表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
208/235

進学塾の遅れて来た怪談なのよ!(前編)

 私は箕輪まどか。高校生の霊能者だ。


 二学期が始まり、たくさんの人間凶器(太刀打ちできない程の美人)の登場に戸惑った。


 そんな中、久しぶりにG県警霊感課に捜査の依頼が入った。


 依頼主は超有名進学塾。


 だが、「今でしょ」という講師の人がいるところではない。


 G県では有名な進学塾だ。え? それをマイナーと言うんだ、ですって?


 う、うるさいわね! G県は確かに影が薄くて存在感がなくて、県知事がおバカ発言した知名度最悪な県だけど、余計なお世話よ!


「取り敢えず、塾に行って事情を訊いてくれ」


 土曜日なのに遊びにいけない私達は霊感課にいた。


 フロアで凛々しい顔で指示を出すのは我がエロ兄貴の慶一郎だ。


 その理由は、経理の力丸あずささん(私の同級生の力丸卓司君のお姉さんね)がいるだけではなく、あの暴力的なスタイルの小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんと歩く清楚の呼び声が高い神田原かんだはら明蘭めいらんさんもいるからだ。


 どこかの少佐ではないが、通常の三倍の凛々しさを放っている気がする。


「はい!」


 私達は敬礼して応じた。


「では行きましょうか、瑠希弥さん」


 私の彼の江原耕司君がいけしゃあしゃあとそう言って瑠希弥さんをエスコートしようとした。


「急ぎましょう、明蘭さん」


 江原ッチの親友の美輪幸治君が明蘭さんをエスコートしようとした。


 私の親友で美輪君の彼女の近藤明菜と目配せし合い、二人の背後に回り込もうとした。すると、


「私達はここに残ってあずささんと一緒に情報収集をします」


 笑顔全開で瑠希弥さんが言ったので、


「よし!」


 私と明菜はガッツポーズとハイタッチをした。


「ううう……」


 江原ッチと美輪君は項垂れていた。後で明菜とダブルお説教ね。


「頼んだぞ、まどか」


 心なしか、嬉しそうな兄貴がそう言うと、


「箕輪課長は大型パトカーの運転を頼むよ」


 突然現れたG県警本部長が告げた。あまりのショックに兄貴は凍りついてしまった。


 正義は勝つ、と思いたいが、本部長は何しに来たのよ?


 


 あれこれトラブルはあったが、私達は大型パトカーで一路T駅を目指した。


 G県最大のターミナル駅であるT駅の東口にその進学塾はある。


 通称「Gゼミ」。県内ばかりでなく、埼玉県や栃木県からも浪人生が来る程の有名な予備校だ。


「できればお世話になりたくないところね」


 霊感親友のサーヤが言った。


「だから、その呼び方はやめてよ!」


 綾小路さやかは「サーヤ」と呼ばれるのが嬉しいくせに嫌がるツンデレだ。


「違うわよ!」


 更に私の心の声を聞いて切れるサーヤである。


「まどかりんと一緒なら、俺は浪人してもいいな」


 江原ッチがさっきのお説教が効いたのか、早速媚びて来た。


「俺は大学には行けないから、関係ないな」


 美輪君がクールに決めると、


「そんな寂しい事言わないでよ、美輪君」


 明菜が目を潤ませて言った。


「私達はどうしようか?」


 すっかり公認カップルになった柳原まりさんと坂野義男君。まりさんにそう尋ねられ、坂野君は困った顔をしている。


「俺、予備校確定だなあ」


 リッキーはヘラヘラしながら言った。そもそも彼は大学に行くつもりなのだろうか?


「大丈夫、私がついてるから」


 江原ッチの妹さんでリッキーの彼女という奇特な存在の靖子ちゃんが笑顔で言う。


「この中、カップルだらけでつまんない」


 さやかが口を尖らせて呟いた。そっか、クラスメートの大久保健君も呼べばよかったかな?


「え? まどか、彼の連絡先知ってるの?」


 さやかが珍しく墓穴を掘るような事を言った。思わずニヤリとして、


「残念ながら、知らないわ、サーヤ」


「ううう……」


 自分の失態に気づいたのか、さやかは項垂れてしまった。




 やがて、大型パトカーはGゼミに到着した。


「G県警霊感課の箕輪です」


 兄貴は出迎えてくれた校長先生に身分証を掲示した。


「お待ちしておりました。こちらです」


 校長先生は私達を予備校の裏手にある別館に案内してくれた。


 通常はほとんど使用されていない校舎らしいのだが、今年はどうした事か、例年より浪人生が多かったらしく、スペースが足りなくなったので、急遽使用する事になったらしい。


「昔、この予備校で勉強したのに合格できなくて自殺した人の霊かな?」


 美輪君が大真面目な顔で江原ッチに尋ねた。江原ッチは苦笑いして、


「違うと思うよ。自殺者の霊は感じられないから」


 そう言いながら、私と靖子ちゃんとさやかに目配せして来た。


 明らかに敵意に満ちた霊の存在を感じたからだ。


 その敵意は予備校や先生方、浪人生達のいずれにも向けられていない。


 校長先生個人に向けられていた。校長先生はそれを全く感じていない。


 というか、ものともしていない、と言った方が正解だろうか?


「この校舎に生徒が入ると、蛍光灯が破裂したり、誰もいないトイレで水が流されたりと妙な現象が起こるのです」


 校長先生が説明すると、その次の瞬間、通りかかった教室の窓ガラスが割れた。


「ひっ!」


 リッキーと明菜はビクッとして靖子ちゃん、美輪君の陰にそれぞれ隠れた。


 明菜はともかく、リッキーは恥ずかしくないのだろうか?


「校長先生に妙な気が集中しているようですが?」


 まりさんが言うと、校長先生はギョッとしたようだ。心当たりはあるのだろう。


「強い思いが存在していますよ。ここで何があったんですか?」


 続いて坂野君が尋ねた。彼も想念を作り出す力に長けているから、何かを感じているらしい。


「オンマリシエイソワカ」


 私は江原ッチとさやか、そして靖子ちゃんと共に摩利支天まりしてんの真言を唱えた。


 一瞬ざわめきが起こったが、浄化の力によってスウッと消えてしまった。


「校長先生、本当の事を話してください。でないと、取り返しのつかない事になりますよ」


 さやかが通常の三倍の怖さを宿らせた顔で校長先生に詰め寄った。


『まどかうるさい!』


 さやかに心の声で怒られた。


 私の心の声にはしっかり反応する律義者だ。


 


 校長先生の過去に何かがあると推理したまどかだった。


『それに気づいたのは私でしょ!』


 最後までさやかに心の中を覗かれてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ