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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
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明蘭さんを助けるのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者だ。


 あれ? 今回はボケはないの? それはそれで寂しいんだけど?


 まあ、いいわ。


 私達は思っても見なかった展開に圧倒されてしまったが、私の彼の江原耕司君の親友の美輪幸治君の活躍で、形勢逆転となりそうだ。


「おのれ!」


 すっかり人が変わってしまった神田原かんだはら明蘭めいらんさん。その背後には、明蘭さんの伯父である明雷めいらいという男がいた。


 明蘭さんの母親である明鈴めいりんとは対立関係にあったようだ。


『出直すのだ、明蘭。また次の機会に……』


 明雷は霊体なので、激しい戦いはできないようだ。早速撤収をしようとしていた。


「そういう訳には参りませんわ、伯父上。貴方にはここで滅んでもらいます」


 明蘭さんはゾッとするような笑みを浮かべて言った。


『何を言っているのだ、明蘭!?』


 明雷は明蘭さんの思ってもいない言葉に動揺していた。


「てめえが子供の頃の私に何をしたのか知らないとでも思っているのか、外道が! その恨み、ここで全て晴らしてやるよ!」


 明蘭さんの妖気の濃度が上がり、その全部が明雷に向けられた。


『何だと!?』


 明雷は慌てて逃げようとしたが、


「逃がしゃしないよ!」


 明蘭さんは目を見開いて叫び、


「ナウマクサラバタタギャーテイビヤクサラバボッケイビヤクサラバタタラタセンダマカロシャダケンギャキギャキサラバビギナンウンタラタカンマン !」


 不動金縛りの術を唱えた。


『おのれええ!』


 明雷は雄叫びを上げてそのまま固まってしまった。その時、明蘭さんが明雷に何をされたのか、見えてしまった。


 具体的に表現すると発禁処分にされてしまうので明かせないが、とにかく人でなしとしか言いようのない所業だった。


 トラウマになりそうだわ。


 ところで、トラウマって何?


「明蘭さん……」


 私だけでなく、江原ッチと妹さんの靖子ちゃんにも明蘭さんの過去が見えたらしい。


 江原ッチは怒りで震えていたが、靖子ちゃんは泣いていた。


「何だよ? 同情か? そんなものはいらないね」


 明蘭さんは私達が過去を覗いたのに気づき、キッとして睨みつけてきた。


「違うわ、明蘭さん。同情なんかじゃない。貴女のその後の人生に感動しているんです」


 靖子ちゃんが涙を拭いながら言った。


「感動、だと?」


 明蘭さんが眉をひそめた。明鈴は不思議そうな顔で靖子ちゃんを見ている。


「靖子、明蘭さんを呼び戻して。貴女ならできる」


 江原ッチ達のお母さんである菜摘さんが微笑んで言う。


 確かに靖子ちゃんの感応力を使えば、明蘭さんを呼び戻せるかも知れない。


「靖子ちゃん、俺も力を貸すよ」


 靖子ちゃんの彼である肉屋の御曹司の力丸卓司君が靖子ちゃんの左手を握った。


 すると二人の間に慈愛の象徴である布袋ほてい様の力がみなぎっていった。


「私は今でも信じています。七福神の力を集めるために一緒に行動した貴女の思いを。あれは決して偽りの心ではなく、貴女の本心からの思いであった事を」


 靖子ちゃんは感応力を全開にし、布袋様の慈愛の力と共鳴している。すごい。


 更にそれに呼応するかのように靖子ちゃんに宿った弁財天べんざいてんの力が発動した。


「俺も」


 江原ッチが靖子ちゃんの右手を握る。彼に宿った寿老人じゅろうじんの力が発動する。


「私も」


 親友の近藤明菜が進み出て、美輪君と手を繋ぐ。すると美輪君の毘沙門天びしゃもんてんと明菜の福禄寿ふくろくじゅの力が発動した。


「まどかりん」


 江原ッチが私を見た。私は頷き、彼の左手と自分の右手を繋いだ。


 私の中の大黒天の力が動き出す。


「明蘭さん、戻ってきてください。貴女は本当は優しい人なのですから」


 靖子ちゃんが涙を流しながら語りかけた。


「うるさい! 私の事なんか、誰にもわかりはしない! 偽善者共め! 奇麗事を言うな!」


 それでも明蘭さんは暴走を止めようとしない。


「まどかりん、ごめん」


 江原ッチがそう言って手を放した。


「アッキーナ、許してくれ」


 美輪君も手を放した。


「明蘭さんは本当に優しい人ですよ。さっき、僕は身を以て感じました」


 坂野さかの義男よしお君が言った。彼は明蘭さんに絞め殺されそうになったのだ。その彼がそんな事を言い出した。


「貴女はあの時、僕を一瞬で殺せたはずなのにそうしなかった。それは貴女に人の心、優しい心があるからじゃないんですか?」


 坂野君の言葉に明蘭さんの険しい顔が揺らいだ。


「靖子ちゃん、いいよね?」


 リッキーが靖子ちゃんに尋ねた。靖子ちゃんは苦笑いして、


「いいよ、リッキー。明蘭さんを救うためだもん」


 そう応じた。私にも何となくこれから何が行われるのかわかった。


「何だ、お前達? 男共が! 私に触れるんじゃないよ!」


 明蘭さんは明雷にされた仕打ちを思い出すのか、鬼の形相で近づく江原ッチ達を睨みつけた。


 しかし、江原ッチ達は怯む事なく明蘭さんに近づき、


「許してください、明蘭さん。男の業を。そして、戻ってきてください」


 江原ッチがそう言って明蘭さんを抱きしめた。嫉妬の炎が燃え上がりそうになるのを必死になって堪えるまどかである。


「ううう!」


 明菜はもっと酷かった。泣いているのだ。美輪君が明蘭さんを抱きしめたので……。まあ、よく飛びかからなかったと思う。


「明蘭さん、戻ってきてください」


 リッキーと坂野君が更に抱きしめる。男子達の謝罪の思いが湧き上がり、明蘭さんを押し包んでいった。


「やめろおお!」


 明蘭さんは口では反抗していたが、身体はそうではなくなっていた。


「明蘭……」


 明鈴は涙ぐんだ目で娘の姿を見つめていた。


「うわああ!」


 明蘭さんの身体に宿った妖気と悪の気の断末魔だった。


 どす黒いものがフワリと舞い上がり、七福神の力で浄化され、消失した。


「ありがとう、皆さん……」


 力が抜けたように江原ッチと美輪君に支えられた明蘭さんが呟いた。


 戻って来てくれた。最後は明蘭さん自身の気持ち次第だったから、明蘭さんが悪の気に勝てたのだ。


「良かった!」


 私と明菜、そして靖子ちゃんも、男達を突き飛ばして明蘭さんに抱きついた。


 嫉妬混じりだったのは本当に内緒だ。


 江原ッチ達は涙目で私達を見ていたが、気づかないフリをした。


「良かったわね」


 菜摘さんが泣いている明鈴に近づき、その肩を優しく抱きしめた。


 ようやく復活の会との決着がついた。


 当然の事ながら、明雷の霊体はスーパーお爺ちゃんである名倉英賢さんのところに送られるわ。


 そういえば最近、全然蘭子お姉さん達から連絡ないけど、嫌われたんじゃないよね?


 ちょっと不安。可愛過ぎるというのもダメなのね。


 でも、これでようやく受験に専念できると思うまどかだった。


 最後に嫌な事を思い出させないでよね!

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