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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
高校一年生編なのよ!
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みんなで高校に行くのよ!

 私は箕輪まどか。遂に念願のJKになった。


 苦節四年。思えば長い道のりだった。


 って、何言わせるのよ、全く! 私は別にそれほど高校生になるのを心待ちにしていた訳じゃないんだからね!


 勘違いしないでよね!



「おはよう、みんな」


「おはよう、まどかりん」


 家を出ると、彼氏の江原耕司君が親友の美輪幸治君と共に待っていてくれた。当然の事ながら、親友の近藤明菜はツンとした表情で美輪君の隣に立っている。


「おはよう、まどか」


「おはよう、まどかちゃん」


 高校が同じ私達は、最寄りのバス停に一番近い私の家まで来てくれる。


「おおい、待ってくれよお。俺を置いていかないでよお」


 肉屋の力丸卓司君もやって来た。彼も同じ高校だ。


 江原ッチの妹さんの靖子ちゃんと付き合っているのだが、一時離れ離れなので、毎日靖子ちゃんがリッキーを迎えに来て、途中で別れているのだ。


 こっちが恥ずかしくなるくらいラブラブで、ちょっと羨ましい。


 私達が通うのは、M市立第一高校。G県の県庁所在地であるM市で二番の高校だ。


 一番の高校には、相当勉強しないと入れない。だから私はもちろん、江原ッチも行けなかったのだ。


 え? お前のレベルにみんなが合わせてくれたんだろうって? う、うるさいわね!


 M市で一番の高校は、県立M高校。伝統ある学校で、今年で創立百十年だそうだ。


 作者と同級生くらいね。(違います 作者)


「遅くなってごめんなさい。さあ、行きましょう」


 そこへ更に来たのは、最近知り合ったばかりの小池玲奈ちゃん。中学校は違うんだけど、お父さんの仕事の関係で近所に引っ越して来たのだ。


「よし、行こうか」


 江原ッチが言い、私達はバス停に向かって歩き出した。


「バスの時間までまだあるよね?」


 玲奈ちゃんが携帯で時刻を確認して言う。


「そうだね。でも、もう並んでいるかも知れないから、急ごうか」


 私も自分の携帯で確認しながら言い、走り出した。


「あ、ちょっと、まどか、急に駆け出さないでよ」


 運動が苦手な明菜が口を尖らせて言う。


「まあまあ、アッキーナ。俺がおんぶしてあげるよ」


 優しい美輪君がそう言うと、


「遠慮しとくわ、美輪君。人目があり過ぎるから」


 本当はおんぶして欲しいくせに、明菜は無理している。


「いいなあ、明菜ちゃん。私もああいう優しい彼氏が欲しいな」


 玲奈ちゃんがチラッと江原ッチを見たので、私はギクッとした。玲奈ちゃんは妙に色っぽい子なので、江原ッチの好みなのだ。


 じゃあ、どうしてお前と付き合っているんだ、ですって? 余計なお世話よ! ほっといてよ。


「玲奈ちゃん、彼いないの?」


 江原ッチが意外そうに尋ねる。すると玲奈ちゃんは苦笑いして、


「暮れに別れたの。同じ高校には行けないって言われてさ」


「あ、ごめん」


 江原ッチはバツが悪そうに謝罪した。


「いいよ、気にしてないから。高校でもっと素敵な彼を作るつもりだから」


 玲奈ちゃんは精一杯の強がりを言った。私はキュンとしてしまった。


「玲奈ちゃんなら、すぐにできるよ。可愛いから」


 江原ッチが言う。嫉妬しそうだが、そういうところが彼のいいところだから、聞き流した。


「ありがとう、江原君」


 玲奈ちゃんは涙ぐんでいた。本当に可愛い子なので、焦りそうになる。でも、そんな事は心配する必要はない。


 バス停に着いた。予想通り、すでに列ができていたが、乗れないほどではない。


 私達は一番後ろの席に陣取り、高校前まで楽しくお喋りした。


 


 バスが停車し、ステップを降りて外に出る。


 目の前にあるのが、私達が通っている第一高校。男子も女子もブレザーで、女子はチェック地の可愛いプリーツスカートだ。


「あれ?」


 玲奈ちゃんが呟いた。


「玲奈ちゃん……」


 私と江原ッチはいたたまれない顔で彼女を見た。


 玲奈ちゃんだけ、セーラー服。しかもそれは、どこの高校のものでもなく、中学校の制服だ。


「どうして……?」


 玲奈ちゃんの目から大粒の涙がポロポロと零れ落ちる。


「時間が来たんだよ、玲奈ちゃん。もう逝かないといけないんだ」


 江原ッチが悲しそうな目で告げた。そう、玲奈ちゃんは霊なのだ。決して洒落じゃないのよ。


「そうだったね。私、受験に失敗して、その帰りに川に飛び込んで死んだんだよね」


 玲奈ちゃんがそう言った途端、彼女のセーラー服が水浸しになった。


「念を残さず、逝くべきところに逝ってね」


 私は涙を堪えて玲奈ちゃんに言った。玲奈ちゃんも目を擦りながら、


「うん。ありがとう、まどかちゃん、江原君」


 玲奈ちゃんが光に包まれる。


「オンアロリキヤソワカ」


 江原ッチと観音菩薩の真言を唱えた。玲奈ちゃんをより強い光が包んだ。


「ありがとう」


 そう言いながら、彼女は天に昇っていった。


「逝っちゃったね」


 私は堪え切れなくなった涙を零して、江原ッチを見上げた。江原ッチも涙こそ流していないけど、目を赤くしている。


「ああ。今度はいい人生を送れるといいね」


「うん」


 私と江原ッチは入学式の時に玲奈ちゃんに気づき、今日まで普通に接してきた。


 明菜と美輪君とリッキーには事情を説明し、私達が見えない相手に話しかけても気にしないで欲しいと頼んだのだ。


 未練が強過ぎると、悪霊の餌食にされてしまう。だから、彼女のこの世への思いを解きほぐしてあげようと思ったのだ。


「何してるのよ、二人共? 遅刻するわよ!」


 明菜も雰囲気を感じて泣いていたのにそれを誤魔化すためなのか、私達に叫んだ。


「あ、うん、明菜。すぐ行くよ」


 私と江原ッチはもう一度観菩薩真言を唱えて、明菜達と共に校門をくぐった。


 


 今日は久しぶりにおごそかな感じのまどかだった。

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