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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
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弁財天は譲れないのよ!

 私は箕輪まどか。中学三年の受験生美少女霊能者だ。


 何なのよ、その自己紹介は? 絶対遊んでるでしょ!?


 まあ、いいけどね。


 


 復活の会の野望を阻止するため、私達はG州の七福神巡りをする事になった。


 いろいろ調べてみると、七福神はあらゆるところにあった。


 一つの市の中でする七福神巡りや、各地域ごとにできる七福神巡りもある。


 私達が巡っている七福神は、G県で一番大規模なものだ。


 だから多分、一番御利益もパワーもあると思う。


 そうでも思わないと、つらくなってしまうから。


 えす仁田にた町の布袋様、S村の毘沙門天、Y町の寿老人の力をそれぞれ、肉屋の御曹司の力丸卓司君、私の親友の近藤明菜の彼の美輪幸治君、そして私の彼の江原耕司君が受けた。


 そして次は、問題の弁財天。


 S川市のエー町にあるけい禅寺ぜんじにある。


 私と明菜は、醜い争いを繰り広げていた。


 K禅寺に到着したら、ダッシュで境内に入り、弁財天の力を手に入れる。


 元は古代インドの河神だそうだ。それが音楽神、福徳神、学芸神、戦勝神など幅広い性格を持つようになった。


 そして何より、七福神の紅一点。


 G県警霊感課の紅一点はどちらなのか、決まるような気がしているのだ。


 こんな欲望剥き出しでいいのだろうかとは、その時の私には考える事すらできなかった。


「着きましたよ」


 ミニバンを運転してくれている神田原かんだはら明蘭めいらんさん。


 復活の会の宗主である神田原かんだはら明鈴めいりんの娘だが、復活の会の考え方に賛同できず、今では親子の縁は断絶状態だ。


 私もできれば、あの口やかましいお母さんと断絶したい心境だ。


 受験を控えて、いつもより多めに小言を言うようになり、胃に穴が開きそうなのだ。


「まどかさん、そんな事を考えてはいけませんよ」


 明蘭さんが私の心の叫びを聞いたのか、そう言ってきた。


「はい」


 私は穴があったら入りたい思いで頷いた。油断していたのだ。


「あ!」


 更に違う油断もしていた。明菜に後れを取ってしまったのだ。


 運動が苦手な明菜は、足も速くない。


 だから余裕で勝てると思っていた。その慢心を突かれたのだ。


 ところで、慢心て何?


「お先に、まどか!」


 明菜は勝利を確信した笑顔で言うと、境内へと走っていった。


「待て、明菜!」


 私はミニバンから飛び出し、亀の明菜を追いかけた。


 うん? だとすると私がウサギで、負けるって事じゃない!?


 違う違う、明菜がウサギで……。あれ? 何か変だぞ?


 明菜もそれを感じているようだ。


「どういう事、まどか? あんた、何かしたでしょ?」


 ムッとした顔で振り返り、私を睨みつける。


「何もしてないよ。私だってどういう事よ」


 弁財天の力は一番乗りの明菜にも、私にも降りて来ない。


 何がどうなっているの? もしかして、弁天様、お留守なの?


「ああ、凄いよ、靖子ちゃん」


 リッキーの雄叫びが聞こえた。


 声がした方を見ると、弁財天の力を受けている江原ッチの妹さんの靖子ちゃんがいた。


 その力のせいで、靖子ちゃんの感応力が官能力に近づいたらしく、リッキーがウットリとした表情で靖子ちゃんを見ていた。


「そんな……」


 私と明菜は異口同音に呟いた。


 ウサギにも亀にも弁天様は降りて来なかった。そして何より、靖子ちゃんも女の子なのを忘れていた私達が愚かだった。


 やっぱり、欲望剥き出しなのが良くなかったのだとその時ようやく気づいた。


「あとは何だっけ?」


 明菜がガッカリした顔で尋ねる。私は記憶の糸をほぐして、


「恵比寿様と福禄寿と大黒様よ」


 すると明菜は、


蛭子えびす? 何だかイメージ悪いな」


 非常にばち当たりな事を言ってのけた。何かあっても知らないからね、もう。


 確かにあの某漫画家のせいで、イメージを損なっているかも知れないけどね。


「おお、靖子ちゃん、いつもより可愛く見えるよ」


 そこへ持って来て、美輪君が明菜の神経を逆撫でするような発言をした。


「美輪幸治様、今日でお別れしましょうか?」


 またしても明菜の必殺技の絶対零度攻撃が始まった。


「ひいい!」


 美輪君は悲鳴を上げてすぐさま土下座だ。


「ごめん、アッキーナ! 俺の女神は君だけだよ」


 こっちが寒くなるような臭い台詞で明菜のご機嫌を取る。まさかそんな見え透いた言葉で喜ぶような明菜では……。


「もう、美輪君たら」


 明菜はクネクネしながら嬉しそうに微笑んでいた。単純だ、この上なく単純な女子だ。


「俺の女神はまどかりんだからね」


 それを見ていた江原ッチがすかさず耳元で囁いた。私は苦笑いして、


「そうなんですか」


 お題目で応じた。江原ッチは顔を引きつらせていた。


「さあ、急ぎましょう。次はM市のエイチ士見じみ町のエス寺です」


 明蘭さんが運転席に乗り込んで告げる。私達は大急ぎでミニバンに乗った。


 S瑚寺には恵比寿様が祀られている。


 大黒様とどちらにしようかと迷うくらい有名な神様だ。


 しかも、七福神の中で唯一日本由来の神様なのだ。


 大黒様はインドのシヴァ神の化身であるマハーカーラが元。


 私の唱えられる最強の真言が、この大黒天の真言だ。


 そして、出雲神話の因幡の白兎で有名な大国主命おおくにぬしのみことと神仏習合してできた神様である。


 ところで、神仏習合って何?


 福禄寿は新しく友達になった坂野さかの義男よしお君に譲ろうかなどと不届きな事を考えているまどかだった。

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