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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
172/235

七福神巡りに出発するのよ!

 私は箕輪まどか。 高校受験を控えた美少女霊能者だ。


 何よ、その妙ちくりんな自己紹介は? まあ、いいけど。


 復活の会の恐るべき野望を知った私達は、それを阻止するべく、G州七福神巡りをする事になった。


 言っとくけど、別にどこからもお金なんかもらってないからね!


 


「力丸君も、明菜さんも、坂野君も同行してください」


 私の彼の江原耕司君のお母さんである菜摘さんが意外な事を言った。


「母さん、復活の会が待ち伏せしているかも知れないんだ、三人はこの家にいた方が安全だよ」


 江原ッチが言う。私もそう思う。ところが菜摘さんは、


「靖子はどう思う?」


 何故か江原ッチの妹さんの靖子ちゃんに尋ねた。靖子ちゃんはびっくりするかと思ったが、


「私もお母さんと同じ意見よ。みんな一緒に行った方がいいわ」


「ええ? どうしてさ、靖子ちゃん?」


 明菜の彼の美輪幸治君がどうした事か、とても困ったような顔で尋ねた。


 何故なんだろうと美輪君を見ていると、彼は何度も神田原かんだはら明蘭めいらんさんをチラ見していた。


 なるほど、そういう事か。


「私が同行すると都合が悪いのでしょうか、美輪様?」


 明菜も気がついたらしく、美輪君の背後に立って絶対零度級の声で言った。


「ひいい!」


 美輪君は蒼ざめて身震いし、


「そ、そんな訳ないじゃん、アッキーナ」


 歯の根も合わないほど震えながら言ったが、説得力の欠片もなかった。


「そうでございますか」


 それでも明菜の絶対零度攻撃は続けられた。美輪君は失神寸前だ。


「まどかさん、どうしてかわかりますか?」


 菜摘さんが微笑んで尋ねて来た。私も最初は明菜と同じ意見になりそうだったが、靖子ちゃんの反応がヒントになった。


「明菜達が同行するとちょうど七人ですよね? その事と関係ありますか?」


 すると江原ッチもあっという顔をした。菜摘さんは大きく頷いて、


「ありますよ。あなた達が居合わせたのは、決して単なる偶然ではありません。まさに七福神のお導きなのですよ」


 私は思わず江原ッチと顔を見合わせた。菜摘さんは続けた。


「あなた達一人一人が依り代となり、七福神の力を受けてください。そうすれば、必ず復活の会の野望は阻止できます」


「そうなんですか」


 ここぞとばかりにお題目を唱えた。明菜の冷たい視線と江原ッチと靖子ちゃんの驚愕の視線が痛い。


 でも、私は負けない。何に対してとか言わないでよね。


 意外な展開に驚いたのは明菜達も同じだ。特に新しく仲間になった坂野義男君は呆然としていた。


 彼自身、想念が一般人より強力なので、依り代には最適かも知れない。


「では、出発しましょうか」


 菜摘さんは同行せず、明蘭さんが運転する事になった。


「私は雅功まさとしと連絡を取り、力を結集する準備をします」


「そうなんですか」


 もう一度お題目を唱えると、今度は菜摘さんが哀れむような目で私を見た。ああ……。


 江原ッチと美輪君とリッキーが助手席を争ってジャンケンをしている間に、


「坂野君、助手席に乗って」


 私と明菜と靖子ちゃんの策略が勝った。項垂れるバカ男三人。反省しなさい!


 坂野君は明蘭さんと初対面。顔を赤くして挨拶していた。


 純情ね、彼。何だか可愛い。


「まずはどこから行きますか?」


 江原邸を出た直後、中部座席に座った私は明蘭さんに尋ねた。すると明蘭さんは、


「まずは西から始めましょう。エス仁田にた町のアール山寺ぜんじに行きます」


 S仁田町とは、あの昭和のアイドルであるI森M幸さんの出身地だ。


「ここから一時間以上かかりますね」


 後部座席に追いやられた江原ッチが美輪君と身を乗り出して口を挟む。すると明菜がその前に立ち塞がり、


「急ぎましょう、明蘭さん」


 二人の視界から明蘭さんを隠してしまった。ナイス、明菜!


 二人のエロ男は項垂れた。リッキーは靖子ちゃんの目が怖いのか、大人しくしている。


「そうですね。Mインターチェンジから高速に乗りましょうか」


 明蘭さんはアクセルを踏み込んで言った。


 


 やがて、私達を乗せたミニバンは、高速道路に入り、一路S仁田町を目指した。


 今向かっているのは、約四百年前から続く由緒ある天台宗のお寺だ。


 そこに祀られているのは、布袋ほてい様。決してロック歌手ではない。


 確かに彼もG県出身ではあるけど、祀られてはいないと思う。


 七福神で唯一実在したとされる中国のお坊さんである。


「復活の会が仕掛けて来るかも知れないから、警戒しよう」


 江原ッチが言った。私と靖子ちゃんは黙って頷いたが、


「母はまだ仕掛けて来ないと思いますので、リラックスして大丈夫ですよ」


 明蘭さんがルームミラー越しに言った。


「どうしてですか?」


 私はすかさず質問した。すると明蘭さんは、


「理由を訊かれるとお答えしにくいのですが、そんな気がするのです。ごめんなさい、曖昧な答えで」


 申し訳なさそうに説明してくれた。


「親子だからこそわかる何か、という感じですか?」


 油断していた明菜をかい潜るようにして美輪君が言った。明菜がすぐさまブロックする。


「そうですね。そういう事でしょうか」


 明蘭さんは苦笑いした。


 何となくだが、わかる。私も時々、お母さんが階段の下で待ち構えている予感がして、二階の窓から外に出た事があるからね。


 え? 例えがおかしい? いいじゃない、別に!


 


 さすが高速道路! たちどころに車はS仁田インターチェンジに到着し、国道254号線に降りた。


 ここからはあともう一息だ。


 確かに復活の会の三代目宗主である明鈴オバさんは仕掛けて来なかった。


 車はJ信電鉄の踏み切りを渡り、S仁田町役場を通り過ぎ、遂に目的地であるR山寺に着いた。


 菜摘さんが電話で話を通してくれていたので、私達はすんなり中に入る事ができた。


「おおお!」


 境内に入るなり、リッキーが雄叫びをあげた。


 どうやら、布袋様の依り代はリッキーのようだ。体形が似ているからだろうか?


 もしそうだとしたら、選ばれなくて良かった。


「リッキー、落ち着いて。今布袋様の力が貴方に降りて来ているから」


 動揺するリッキーを靖子ちゃんが感応力を駆使してなだめた。


「う、うん」


 靖子ちゃんに言われたせいなのか、リッキーは落ち着きを取り戻した。


 数分後、布袋様の力の降臨が終了し、私達はご住職にお礼を言って寺を出た。


 急がなければならないので、寄り道もできない。


 車は高速には乗らず、そのまま国道を進み、県道でT岡市からA中市に入り、T崎市を通過して、S村に入った。


 その村は以前、あの西園寺蘭子お姉さんが親友の八木麗華さんと共に乗如っていう生臭坊主と戦ったところだ。


 私も、ある女の子の霊能者と対決した事がある村だ。


 その村最大のお寺であるアール澤寺たくじに向かっているのだ。


 そのお寺に祀られているのは毘沙門天びしゃもんてん。元はインドのヒンドゥー教の神だ。


 毘沙門天は真言もある。それを唱えると超高速移動が可能だ。


 そんな事を回想しているうちに、車はR澤寺に着いた。


「おおお!」


 ここでの依り代は美輪君だった。らしいと言えばらしい。


 ちょっとだけ江原ッチが悔しそうな顔をしていたのにはつい噴き出してしまった。


 戦国時代には軍神として崇められた神様だから、男子には人気みたい。


「次は近いですよ。隣町ですから」


 明蘭さんが言った。その言葉通り、次のお寺はS村に隣接するY町にあるティー松寺しょうじ


 そこに祀られているのは、寿老人じゅろうじん。この神様は元は中国の道教という宗教の神様。


「おおお!」


 寿老人の依り代になったのは、江原ッチだった。何故か江原ッチは泣いていた。そんなに悔しかったの?


「次はS川市のエイ町にあるケイ禅寺ぜんじ弁財天べんざいてんです」


 明蘭さんの言葉に私と明菜が反応した。


 弁財天は七福神の紅一点。ここは譲れない。


「負けないわよ、まどか」


 明菜が言った。何の争いをしているの、と言われてしまいそうだが、その時は切実なまどかだった。

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