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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
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見えない敵は怖いのよ!

 私は箕輪まどか。高校生の霊能者だ。


 恐ろしい程の執念を持った敵、内海うつみ廉寛れんかん


 廉寛は今から四百年以上昔に死んだ呪術者。だが、その残留思念は恐るべき能力と共に時代を超えてこの世に留まり続けている。


 しかも、廉寛は、尊敬する西園寺蘭子さん達が命懸けで倒した内海うつみ帯刀たてわきに闇の仏具を渡した張本人でもある。


 その闇の仏具は、強敵だったサヨカ会の初代宗主であった鴻池こうのいけ大仙だいせん、その息子の仙一、更に私達が通学しているM市立第一高校の生徒会長であった上田博行とその母親である桂子にも渡っていた。


 上田親子をやっつけて、ようやく決着がついたと思ったのだが、闇の仏具はそれで全部ではない事がわかった。


 大仙が持っていた独鈷どっこと対になっているものらしいのだ。


 大仙が持っていた独鈷は、小倉冬子さん、今は濱口冬子さんが持っている。


 冬子さんのご両親はサヨカ会に入信していて、その凶悪さを知ったがために大仙に命を奪われた。


 冬子さんも大仙によって魂の一部を独鈷に封じ込められていた。


 大仙を倒した時、それを解放する機会があったのだが、冬子さんは私達との記憶を失うのがつらいので、未だに独鈷に封印したままである。


 


 そして今、一堂に会した私達は、蘭子お姉さんの親友の八木麗華さんのお父さんである矢部隆史さんの運転するマイクロバスで、廉寛の墓があると思われる富士山麓に向かっている。


 日本の名だたる霊能者が集まっているのだから、どんな相手でも勝てると思ったのだが、最後の闇の仏具を所有しているのは、霊能者の可能性が大きい。


 しかも、そいつが持っていると思われる独鈷は、霊能力がない大仙が使っても、私達は苦戦したのだ。


 霊能者がそんなものを持ち、尚且つ使えば、どれほど恐ろしい事になるか、想像力がない私にもわかる。


「只一点、引っかかるのは、それ程の闇の仏具を何故、内海帯刀は使わなかったのか、という事なのですよ」


 私の彼の江原耕司君のお父さんである雅功まさとしさんが言った。


「そうですね。それは気になります」


 蘭子お姉さんの弟子であり、私と霊感親友の綾小路さやかのお師匠様でもある小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんが応じた。


 私とさやかは興味津々の目で雅功さんを見た。すると雅功さんは、


「引っかかるというだけで、それ以上の事はわからないのです。帯刀は何も残さずに浄化してしまいましたからね」


 ちょっと残念な答えだった。私はすかさず瑠希弥さんを見た。瑠希弥さんは苦笑いをして、


「江原先生におわかりにならない事が、私にわかる訳ないですよ、まどかさん」


 謙虚だ。ミス謙虚だ。麗華さんとさやかに見習って欲しいくらいだ。


「悪かったな、まどか」


 麗華さんに睨まれた。


「だから、心の声を聞かれないように訓練しなさいよ、まどか」


 さやかには半目で見られた。また聞かれていたのか……。恥ずかしい……。


 


 何かあるのではないかと神経を研ぎ澄ませていたのだが、何事もないまま、バスは山梨県に入った。


 いつか来た道。


 そう、かつてサヨカ会と戦った時にも通った道なのだ。


 上田親子も富士山麓にこだわった。大仙もそうだ。


 その大元が、廉寛の墓。そこに一体何があるのか? 


 不安なまどかである。


「そんなに不安か、箕輪まどか?」


 いきなり、座席に備えつけられている肘掛けに人の顔が浮かんで言った。


「何!?」


 私とさやかはギョッとして肘掛けから腕を放した。


 周囲にいた江原ッチ、雅功さん、蘭子お姉さん、瑠希弥さん、そして助手席の麗華さんまで私達を見た。


「来たな、敵さんが?」


 麗華さんは嬉しそうだ。


「それ程大勢で来るのか、臆病者共が。束になってかかって来ても、私には敵わないぞ」


 その顔は挑発めいた事を言い放った。


「瑠希弥!」


 蘭子お姉さんが叫んだ。


「はい!」


 瑠希弥は江原ッチの妹さんの靖子ちゃんに目配せして、感応力を全開にした。


「無駄だ。私がどこにいる何者なのか、探るつもりであろうが、その程度の児戯にも等しい力では辿り着く事はできない」


 肘掛けの顔は消えた。次の瞬間、その顔が天井に大きく現れた。


「いやああ!」


 親友の近藤明菜が悲鳴を上げた。気功少女の柳原まりさんは怯える坂野義男君をなだめている。


「大丈夫、アッキーナは俺が守る!」


 彼の美輪幸治君が明菜を庇うように抱きしめて言った。相変わらずのバカップルぶりに呆れてしまいそうになる。


「瑠希弥と靖子ちゃんはおとりよ、おバカさん」


 蘭子お姉さんがドヤ顔で言ったので、冬子さんが小さく悲鳴を上げたのは蘭子お姉さんには黙っておこう。


「だから、まどかちゃん、心の声が大きいのよ……」


 蘭子お姉さんは凹んでいた。あらら……。


「二段構えか!」


 天井に現れた顔が悔しそうな表情になった。


「結界を突き抜けてここまで来てくれてありがとう。だが、只では返さないよ」


 矢部さんは運転しながらも術を使っているようだ。


「おのれ!」


 敵は身動きが取れなくなっていた。


「貴方の野望は阻止します。これはほんの挨拶代わりです」


 雅功さんが笑顔で告げる。何だか、さっきの蘭子お姉さんより怖い。


「だから、丸聞こえですよ、まどかさん」


 雅功さんにもダメ出しされてしまった。


「なるほど、これは楽しみだな。せいぜい、気張ってみろ」


 天井の顔が消えた。


「さすがですね。あれだけ罠を張って待っていたにも関わらず、敵の正体がまるでわかりませんでした」


 雅功さんが真顔で言った。矢部さんはハンドルを切りながら、


「私もです。名前くらいは引き出そうと思いましたが、全く見破れませんでした」


「何や、おとん、情けないな」


 麗華さんは容赦のない事を言う。


「すまない、麗華」


 矢部さんは笑ったのかも知れないが、やっぱり怖い。


 それは私だけではなく、蘭子お姉さんも、瑠希弥さんも、そして靖子ちゃんも同じだった。


 肉屋の御曹司の力丸卓司君が大人しいと思ったら、さっき天井に顔が浮かび上がった時、気絶したらしい。


 リッキー、カッコ悪いわよ、全く。


「思った以上に強敵みたいですね、江原先生」


 濱口さんが冬子さんを気遣いながら言った。冬子さんは今では力のほとんどを失っている。


 それでも、自分の人生を大きく左右した闇の仏具の事は気になるらしい。


 そして何より、濱口さんと離れる事で、冬子さんが標的になるのを濱口さん自身が恐れたらしいのだ。


「さすがに最後の仏具の所有者だけありますね。今までのどの相手より奸智に長けている気がしますよ」


 雅功さんが言った。

 


 「最後」という言葉のせいで違う意味で緊張感が高まるまどかだった。

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