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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
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正義は絶対に勝つのよ!

 私は箕輪まどか。中学三年の美少女霊能者だ。


 受験を控え、合格祈願を兼ねて行った初詣で、以前霊界に送った男の子の霊に再会したのが始まりだった。


 私達は今、復活の会と言う邪教集団の宗主である神田原かんだはら明鈴めいりんと戦っている。


 いや、今は私の彼の江原耕司君のお母さんである菜摘さんが主に戦っていると言った方が正解だろう。


 明鈴は不利と悟ったのか、自分の奥の手である黒魔術を使い、何か得体の知れないものを呼び出した。


「悪魔?」


 江原ッチが呟いたのを聞き、私は震えが止まらなくなった。


 悪魔を実際に見た事はない。明鈴が呼び出したのが悪魔なのかはわからない。


 でも、その黒いものから発せられる憎悪と怨嗟、そして憤怒はまさに悪魔としか表現しようがないくらいおぞましくて気分が悪くなる存在だった。


「お前達の負けだ。我が神の力を思い知るがいい!」


 まさに鬼のような形相になった明鈴が口を大きく開いて叫び、高笑いした。


 明鈴の身体から湧き出した妖気が辺りを覆い尽くしていく。


 結界が張られていたはずなのに、それはまるで何もないかのように江原ッチの家を取り込んでいくように広がった。


「靖子、しっかりしなさい! 貴女が取り込まれてどうするの!? 皆の力を導くのよ!」


 菜摘さんがすっかり萎縮してしまった江原ッチの妹さんの靖子ちゃんに怒鳴った。


 靖子ちゃんはお母さんの声にハッとなり、その感応力を再び大きく広げ始めた。


「そうはさせない」


 明鈴がその動きに気づき、妖気を靖子ちゃんに集中させた。


「靖子!」


 江原ッチが靖子ちゃんを庇うために前に出た。私も彼に続いて靖子ちゃんの盾になった。


 だが、それは虚しい抵抗だった。妖気は私と江原ッチを飛び越え、靖子ちゃんに向かったのだ。


「靖子ちゃん!」


 それを見て叫んだのは、靖子ちゃんと付き合っている肉屋の御曹司の力丸卓司君だった。


 その途端に彼に宿っている七福神の一人の布袋様の力が発動した。


 光に包まれた何かが降臨し、手に持っていた大きな袋の口を広げた。


 するとその袋がまるで掃除機のように妖気を吸い取り始めたのだ。


「何だと!?」


 驚いたのは私達だけではなく、明鈴もだった。


「それが七福神の力だというのか? ならばどこまで吸い込めるか、試してやる!」


 明鈴は更に妖気を増産し、空間が歪むほどになった。


「いけない!」


 それを見た明鈴の娘でありながら私達の心強い味方である明蘭さんが一番前に出た。


「母上、それ以上魔力を使うのであれば、私も容赦はしません!」


 おっとりした感じの明蘭さんの目が鋭くなり、間近で見た私と江原ッチはギョッとしてしまった。


「面白い! お前如きがこの私にどこまであらがえるか、やってみよ、明蘭!」


 明鈴は明蘭さん以上の険しい顔で言い返した。もう、チビッてしまいそうだ。コホン……。


「後悔しますよ、母上」


 明蘭さんは不敵な笑みを浮かべて更に明鈴を挑発した。


 難しい単語がたくさん出過ぎて、「って何?」を使う余裕がない。


「はああ!」


 明鈴が雄叫びと共にさっきより濃度の高い妖気を呼び起こした。異空間のようなところから噴き出すそれは、この世の全てを消滅させそうな悪意に満ち溢れていた。ああ、舌を噛みそうだ。


「オーンマニパドメーフーン」


 明蘭さんが真言を唱えた。その途端、ドロッとした粘着物のように立ち込めていた妖気が洗い流されるかのように消失していった。


「おのれ!」


 明鈴が歯軋りをするが、明蘭さんの真言は留まる事を知らず、明鈴の発した妖気全てを消し去ってしまった。


 明蘭さんが唱えた真言は「六字大明王陀羅尼ろくじだいみょうおうだらに」と呼ばれる究極の浄化真言である。


 いくら明鈴でも防ぎようがないだろう。


「まどかさん、耕司!」


 菜摘さんが叫ぶ。私と江原ッチは目配せし合って印を結んだ。


「オンマカキャラヤソワカ」


 私に降りた大黒様の本来の姿である大黒天の真言だ。


 今までで一番強力なものだった。しかも、江原ッチの大黒天真言を上乗せしているので、当社比三百パーセントになっていた。


「ぐああ!」


 明鈴は大黒天真言のトリプルアタックをまともに食らい、もう一度江原邸の門に激突してずり落ちた。


 今回はさっきとは比べものにならないくらいの衝撃だ。いくらあのおばさんでも無事ではすまないだろう。


「うるさいんだよ、クソガキ! この程度でやられる明鈴様ではない!」


 口の中を切ったのか、ペッと血を唾と共に吐き出し、明鈴はよろけながらも立ち上がった。まるで某ボクシング漫画だ。


 立たなくていいのに、おばさんは。


「何度もおばさんて言うな、クソガキ!」


 何だか知らないが、私が悪口を言うたびに明鈴に力を与えてしまっている気がして来た。


「母の力の源は、あらゆる負の思いです。怒り、悲しみ、憎しみ、嫉み、屈辱」


 明蘭さんが教えてくれた。


「さっき、明鈴に降りて来たのは、そういった負の思いを凝縮したものなのよ。皆が一般的に思い描く悪魔とは、まさにそれの具現化。生きている人を絶望させてしまうような負の力の塊なのです」


 菜摘さんが明蘭さんの話を引き継いで言った。


「では、どうすれば……?」


 私は混乱してしまった。そんな私を江原ッチが優しく抱きしめてくれる。


「明鈴もこうやって抱きしめてあげるのが効果的かも」


 バカ男! 何考えてるのよ、この緊急時に! 後で特別なお説教ね。


「バ、バカめ、そんな事で私を倒せると思ったのか、愚かな!」


 そう言いながらも、酷く狼狽えている明鈴。どういう事?


「まどかさん、耕司君の言った事はあながち外れてはいないのですよ。母の力を奪うのは、まさに慈愛。あらゆるものを包み込む大いなる愛の力かも知れません」


 明蘭さんが同意したので、江原ッチは得意顔になった。


「そうか、抱きしめてあげるといいのか」


 江原ッチの言葉に反応した親友の近藤明菜の彼の美輪幸治君、そしてリッキーがニヘラッとして明鈴を見た。


 リッキーから発動していた布袋様の力が何故か大きくなっていた。


「布袋尊の御力みちからは、まさしく慈愛なのです。力丸君を中心にして、慈愛の力を結集してください」


 明蘭さんが言うと、


「おお!」


 三バカトリオが雄叫びをあげた。それに取り込まれるように一年生の坂野義男君が加わる。


「本当なの?」


 疑い深い性格の明菜は訝しそうな目でその輪に加わった。


「さあ、まどかさん、靖子さん」


 明蘭に促され、私と靖子ちゃんも輪に参加した。


「バカにするな、お前ら! そんな愛とかで、私が倒せるものか!」


 明鈴は動揺を押さえ込み、再び妖気を噴き出して来た。


 でも、正義は勝つのよ!


 


 そう信じているまどかだった。 

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