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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
180/235

最後に愛は勝つのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の美少女霊能者で、もうすぐ受験だ。


 嫌がらせもそこまで来ると滑稽よ。大概にしてよね。


 ところで滑稽って何?


 


 邪教集団である復活の会の宗主の神田原かんだはら明鈴めいりんを倒し、決着したと思われた戦いは、明鈴の娘である明蘭さんが悪に染まるというとんでもなく意外な展開になってしまった。


 しかも、明蘭さんの放つ妖気は、明鈴を遥かにしのぎ、尊敬する西園寺蘭子お姉さんの「裏蘭子」さんの闘気も超えていた。


 そして、下品な言葉遣いは、蘭子お姉さんの親友である八木麗華さんを寄せつけない。


「さあ、どうする、江原菜摘?」


 明蘭さんはあの穏やかな顔をどこかに置いて来たかのような形相で言い放った。


「……」


 私の彼氏の江原耕司君のお母さんの菜摘さんは、黙ったまま、明蘭さんを睨んでいる。


「明蘭……」


 明鈴は目を潤ませて明蘭さんを見ていた。私はその時、オバさんの真意を感じ取った。


「オバさん言うな、ガキ!」


 力を失ったはずの明鈴だったが、霊能力そのものをなくした訳ではないらしく、私の心の声は聞き取っていた。


 明鈴は口では自分が後継者になるために明蘭さんの力を封じたと言っていたが、違うのだ。


 明鈴は明蘭さんを神田原一族の忌まわしい血脈から解き放ちたかったのだ。


 だからこそ、明蘭さんの力を封じ、自分で後継者となり、全てを清算するために動き出したのだ。


 ところで、血脈っておいしいの?


「ガキ、それ以上私の心の中を覗くと後で酷いよ」


 明鈴は何故か顔を赤らめてそう言った。真意を見抜かれて恥ずかしいらしい。


 まだ恥じらいは忘れていなかったのね、オバさん。


「だから、オバさん言うな!」


 明鈴はもっと顔を赤くして怒鳴った。


「明鈴さん……」


 江原ッチの妹さんの靖子ちゃんも、その優れた感応力で明鈴の心を覗いたらしく、涙ぐんでいる。


 江原ッチも感じ取ったらしく、親友の美輪幸治君に耳打ちしていた。


「明鈴さんはいい人だったんだよ、本当は」


「そうみたいだな」


 そんな事を言い合いながら、二人は明鈴の豊満な胸の谷間を凝視しているのが判明した。


「コウジ君達、後でお話があります」


 私と親友の近藤明菜は打ち合わせなしで見事なハモりを披露し、


「ひいい!」


 江原ッチと美輪君の悲鳴のハモりを誘発した。


「私も随分と舐められたものだねえ。力が劣るあんたの思惑に乗せられていたんだからね」


 明蘭さんはその鋭くなった目で明鈴を睨んだ。いや、今は明鈴さんで、明蘭と呼ぶのが正しいだろうか?


「いえ、まどかさん、明蘭さんのままでいいのよ」


 菜摘さんが言った。どういう事だ?


「こういう事よ!」


 菜摘さんは靖子ちゃんとアイコンタクトを取り、


「オンマリシエイソワカ」


 二人で明後日あさっての方角に向かって摩利支天真言を唱えた。ますますどういう事?


『ぬああ!』


 何もいないと思われた空間からどす黒い妖気が現れ、真言で一瞬にして浄化された。


『おのれ、見抜いていたのか?』


 そこに現れたのは、黒尽くめの服を着た大柄の男の霊体だった。


「誰だ!?」


 江原ッチが私を、美輪君が明菜を庇いながら叫んだ。美輪君には霊体は見えていないが、江原ッチの反応を見て動いたらしい。


「靖子ちゃん!」


 靖子ちゃんと付き合っている肉屋の御曹司の力丸卓司君は逆に靖子ちゃんに守られていた。


「生きていたのか、お前は……」


 明鈴が憎らしそうな顔でその男を睨みつけた。生きていた? またしてもどういう事?


神田原かんだはら明雷めいらい。私の兄だよ」


 明鈴さんが忌ま忌ましそうに言い放った。そう言われると、どことなく顔立ちが似ている。


『明鈴、土壇場で私の計画を邪魔するなよ。いくら妹でも、只ではおかないよ』


 明雷と呼ばれた男はニヤリとして言った。その声に私は身震いしてしまった。あまりにも冷たくて感情のないものだったからだ。


『さあ、明蘭、そこにいるのは全員、お前の敵だ。倒しなさい』


 明雷が言った。すると明蘭はフッと笑って、


「承知致しました、伯父上」


 再び妖気を繰り出す。江原邸全体を押しつぶしそうなくらいの濃さと量だ。


「くう……」


 明蘭に捕えられたままの坂野さかの義男よしお君はその身に宿した恵比寿様の力で守られてはいるが、押さえつけられた喉は変色していた。


 早く坂野君を助けないとまずい。


「ここは俺の出番だな」


 美輪君が明菜を私に託して、明蘭さんに向かった。


「美輪君、どさくさに紛れて変な事したら許さないわよ!」


 さすが嫉妬マスターの呼び声が高い明菜だ。こんな時でもその心配か。美輪君は苦笑いして、


「大丈夫だよ、アッキーナ。俺の好きなのは君だけだよ」


 臭過ぎる台詞を返し、明蘭さんの前に立った。


「坂野を放してくれよ、明蘭さん。そいつは俺達の大事な友達なんだよ」


 美輪君は穏やかな表情で明蘭さんに語りかけた。


『明蘭、気をつけよ。その男は我らの力を受けつけぬぞ』


 明雷が言うと、明蘭さんは、


「承知しております、伯父上」


 美輪君を妖艶な目で見る。いけない、これは以前明鈴が使った魅了チャームという黒魔術だ。


 霊能力は受けつけない美輪君だが、あれは防げない。


「おいおい、俺を誰だと思っているんだよ、明蘭さん。アッキーナ一筋ひとすじの美輪幸治様だぜ」


 美輪君はそう言い返した。確かに明蘭さんの強烈なチャームを受けているはずなのに美輪君は全く動じていない。


「美輪君!」


 明菜は感動のあまり、号泣していた。本当に凄いよ、美輪君。私も感動している。


「ああ……」


 むしろ、江原ッチとリッキーの方が幻惑されかかっているほどだ。後で靖子ちゃんとお説教ね。


「何だと!?」


 明蘭さんもまさか美輪君がチャームにかからないとは思わなかったようだ。目を見開いて驚いていた。


「隙あり!」


 美輪君は明蘭さんの一瞬の動揺を見逃さず、その手から坂野君を解放し、明蘭さんから離れた。


「どうだ、見たか。最後に愛は勝つんだよ」


 ドヤ顔でいう美輪君だったが、決め台詞が古過ぎると思ってしまったまどかだった。

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