえ。今日は、まーどかちゃんの水着姿を拝めると思って来たのになあ」


 鑑識最古参の宮川さんが恐ろしい事を言った。


 この人、会うたびに「危ない度数」がアップしてる気がする。


「ここが現場だ。被害者の霊はいるか?」


 宮川さんを完全に無視して、兄貴が尋ねる。


 兄貴は宮川さんがいると、私に優しい。


 だから、宮川さんには会いたくないけど、帰りのご褒美のためにはいて欲しいのだ。


 複雑な思いのまどかである。


「ちょっと待って」


 被害者は、二十代の女性。高校時代、水泳の選手だった人だ。

 

 その人が、深さ一メートルのプールで溺死した。


 事件性があると判断され、私にお呼びがかかったのだ。


「一緒に来ていた友人もプールの監視員達も、彼女のそばに不審な人物がいるのを目撃していないんだ」


 兄貴は今日は大真面目だ。何故なら、その被害者の女性は兄貴の同級生の妹さんなのだ。


 被害者が知り合いだから真面目に仕事するって、どうなのよ? まずいんじゃないの、そういうのって?


「だから、被害者の霊に直接訊いて、犯人を割り出したいの」


 私のお姉さん候補確定目前の里見まゆ子さんが付け加えた。


 最近、兄貴とまゆ子さんは、こっそり付き合っているらしい。


 何だか凄く嬉しい。


 おっと。仕事ね。


 辺りを見渡す。いた。


 あれ? どうしてプールサイドの端にいるの?


 水の中にいないって事は、地縛霊にはなっていないのか。


「どうしてそんなところにいるんですか?」


 私は怯えたように身を縮めているその女性の霊に声をかけた。


「わ、私、殺されたの……」


「え?」


 いきなりの展開だ。殺人事件?


「誰に?」


「わからない。突然、凄い力で水の中に引き込まれて……」


 彼女は泣き出してしまった。


 その時、私は別の波動を感じた。


「こっち?」


 私はプールに近づく。そうか。そういう事ね。


「謎は全て解けたわ、お兄ちゃん」

 

 私は胸を張って言った。


「まどかちゃん、いいなあ。そのペッタンコな胸がいい」


 宮川さんのキモい発言を無視して、私は続ける。


「犯人は、プールの中にいるわ」


「え?」


 鑑識さん達が一斉にプールを見た。


 私は摩利支天まりしてんの真言を唱えた。


「オンマリシエイソワカ!」


「グギャーッ!」


 雄叫びを上げて、プールの底に潜んでいた霊が飛び出して来た。


 三十代後半の男の霊だ。


 こいつも溺死したのだろうか、身体がプヨプヨしている。


 しかも海パン姿なので、キモい。


 宮川さんといい勝負だ。


「どうしたんだ?」


 兄貴が尋ねる。残念な事に、私以外このキモいおっさんの霊が見えない。


「まゆ子さん、離れて下さい。男の霊です。こいつ、若くて奇麗な女性が大好きなんです」


「え?」


 まゆ子さんは、「若くて奇麗な女性」に反応して、赤くなってしまって動かない。


 ああ、言葉の選択を間違えたかな。


「里見さん!」


 兄貴がまゆ子さんをプールから遠ざけてくれた。


「グヘへ、俺の邪魔すんなよ、ガキ! 俺は若い姉ちゃんが大好きなんだよォッ!」


 男の霊は、悪霊になっていた。こうなったら、除霊するしかない。


「ガキで悪かったわね! でも将来、あんたみたいなキモい奴に襲われたら嫌だから、逝かせてあげるわ!」


 私のその言葉を聞き、何故か宮川さんが悶絶したらしいが、そんな事はどうでもいい。


「インダラヤソワカ!」


 バチバチバチッと雷撃が走り、キモいおっさんの霊を直撃した。


「ウギャギャーッ!」


 おっさんの霊は断末魔と共に消失した。


「除霊完了」


 私はホッとして微笑んだ。そして、女性の霊を見る。


「もう大丈夫。だから貴女も、ね?」


 女性の霊は笑顔になった。


「ありがとう。本当にありがとう」


 彼女は光に包まれ、天へと消えた。


 こうして、事件は無事解決した。


 


 そして県警に向かう車の中。


 恒例のおねだりタイムである。


「今日は折角T市まで来たんだから、パスタが食べたいよお、お兄ちゃん」


 私は甘えた声で助手席の兄貴に言った。T市はパスタ料理で有名なのだ。


「宮川さんに頼めば、高級イタリアンレストランで食べさせてくれるぞ」


「やだよお、あの人、キモいんだもん」


 すると運転席のまゆ子さんが、


「この先に人気のお店がありますから、そこでお昼にしませんか?」


と提案してくれた。ああん、大好き、まゆ子さん!


「そ、そうですか。ま、里見さんがそう言うのなら……」


 兄貴は仕方なさそうに言ったが、ホントは嬉しいのだ。


 二人きりの時は、


「慶君」


「まゆりん」


と呼び合っているらしいから。


 いいなあ、職場が一緒の恋人同士って。


 私の彼の江原ッチの場合、お父さんの跡を継ぐのだろうから、一緒に働くって事は、結婚?


 きゃあああ!


 妄想が暴走しそうなまどかだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ