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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
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もっと恐ろしい事が起こったのよ!

 私は箕輪まどか。受験を控えた中三の霊能者だ。


 嫌な事思い出させないでよ。


 私達はまだ初詣をすませたばかりの元日にいるんだからね!


 


 復活の会という邪教集団の宗主である神田原かんだはら明鈴めいりんの黒魔術を阻止した私達G県警霊感課のメンバーは何とか勝利を収めた。


 え? 霊感課って、まだ存在していたのかですって? 当たり前でしょ! これからが本番なのよ。


「皆さん、よく頑張ってくれましたね。明鈴の浄化は名倉なぐら英賢えいけん様にお願いします」


 私の彼氏の江原耕司君のお母さんである菜摘さんが微笑んで言った。


 あれほど妖気を吐き出していたのが嘘のようにおばさんは眠っていた。


 悪口を言っても反応しないのだから、本当に力を失ったのね。


 只、けがれた身体を清めないと、また同じ事になってしまうそうなので、あのスーパーお爺ちゃんの英賢様のところに送るようだ。


「無事解決して良かったね、まどかりん」


 江原ッチが爽やかな笑顔で言った。キュンとしてしまい、思わず抱きつきたくなったが、皆がいるので我慢だ。


「アッキーナ!」


「美輪君!」


 ところが、私の親友の近藤明菜は恥も外聞もなく、彼氏の美輪幸治君と抱き合っていた。


 我慢して損したと思うまどかである。


 ところで、外聞て新聞の親戚?


 などと思っていたら、


「靖子ちゃん!」


「リッキー!」


 江原ッチの妹さんの靖子ちゃんと肉屋の力丸卓司君まで抱き合っていた。


「いいのですよ、まどかさん。耕司君と抱き合っても」


 明鈴の娘でありながら、私達に力を貸してくれた明蘭さんが微笑んで言った。


「はい」


 私は江原ッチと抱き合った。あれ? 江原ッチの目が私ではなく別の方を見ているような気がするのだが?


 気になってその視線の先を見ると、明蘭さんが坂野さかの義男よしお君と抱き合っていた。


 一人だけ相手がいない坂野君を気遣って、明蘭さんが抱きしめているようだ。


 坂野君は顔が破裂するのではないかというくらい赤くなっていた。


「羨ましい」


 江原ッチは私に聞こえないと思ったのか、小声でそう呟いた。


「江原耕司様、後でお話が御座候ござそうろう


 きわめつけにドキッとする言葉で囁いてあげた。


「ひいい!」


 美輪君も明菜に何か言われたようで、江原ッチと悲鳴のハーモニーを奏でた。こんな時まで気が合うなんて、本当の親友なのね。


「バカめ、お前達、取り返しのつかない事をしたのだぞ」


 急に目を開いて起き上がった明鈴が言った。菜摘さんがハッとしたが、明鈴に力が戻った訳ではなさそうだ。


 でも、何故か強烈な妖気を感じている。新たな敵が近づいているのだろうか?


「違います、まどかお姉さん! 明蘭さんが!」


 靖子ちゃんが絶叫した。私はその声に反応して、明蘭さんを見た。


「どういう事なんだよ?」


 江原ッチが悔しそうに歯噛みして明蘭さんを見ている。明蘭さんの身体から、明鈴より強力な妖気が噴き出していた。


 坂野君はその身に宿した恵比寿様の力が作用し、妖気から守られていたが、身体を明蘭さんに強く締めつけられているらしく、離れる事ができない。


「明蘭は私以上に凄まじい力を持っていた。父は私を差し置いて、明蘭を後継者にしようと考えていたのだ」


 明鈴はヨロヨロしながら立ち上がった。


「だが、それが気に食わなかった私は、明蘭の力を抑える封印を施し、後継指名を受けたのだ」


 菜摘さんは明蘭さんの変貌と明鈴の過去の話に目を見開いた。


「という事は……?」


 江原ッチが額から汗を垂らして再び明蘭さんを見る。


「私が力を失った事で、封印は解かれた。お前達は我が神田原家最強の邪法師を呼び覚ましてしまったのさ!」


 明鈴は皮肉に満ちた笑みを口元に浮かべて叫んだ。


「そんな……」


 菜摘さんの額にも汗が流れるのが見えた。私は恐る恐る明蘭さんを見た。


「そういう事だったのか、クソババア。あんたのせいで、私は力を失っていたのか!?」


 あの穏やかで優しかった明蘭さんの面影は微塵もない。そこには明鈴を遥かに超えた呪術師がいた。


 まるで尊敬する西園寺蘭子お姉さんの「裏蘭子」さんみたいだ。チビリそうなくらい怖い。


 もしかすると少しチビッてしまったかも知れないのは江原ッチには絶対に内緒。


「まあ、あんたに礼をするのは、このクソ忌忌しいガキ共とそっちのババアをふちのめしてからにするよ」


 いや、前言撤回。裏蘭子さんもここまで下品ではない。というか、こんな悪に染まった存在ではない。


「江原菜摘、あんたも相当な間抜けだね。この私の身の内に強大な妖気が封じられている事に気づかなかったんだからねえ!」


 明蘭さんは大きな口を開けてゲラゲラと笑った。そのあまりの変わりように江原ッチと美輪君とリッキーは燃え尽きてしまいそうなくらい衝撃を受けているようだ。


 私だってそうだ。明蘭さんは味方だと思っていたのに……。


「神田原一族に異端児がいたと思っていたのに、そんな裏事情があったなんて……」


 菜摘さんも悔しそうだ。ババア呼ばわりはいくら何でも酷いだろう。


「まどかさん、私が怒っているのはそこじゃないですから」


 菜摘さんに心の声を聞かれてしまった。この緊急時に非常に恥ずかしい……。


「明蘭さん、坂野君を放してください。その子は関係ないでしょう!?」


 靖子ちゃんがいつになく大声を出した。リッキーは驚いて彼女を見ている。美輪君も江原ッチでさえも、その声に仰天していた。


「関係なくなんかないさ。七福神の力を宿した奴は私にとっては敵だからね」


 明蘭さんはニヤリとしてそう言うと、坂野君の首を右手でグイッと掴んだ。


「ぐうう!」


 痛みで坂野君が呻いた。


「やめなさい、明蘭さん! 貴女の本性は悪ではないはずよ。だからこそ、雅功まさとしは貴女に協力を要請したのですから」


 菜摘さんが叫んだ。すると明蘭さんは、


「あんたの旦那も同じくヘボ退魔師だったって事さ。私の本性は悪。それも絶対的な悪なんだからね!」


 そう言い返すと、高笑いをした。その声は周辺にまで轟くほど大きく、そしておぞましいものだった。


 チャンスの後のピンチはどうすればいいのかわからないまどかだった。

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