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不思議な事件に遭遇したのよ!(前編)

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。


 あれ? 自己紹介がまともになった。


 ようやく作者の「バカ」が治ったのかな?


 ああ、無理か。治る訳ないな。




 最近、憧れの女性である西園寺蘭子さんと連絡が取れない。


 噂によると、弟子ができてその育成に忙しいらしいのだ。


 その人、羨ましいな。私も蘭子お姉さんに弟子入りして最強の霊能者の名を手に入れたい。


 あ。野望がある訳じゃないんだからね。


 勘違いしないでよ。


 取り敢えず、あの忌ま忌ましい悪役の綾小路さやかより強くなりたいというのが、当面の目標だ。


 え? さやかって誰ですって? 忘れたのなら、思い出してくれなくてよろしくてよ。


 そこ、気持ち悪いとか言わないの!


 


 そして。


 待ちに待った夏休みだ。


 結局部活動はパスした私は、勉強に打ち込む夏休みにするつもり。


 見え透いた嘘ではない。本気だ。


 だって、私の絶対彼氏の江原耕司君は、G県でトップクラスの高校を受けるんだもの。

 

 私もそこに入れるように頑張らないと。


 だから、勉強に打ち込むのよ。


 江原ッチはちょっとおバカなイメージだったけど、天然なだけで、頭はいいのよ。


 天然というのが、少しだけ引っかかるんだけどね。


 ところが!


 そんな二人の仲を裂くように、あのエロ兄貴が登場する。


「明日、また霊視の仕事を受けたんで、頼むぞ」


「えーっ、嫌だよ。明日は江原ッチと図書館でお勉強するの!」


 私は必死で抗議したが、


「ご褒美は、ファミレスでケーキ食べ放題だぞ」


と悪魔の囁きを受け、あっさり承知した。


 ごめんね、江原ッチ。まだ、色気より食い気のまどかなの。


「あいつは同伴不可だからな」


 兄貴に先に釘を刺された。江原ッチも一緒にと言おうとしたのを見破られたのだ。


 この前、兄貴の同僚の里見まゆ子さんが、霊のせいで江原ッチに色目を使ったのを兄貴は覚えていて、まだ警戒しているのだ。


 しかもまゆ子さんは、


「江原君て、カッコいいですね」


と兄貴に言ったらしいのだ。まゆ子さん、正直過ぎ。


 そんな訳で、江原ッチに敵対心を持つ兄貴は、彼が来るのを拒否した。


「じゃあ、私も行かない」


 そう言って抵抗する事ができない弱い私だった。ケーキの魅力に負けたのよ……。




 そんな妄想を繰り広げていると、現場に到着した。


「被害者は女性です。犯人は被害者の反撃で怪我をしたようですが、大量の血痕を残したまま、姿を消してしまいました」


 まゆ子さんが説明してくれた。


「どうだ、何かわかったか?」


 兄貴はせっかち過ぎる。黙って座ればピタリと当たるなんて事、現実にはあり得ないのだ。


「あれ? 被害者の霊は、ここにはいないわ」


「え? また適当な事を言ってるんじゃないだろうな?」


 兄貴が疑惑の眼差しを向けて来る。私はムッとして、


「そんな事しないわよ! 恐らく、犯人に取り憑いているんだと思うわ」


「それじゃあ、ここにいても犯人の足取りは掴めないのか」


 兄貴は悔しそうだ。


「そういう事ね。被害者側からは、何もわからないわ」


 そう言ってから、私はハッとした。


「あれ?」


 辺りをもう一度見渡すと、男の霊が立っているのが見えた。


「あんた、誰?」


 私はそいつにツカツカと近づき、話しかけた。


「冗談じゃないぞ。殺されたのは俺の方だ! あいつは俺を殺して、俺の遺体を隠したんだよ!」


「ええ!?」


 私はあまりの展開に驚き、事情を兄貴達に話した。


「どういう事だ? 被害者の女性の遺体はここにあったんだぞ。それなのに、男の方が被害者って、どういう事だ?」


「私が聞きたいわよ!」


 事件はあまりに謎めいていた。


 犯人と思われた男が実は被害者で、遺体で発見された女性が加害者?


 じゃあ、女性の霊はどこに行ってしまったの?


 取り敢えず、男の霊の証言に基づき、遺体を捜索すると、確かに言われた場所に埋められていた。


「あの女、俺が殺そうとしているのを知って、俺を罠にかけて殺したんだ」


 何だかドロドロして来た。怖い。


「でも、俺もそのままじゃ引き下がれなくて、あいつを道連れにしてやったのさ。だから、あそこであいつは死んでいたんだ」


「じゃあ、その人の霊はどこに行ったの? どうして現場にいないのよ?」


 私は男の霊に詰め寄った。


「お、俺だってわからねえよ」

 

 ダメだ。謎が解明できない。どうしよう?


 その時、ふとある事に思い当たった。


「ねえ、一つ教えて。その女性は、何かの宗教に入っていなかった?」


「ああ、入ってたな。俺にもしつこく入信を勧めやがってさ。それも鬱陶しくて、殺したんだ」


「やっぱりね」


 私はようやく謎を解明する事ができた。


「何だ、何かわかったのか?」


 兄貴とまゆ子さんが私を見る。私は胸を張って、


「謎は解けたわ。女性の霊は、恐らくある宗教団体の総本山に取り込まれたのよ」


「ええ?」


 兄貴もまゆ子さんもキョトンとしている。


「前に聞いた事があるのよ、江原ッチのお父さんに。入信した人の魂を吸い取る教祖がいるってね」


「妖怪か、そいつ?」


 ビビりの兄貴は、まゆ子さんの陰に隠れている。


「妖怪じゃないわ。魂を吸い取るって言うのは大袈裟だろうけど、何か怪しい事をしているのは確かね」


 という事で、しばらくぶりの前編のまどかだった。


 後編に続く~。

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