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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
165/235

エロ姉ちゃんの策略なのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の超美少女霊能者だ。


 前回の逆? 意地が悪いにも程があるわよ、全く!


 


 私は、彼氏の江原耕司君のお母さんの菜摘さんと二人で、復活の会の三代目宗主を名乗る神田原かんだはら明鈴めいりんというエロい服装の若作りのオバさんと戦うために罠を承知で彼女の待つ奇妙な建物に出向いた。


 明鈴は相変わらずスケベな男共には目に毒な格好で現れ、菜摘さんを挑発して戦いを始めた。


 あの圧倒的な強さを誇る菜摘さんが苦戦し、その揚げ句私のせいで明鈴に跳び蹴りを受けてしまった。


 菜摘さんは明鈴の術で宙を移動させられて黒い建物に連れて行かれてしまった。


 一方、私も黒尽くめの男達に捕われ、セクハラを受けながら建物の中に運ばれた。



 私達は黒い建物の中の長い廊下を奥へと運ばれている。全く窓がない廊下で、壁にはたくさんの篝火かがりびが焚かれていた。


雅功まさとしをどうするつもり?」


 空中遊泳をさせられながらも、菜摘さんは明鈴に尋ねた。雅功とは菜摘さんの夫で、江原ッチのお父さん。日本最強の退魔師とも言われている人だ。すると明鈴はニヤリとして、


「私の奴隷にするのさ。なかなかなイケメンだし、能力も高いから、子供を作る手伝いをしてもらう」


 目尻の小皺を浮き上がらせて、飛んでもない事を言い放った。


「うるさい、ガキ! 今すぐ殺してやろうか!?」


 明鈴はそんなシリアスな場面でも、私の心の声をしっかり聞いていた。


 ところで、シリアスって何?


「何ですって!?」


 菜摘さんもさすがに冷静ではいられなくなったようだ。


 最愛の夫を奪うと言っているようなものなのだ。まだ子供の私にはわからない事が多いけど。


 え? 都合の悪い時だけ子供のフリをするな、ですって? 仕方ないでしょ、イメージ戦略の一環なんだから。


「私のこの魅力溢れる身体を見れば、喜んで協力してくれるでしょうね」


 明鈴はドヤ顔で菜摘さんを見る。


「多分貴女は雅功の好みではないわ」


 菜摘さんは一歩も引くつもりはないみたいだ。


「どうしてそんな事が言える?」


 明鈴は右の眉を吊り上げた。菜摘さんはフッと笑って、


「雅功は無駄に胸がでかくてその分頭が空っぽの女は嫌いなのよ」


「何だって!?」


 明鈴の小皺が更に増え、鬼のような形相になった。


「誰が頭空っぽの○○○○○だ!」


 あまりにも的確な表現なので、伏せ字にした。ファンに殺されたくないからね。


「強がりを言っていればいい。奴は私の言う事を聞くしかないさ。あんたの命を助けるためにね」


 明鈴は再びドヤ顔になって言った。しかし菜摘さんは、


「雅功は貴女を倒すためなら、私の命など気にしないわ」


 それには明鈴だけでなく、私も驚いてしまった。奥さんの命を犠牲にしても敵を倒すなんてあり得ないわ!


「嘘を吐くな!」


 明鈴はまた小皺を増加させて怒鳴った。私の心の声も聞こえないほど興奮し、動揺しているようだ。


「嘘ではないわ。それが私達が夫婦になる時に決めた事。どちらが敵の手に落ちても、いざとなったらその命は惜しまないとね」


 菜摘さんは明鈴に顔を向けて力強い声で言い返した。カッコいい。涙が出そう。


「なるほど、嘘ではなさそうだな」


 明鈴の顔が嫌な笑みに変わった。何だろう?


「では、そちらの子供の命はどうだ? それも捨てるというのか?」


 げ! その手があったか! 嫌な汗がたんまりと身体中から噴き出して来るのを感じた。


「ええ、そうよ。まどかさんは息子の彼女。それくらいの覚悟がなくて、付き合ったりしないわ」


 菜摘さんがそう言った時、私は本気で泣きそうになった。私も同じ立場なの?


「本当か、ガキ?」


 明鈴が鋭い目で私を睨んだ。嘘を見通せる彼女の能力の前では、表面だけ取り繕う事は無意味だ。


 私は意を決した。


「もちろんよ! 私もその覚悟があるから、ここに来たのよ!」


 全身全霊を懸けて叫んだ。嘘偽りなど一欠片もない言葉だ。


「ならば、その望み叶えてやるよ」


 明鈴の顔が悪魔に見えた瞬間だった。


 彼女は目の前にあった巨大な観音開きの鉄の扉を魔術で開いた。


 その向こうには血の染み込んだような色の二つの磔台はりつけだいが一メートルほどの高さの台の上に建てられていた。


 漏らしそうになるくらいおぞましい気が満ちた部屋だ。


「ようこそ、生け贄の間に」


 明鈴が右の口角を吊り上げて言い、うやうやしく頭を下げた。


「やれ」


 彼女の命令が下され、黒尽くめの男達が私と菜摘さんを磔台に括り着ける。


 両手首、腰、足首をかせで固定されてしまった。しかも術をかけてあるらしく、力が入らなくなった。


 この状態では、万に一つも脱出はできない。まどかはわずか十五歳でその人生を閉じてしまうのか。


 美人薄命とはこういう事を言うのだろうか?


「ガキ、くだらない妄想はやめて大人しくしろ。今から江原雅功と耕司をここに呼ぶんだからさ」


 明鈴が見覚えのある携帯電話を取り出した。いつの間にか、私の携帯電話が!


「まずは息子の方からだ。あいつもなかなかの美男子だから、将来は私の奴隷にしようかね」


 明鈴は嫌らしい顔でそう言った。江原ッチの事だから、喜んで奴隷になってしまいかねない。


「まどかさん、そこは耕司を信じてあげて」


 横にいる菜摘さんが悲しそうな顔で言った。私は苦笑いした。菜摘さんも心の声を聞けるのを忘れていた。


「江原ッチ、これから神田原明鈴の邸に突入するんだけど、中にはたくさんの敵がいるみたいなの」


 何と明鈴は私の声を真似て江原ッチに語りかけた。でも、江原ッチなら見抜くはずよ。


「わかったよ、まどかりん! すぐに行くから、場所を教えて!」


 バカ! それは私じゃなくて、私のフリをしているオバさんなのよ!


 明鈴が凄い形相で私を一睨みしてから、


「今から位置情報を送るから、早く来て! 待ってるから!」


「わかったよ、まどかりん!」


 明鈴は得意満面の顔で私を見た。


「ザッとこんなものさ。男っていうのは、本当にバカだよねえ」


 彼女はけたたましく笑った。そして次に菜摘さんを見る。


「あんたの夫は、息子を人質にしてから呼ぶ事にする。その方が確実だからね」


「貴女という人は!」


 菜摘さんが歯軋りしている。明鈴は嬉しそうだ。何てオバさんなの!? 性格悪過ぎ!


 そんなだと、小皺が十倍に増えるんだから!


「小皺小皺って五月蝿いガキだね! 本当に殺すよ!」


 明鈴は年と皺の事を言われると冷静さを欠くようだ。攻め口がわかったような気がする。


「ガキィッ!」


 明鈴は口から火を吐きそうなくらい怒っていた。


「明鈴様、この娘を可愛がりたいのですが?」


 黒尽くめの男の一人が思い出さなくてもいい事を思い出してしまった。


「そうだったねえ。許可する。可愛がってあげな」


 明鈴もあっさり言った。ああ、まどかは命を落とすだけではすまず、穢されてしまうのね。


 もうダメだと思った時だった。


「まどかちゃん、今助けてあげるよ」


 聞き覚えのある声が聞こえた。これは確か……。


「うが!」


 私を可愛がりたいと言い出した黒尽くめの男が周りの仲間をいきなり殴り倒した。


「何!?」


 明鈴にも何が起こったのかわからないようだ。


「うりゃ!」


 その黒尽くめの男は近くにあったスパナで枷を打ち壊して私を解放してくれた。


「誰だ、お前は!?」


 明鈴が他の黒尽くめの男達を自分のそばに呼び寄せて怒鳴った。


「G県警霊感課の美輪幸治さ!」


 サングラスを外し、スーツを脱ぐと、そこには私の親友の近藤明菜の彼の美輪幸治君が現れた。


「お前は確か、霊能力を受けつけない男だな?」


 明鈴は歯軋りして言った。美輪君は続いて菜摘さんの枷も打ち壊し、


「その通りさ。あんたの力も俺には通用しないし、俺の変装も見破れないのさ」


 フッと笑ってカッコ良く決めた美輪君を見たら、明菜は失神してしまうだろう。


「形勢逆転だ。観念しろ」


 美輪君はサッと明鈴の前に飛び降りた。


「そうか。抜かったよ。今回は私の負けだ」


 明鈴は両手を上げて言った。うん? 妙に簡単に降参したぞ? おかしいな?


「お礼に自慢の巨乳は如何?」


 明鈴はニヤリとして、いきなり胸を覆っていたコスチュームを掴むと横に開き、ポヨヨンと丸出しにした。


 おお! たるんでいなくて、理想的な形って、感心している場合ではない。


「何考えてるのよ、エロオバさん!?」


 私が叫んだ時には、もう手遅れだった。


「ブッ!」


 それを見てしまった美輪君は大量に鼻血を噴き出して倒れてしまった。


 何て事だ……。


「更に形勢逆転だね」


 明鈴は胸をしまうとニヤリとして私と菜摘さんを見た。


 


 またしてもピンチのままのまどかだった。

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