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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
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主役の座が危ないのよ!

 私は箕輪まどか。高校生の美少女霊能者だ。


 まだ「美少女」なの? 「美人」でもいいでしょ? 


 え? 幼児体型には「美人」は早い、ですって!? フンだ!


 


 私と彼の江原耕司君は、M市立第一高校の生徒会長である上田博行さんと対峙していた。


 上田さんは、副会長の高橋知子さんを操り、私達に攻撃を仕掛けて来た。


 高橋さんは霊能力はないはずなのに、真言を唱えた。


 そして、江原ッチが反撃の真言を唱えたのに何故か消滅してしまったのだ。


 一体どういう事なのか、私と江原ッチは混乱した。


 江原ッチの親友の美輪幸治君が物理的攻撃(要するに拳骨)で高橋さんを倒そうとすると、高橋さんの幼馴染みで私のクラスメートの大久保健君が現れた。


 そして、私の親友の近藤明菜までが再び上田さんに操られてしまった。


 もうダメかと思った時だった。


「お兄ちゃん、情けないわ、全く! まどかお姉さんを守るのがお兄ちゃんの使命でしょう?」


 江原ッチの妹さんの靖子ちゃんが駆けつけてくれた。


「く……。手強いのが来たか」


 上田さんのその言葉は、私を人生で一番怯えさせた。




「何を惑わされているの、お兄ちゃん! こんな初歩的な幻惑に引っかかって!」


 靖子ちゃんは江原ッチに怒鳴ると、印を結んだ。


「オンマリシエイソワカ」


 それは私や江原ッチとはレベルが違う摩利支天真言だった。


 洪水のような勢いで真言の波動が広がり、明菜と高橋さんを縛っていた気分が悪くなるような陰険で邪悪な気が吹き飛ばされてしまった。


「す、すげえ……」


 江原ッチは目を見開いて驚いていた。私も同じだ。靖子ちゃん、誰よりも一生懸命に母親である菜摘さんの指導を受け、自分の力を高め、私達に追いつこうと必死だった。


 すでに追い越されてしまったと思うまどかである。


 次の瞬間、明菜と高橋さんが重なるようにして床に倒れ臥した。


「知ちゃん!」


「アッキーナ!」


 大久保君と美輪君が驚いて駆け寄った。


「さすが、当代随一と言われた退魔師の江原えはら雅功まさとしの娘だね、江原靖子さん。お兄さんの耕司君より優秀のようだ」


 上田さんは右の口角を吊り上げた。寒気がするような笑い方だ。


「く……」


 間接的にけなされた形の江原ッチは歯軋りしている。


 でも、確かに上田さんの言う通りなので、反論できないでいる。


「インダラヤソワカ」


 靖子ちゃんがいきなり帝釈天真言を唱えた。雷撃が上田さんを襲ったが、まるで厚い壁に阻まれたかのように消失してしまった。


「無駄だよ、靖子さん。その程度の真言では、僕には届かない」


 上田さん、いや、上田は憎らしい笑みを浮かべてそう言った。


「くそ!」


 江原ッチが拳を握りしめた。上田に物理攻撃をするつもりだ。


 美輪君と目配せし合っている。大丈夫だろうか?


「うりゃあ!」


 美輪君と江原ッチが同時に動き、上田に殴りかかった。


 中学時代、やり過ぎコウジと呼ばれ、高校生すら恐れさせた二人が、パッと見非力な上田に腕力にものを言わせて突進した。


 知らない人が見れば、弱い者イジメなのだが、果たしてそういう結果になるのか、私には疑問だった。


「はああ!」


 上田が気合を入れると、竜巻のような気の流れが起こり、廊下の窓ガラスがガタガタと軋んだ。


「うわ!」


 その気の流れに阻まれ、江原ッチと美輪君は立ち止まってしまった。


「言ったはずだ。君らでは相手にならないんだよ。七福神の力程度では、この僕にはね」


 上田は勝ち誇った顔で私達を見ていた。


逆上のぼせ上がるんじゃないわよ! 貴方の絡繰からくりなんて、全部見破ってるわよ」


 靖子ちゃんが叫んだ。私達はギョッとして彼女を見た。


「ほお。大きく出たね。全部見破っている?」


 上田は全然怯んでいない。小馬鹿にしたように口元を歪ませ、靖子ちゃんを哀れむような目で見た。


「貴方は、真言を口で唱えなくても、心で念じるだけで使える。そこだけは凄いと褒めてあげるわ」


 靖子ちゃんの言葉に上田の顔が一瞬引きつるのがわかった。


 その通りらしい。


「だから、そのお姉さんを操って、適当な真言を唱えさせ、貴方はそれとは別の真言を唱えていた。それだけの事よ」


 靖子ちゃんは大久保君が抱き起こしているまだ気絶したままの高橋さんを見た。


 上田は歯軋りしていたが、


「さすがだ、靖子さん。でも、見破ったところで、力の差は歴然。君は感応力は優れているが、攻撃力はお兄さんにも劣る」


 また勝ち誇った顔になった。でも、靖子ちゃんはまだ怖じ気づいたりせずに、


「だからどうしたの、眼鏡のお兄さん?」


 挑発めいた言葉で言い返した。度胸満点ね、靖子ちゃん。ちょっと怖いくらいよ。


「物理攻撃には対処できないという事さ!」


 上田は再び強力な気の流れを発生させ、遂に廊下の窓ガラスを軒並み割ってしまい、砕けたガラス片が庭に飛び散った。


「さっきより強いぞ……」


 江原ッチが私を庇うように抱きしめた。美輪君も気を失った明菜を抱き起こし、上田から離れた。


「靖子ちゃんをいじめる奴は、俺が許さないぞ」


 さっきまで怯えていた力丸卓司君が憤然とした顔で前に出た。


 彼はその身に宿した布袋尊の力を全開にしていた。


「ぬ……?」


 上田の顔にまた焦りの色が見えた。リッキーの布袋様の力が上田の気の流れを圧倒しているのだ。


 リッキーの靖子ちゃんを守りたいという強い思いが布袋様の力に呼応して、上田の気の流れを押し戻していた。


「リッキー、ありがとう。大好き」


 靖子ちゃんがリッキーに抱きつく。


「うへへ、大した事ないよ」


 リッキーはデレデレだ。


「貴方の物理攻撃は封じたわ。いい加減、観念しなさい、眼鏡のお兄さん」


 靖子ちゃんはフッと笑って言った。


 


 主役の座が危ないなどと不届きな事を考えてしまうほど動揺しているまどかだった。

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