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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
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上田一族は恐ろしいのよ!

 私は箕輪まどか。高校生の美少女霊能者だ。


 先日、私達が通うM市立第一高校の生徒会長である上田博行が遂にその正体を現した。


 彼の江原耕司君の妹さんである靖子ちゃんと肉屋の力丸卓司君の連係プレーで上田を追い詰め、親友の近藤明菜の彼であり、江原ッチの親友でもある美輪幸治君と江原ッチのフェイント攻撃で上田を這いつくばらせた。


 だが、あと一歩のところで、上田の母親を名乗る上田桂子という女性に邪魔をされた。


 上田桂子は博行と一緒に姿を消した。


 そして、上田博行はそれ以降学校に姿を見せなくなり、先生方が大騒ぎをしている。


 表の顔は生徒会長で、しかも人望もあり、東大合格の最有力候補とも言われていたのだ。


 先生方の動揺が大きいのは無理もない。


 最後に上田を見かけたという事で、私達は校長室に呼ばれた。


「君達が上田君を虐めていたという噂があってね」


 校長先生はどこを見ているのかわからないような目で言った。


『まどかりん、校長も教頭も操られているよ』


 江原ッチが心に語りかけて来た。


『ええ。それ程強くはないから、祓いましょう』


 私と江原ッチは印を結び、


「オンマリシエイソワカ」


 浄化の真言である摩利支天真言まりしてんしんごんを唱えた。


「ぶへ!」


 校長先生と教頭先生はビクンと身を捩じらせて気を失い、ソファから崩れ落ちた。


 この二人だけではない。主だった先生方も操られているようだ。


 全員を解呪するのは難しい事ではないが、それでは何の解決にもならない。


 あの上田の母親である桂子の力は、計り知れない。


 彼女を何とかしない限り、このいたちごっこのような状態は終わらない。


「親父に相談しようと思ったんだけど、英賢様と修行中でさ。連絡が取れないんだ」


 江原ッチは校長室を出ながら言った。英賢様とはスーパーお爺ちゃんの名倉英賢様の事だ。


「菜摘さんは?」


 江原ッチのお母さんである菜摘さんも、相当なレベルの人だ。


「お袋も東北地方の気の揺らぎを修正しに行っていて、いないんだ」


 江原ッチは溜息を吐いた。私も同じく。


 上田だけならまだしも、あの母親が相手では、すでに私達の手に負えないのはわかっている。


 悔しいけど、格が違い過ぎるのだ。


「そうだ、瑠希弥さんに……」


 江原ッチはそう言いかけ、私を見てビクッとした。何よ? 別に脅かしてないわよ。


 小松崎こまつざき瑠希弥るきやさん。


 尊敬する西園寺蘭子お姉さんのお弟子さんで、私達のお師匠様でもある。


「瑠希弥さんも、どちらかと言うと、靖子ちゃんと同じタイプだから、お願いするなら、蘭子お姉さんの方がいいかも」


 嫌味でも何でもなく、私はそう思って言ったのだが、


「そ、そうだね。蘭子さんの方がいいかもね」


 何故か江原ッチは顔を引きつらせて言った。


 蘭子お姉さんには絶対に言えないんだけど、以前江原ッチと美輪君が、


「蘭子さんは美人なんだけど、胸がなあ……」


 そう言っていたのを聞いた事がある。裏蘭子さんに知られれば、大変な事になると思ったまどかである。


 伝え聞いた話だと、蘭子お姉さんの「裏蘭子さん」は旅に出たので今はいないらしい。


 心強い味方ではあるけど、ちょっと怖いからその方がいい。


「授業が終わったら、すぐにお姉さんに連絡を取ろうか」


 顔を引きつらせたままの江原ッチを放置して、私は教室に戻った。


 


 放課後になり、私達は校門前の公衆電話からすぐに蘭子お姉さんに連絡を取った。


「久しぶりね、まどかちゃん。もう高校生だから、まどかさん、かな?」


 相変わらず穏やかな声で蘭子お姉さんが言う。


「いえ、まだまだお子ちゃまですから、ちゃん付けでいいです」


 私は謙遜して言った。え? 普通自分で謙遜とか言わないって? いいでしょ、別に!


 事情を説明しようと思ったら、


「わかっているわ。サヨカ会の残党にそんな力の強い人物がいるなんて、驚きね。すぐにそちらに行くから、待っていて」


「はい」


 心強い返事をもらい、私は江原ッチと微笑み合った。


「何よ、二人でニヤニヤして気持ち悪いな」


 そこへ明菜と美輪君とリッキーがやって来た。


「校内でキスした人に言われたくはないわよね、江原ッチ?」


 私はニッとして言い返す。


「そうだね」


 江原ッチは顔を赤らめて俯く美輪君を見た。


「う、うるさいわね!」


 明菜はプイと顔を背けて、美輪君を引き摺るようにして歩いていってしまう。


「別行動はしないでよ、明菜。危ないから」


 私は慌てて二人を追いかけた。


「ああ、待ってくれよお、コロッケあげるからさあ」


 リッキーがドタドタとついて来る。


 明菜の機嫌を取りながら、バスに乗り込んだ。


「あれ?」


 ふと気がついた。誰も他に乗客がいない。


「ようこそ、我がバスへ」


 どこからか声がした。これは博行の声だ。


「運転手さん、操られてる」


 江原ッチが小声で教えてくれた。


「な、何なのよ?」


 明菜は怯えて美輪君にしがみついた。


「このバスは第一高校発地獄行きです。途中どこにも停まりません」


 今度は母親の桂子の声がした。


「地獄? そんなとこ、行きたくないよお」


 リッキーが泣きそうになった。途端に彼の身に宿っている七福神の一神である布袋様の力が解放された。


 バスは加速していき、高速道路のゲートを突き破って更に進んだ。


 どこに行くつもりなの?


 不安なまどかだった。

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