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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
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逆転の逆転のそのまた逆転なのよ!

 私は箕輪まどか。高校生の霊能者。


 いよいよ、サヨカ会残党の復権を画策している上田親子との対決が始まった。


 栃木県の日光東照宮に現れた上田親子を、西園寺蘭子さんの親友である八木麗華さんのご両親、矢部隆史さんと岡本綾乃教授が迎え撃った。


 上田桂子は、蘭子お姉さんと神田原かんだはら明蘭めいらんさんのみが詠唱できる究極の浄化真言である六字大明王陀羅尼ろくじだいみょうおうだらにを使った。


 それだけでも衝撃的だったが、闇の力を使う矢部さんを窮地に陥れた。


 一気に形勢を逆転されてしまった私達は混乱した。


 ご両親の危機に麗華さんが道場を飛び出した。


 それを蘭子お姉さんが追いかけ、更に小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんまでもが追いかけて行ってしまった。


 そればかりではなく、明蘭さんとそのお母さんである明鈴さんも日光に向かった。


 そしてまた、上田博行の父親がいる富士山方面にも不安が残るため、私の彼氏の江原耕司君のお母さんである菜摘さんと妹さんの靖子ちゃんが向かった。


 江原ッチの邸の道場にはあるじである江原えはら雅功まさとしさん、そして私と綾小路さやか、江原ッチ、それから、気功少女の柳原まりさんが残った。


 すると、まるでそれを見透かすかのように上田母子が瞬間移動して来た。


 どういう事? 何の能力なの?


 


 人数の減った道場に突如として現れた上田母子は、勝ち誇った顔をしていた。


 桂子は柄香炉えこうろと呼ばれる仏具を持っている。大きな煙管きせるのような形のものだ。


 そして、博行は錫杖しゃくじょうと呼ばれる仏具を持っている。修行僧が持っている杖だ。


 もしかして、それが闇の仏具なの?


「なるほど、その仏具の力で、ここまで飛んで来たという事ですか」


 雅功さんが微笑んで言った。すると桂子はその笑みにイラッとしたのか、


「何を笑っているんだ? 強がってるんじゃないよ、江原雅功!」


 険しい表情で怒鳴った。それでも雅功さんは微笑んでいる。


「そのまた裏?」


 さやかが呟いた。私はハッとして江原ッチと顔を見合わせた。そう言えば、ここにいない人達がいる!


「我に従え!」


 博行が錫杖を掲げて揺らした。チャリンと音がして、頭を思い切り大きく揺らされるような衝撃を受けた。


 もしかして、サヨカ会宗主だった鴻池こうのいけ大仙だいせんの息子である仙一が持っていたりんと同じ力?


 私だけではなく、雅功さんも、江原ッチも、さやかも、まりさんも頭を抱えている。


「さあ、お前達は今日から我がしもべとなるのだ!」


 誰がバ○ル二世だ! そう突っ込みたかったが、そんな余裕はない。


 何も考えられなくなる。頭の中には錫杖の音しか残っていない。


「どこまでも間抜けな連中だ。江戸曼荼羅など、破壊する必要などないのだ。この錫杖があれば、全ての人間が我らに平伏ひれふすのだからな!」


 博行は目を血走らせ、大声で笑った。悔しいが、どうする事もできない。


「さあ!」


 ドヤ顔の博行がもう一度錫杖を振るった。また嫌な音が頭の中を駆け巡る。


 私達は道場の板の間の上をのたうち回った。それにしても、あの人はどうしたのよ!?


「おらあ!」


 威勢のいい掛け声と共に、博行の背中を蹴飛ばし、錫杖を奪い取ったのは、江原ッチの親友の美輪幸治君だった。


「ぐあ!」

 

 博行は思ってもいない攻撃を受けたため、板の間に顔から激突した。


「博行!」


 桂子が蒼ざめた顔で博行に駆け寄った。


「ナイス、美輪!」


 江原ッチが頭を擦りながら、親友を讃えた。二人はハイタッチして喜びを分かち合っている。


「ならば、再び日光を破壊するまで!」


 桂子は鼻血塗れの顔の博行を抱き起こして叫んだ。博行の眼鏡は右のレンズが外れていた。


 どうやら、彼女が持っている柄香炉が瞬間移動の仏具のようだ。


 桂子はニヤリとしてそれを横に振った。


 しばらく静寂があった。何も起こらない。


 私は思わずさやかと顔を見合わせた。


 桂子の顔が引きつったのがわかる。


「無駄ですよ、上田桂子さん。ここはあなた達をおびき寄せるための最終的な罠なのですから」


 雅功さんの言葉に桂子が目を見開いた。そういう事だったのか。さすが、未来の義理のお父様!


「何だと!?」


 私はその時、飛び出して行った皆さんが全員庭にいるのを感じた。


 麗華さん、蘭子お姉さん、瑠希弥さん、明蘭さん、明鈴さんが五芒星の結界を作っていた。


 そして、それを更に取り囲むように、親友の近藤明菜、靖子ちゃん、まりさんのボーイフレンドになった坂野義男君、肉屋の力丸卓司君がいた。


『まどかお姉ちゃん、七福神の結界を完成させて!』


 我が姪にして、恐るべき能力を持つ小町がテレパシーで言った。


 私は江原ッチと美輪君に目配せして、七福神の力を解放した。


 それに更にさやかとまりさんが気を乗せた。


「ぐうう!」


 桂子は、二重の結界に抵抗するかのように気合いを入れているが、まさに焼石に水状態だ。


「無駄ですよ。諦めなさい」


 雅功さんが真顔で告げる。だが、桂子はやめようとしない。


「させない!」


 私達も力を更に解放し、結界を破ろうとする桂子を押さえ込もうとした。


「我らに敗北はない!」


 桂子は目から血を流していた。力が限界を超えたのだろうか?


『まどかお姉ちゃん、まずいわ』


 小町の声が聞こえた。何がまずいの?


「しまった!」


 雅功さんが慌てた表情をしている。これはマジでヤバいって事?


臨兵闘者皆陣列前行りんぴょうとうしゃかいじんれつぜんぎょう!」


 どこからか、早九字が聞こえて来た。陰陽師? これはまさか……?


「ここへ飛んで来たのは、私達だけじゃないんだよ」


 桂子は苦しそうに息をしながら、尚強がってみせた。


『明菜さんと坂野君が捕まったわ』


 小町が教えてくれた。何ですって!?


「結界は崩れた。五芒星ももうたないよ」


 桂子はまた勝ち誇った顔になった。


「抵抗するんじゃないよ! 外にいるガキ二人の首が胴体から切り離されちまうよ」


 桂子はニヤリとして雅功さんを見た。


「……」


 雅功さんは降参の印として、両手を挙げた。私達もそれに倣うしかなかった。


 もうこれまでなのだろうか?


 


 今度こそピンチなまどかだった。

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