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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
164/235

大人の女の戦いは恐ろしいのよ!

 私は箕輪まどか。中学三年の霊能者だ。


 あれ? 美少女は? ないの? ううう……。


 


 私の兄の慶一郎が、そのエロさ故に復活の会の三代目宗主を名乗る神田原かんだはら明鈴めいりんに捕まった。


 妹として情けなくて涙が出そうだが、今はそれどころではない状況だ。


 私の彼氏の江原耕司君のお母様である菜摘さんと二人で、明鈴が待つ場所に向かった。


 そこは黒魔術を信仰する者が建てたと思われる漆黒の建物だった。


 中からエロいコスチュームの明鈴が出て来て、


「あらあら、喧嘩腰ね、おば様。年を取ると気が短くなるのかしら?」


 菜摘さんを「おばさん呼ばわり」した。


 確かに菜摘さんは私達から見ればそうかも知れないけど、あんたとはそれほど違わないでしょ!

 

「まどかさん、それ、フォローになってないわ……」


 菜摘さんが悲しそうな目で私を見た。しまった、菜摘さんて、心の声を聞けるんだっけ。


「そうなんですか」


 私は尊敬する御徒町樹里さんのお題目を唱えて苦笑いした。


「そっちのガキ、私を幾つだと思っているのよ? そのおば様と一緒にしないで欲しいわね」


 明鈴まで私を睨んで突っ込んで来た。ああ、これから妄想するのが難しくなりそうだ。


「さっきから、年齢の事ばかり言って、不愉快だわ!」


 菜摘さんが怒りの形相でいきなり明鈴に突進した。


 もしかして……。おっと、また読まれるから、やめておこう。


「図星のようね、おば様? 私と一回りくらい違うでしょ?」


 明鈴はニヤニヤしながら更に菜摘さんを挑発した。


 え? 一回り? って事は、明鈴は十代なの?


「まどかさん、惑わされないで! 彼女は復活の会の人間よ。見た目よりずっと年を取っているわ!」


 菜摘さんが明鈴にハイキックを繰り出しながら叫んだ。


 ああ、そうか。明鈴は本当はアラフォー?


「それ以上考えるな、ガキ! お前から殺すぞ!」


 明鈴も鬼の形相で私に怒鳴る。もう、怖いよお。


 菜摘さんのハイキックを難なくかわした明鈴はスライディングの要領で菜摘さんの軸足を払った。


 菜摘さんはバランスを崩して倒れるかと思ったが、側転をして立ち上がった。


 そこへ明鈴の右回し蹴りが飛ぶ。


「うりゃあ!」


「はああ!」


 しかし、菜摘さんは闘気を発して明鈴の蹴りを跳ね除けてしまった。


 凄い! 菜摘さんが強いのは知っているつもりだったけど、ここまでとは……。


「やるわね、おば様」


 明鈴がフッと笑って言う。すると菜摘さんもフッと笑い、


「年上におば様呼ばわりされたくないわね」


「やかましい!」


 明鈴は目を血走らせて激怒し、菜摘さんに仕掛けた。


 今度は突きと蹴りの連続技だ。菜摘さんは華麗なステップでそれをかわした。


 そうか、明鈴は実は若作りなのか。


「ガキ、死にたいのか!?」


 菜摘さんと攻防を繰り広げながらも、私の心の呟きに気づくあたり、相当コンプレックスがあるのね。


「口の減らないガキだね。やっちまいな!」


 明鈴が建物の方を向いて叫ぶと、中からドヤドヤと黒尽くめの男達が現れた。


 全部で十人もいる。私一人にこの人数って、どういう事よ!?


「うおお!」


 全員が一斉に私に掴みかかって来た。


「まどかさん!」


 菜摘さんは明鈴と組み合いながら私を見た。


「大丈夫です! こんなオヤジ軍団、私の力でやっつけます!」


 私は印を結んだ。そう、十五歳になって、まどかは成長したのよ。


 今、それを見せてあげるわ!


「オンマカラギャバゾロウシュニシャバザラサトバジャクウンバンコク」


 私は愛染明王あいぜんみょうおうの真言を唱えた。


「まどかさん、それは違います!」


 菜摘さんが仰天した顔で叫んだ。


「え?」


 愛染明王の真言て、魅力アップの真言でしょ?


 これを唱えれば、世の男は全員私の奴隷になるはずよ。


「門前の小僧か、お前は?」


 明鈴が蔑むような目で私を見ていた。どういう事?


「あれ?」


 ハッとして周囲を見回すと、確かに男達はトロンとした目で私を見ていて、攻撃して来る様子はないのだが、何かおかしい。


「げ!」


 男達は皆服を脱ぎ始めた。な、何考えてるのよ、こいつら?


 いたいけな美少女に何するつもり?


「いやあ!」


 とうとう全部脱いでしまった。見るに堪えないえげつないものが見えてしまいそうなので、私は目を背けた。


「まどかさん、愛染明王真言は好き合った者同士で使わないと副作用が出るのです。すぐに光明真言で打ち消してください」


 菜摘さんは明鈴と蹴りの応酬を繰り返しつつも、教えてくれた。


「オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニパドマジンバラハラバリタヤウン」


 私は最強の真言である光明真言を唱え、愛染明王真言を打ち消した。


「わわ、これは一体?」


 男共は自分達の狂態に驚き、慌てて服を着た。


「何と恐ろしい術を使うのだ、このガキは……」


 男の一人がそう呟いたのを聞いた。


「違うわよ! ちょっと間違えただけよ!」


 私は顔が破裂するくらい赤くなっているのがわかった。


 花も恥じらう乙女に向かって、何て事言うのよ!


「我らを愚弄しおって! 者共、かかれ!」


 リーダーらしき男が号令した。


 黒尽くめに戻った男達がまた私に襲いかかって来た。


「みんな、まとめて逝かせてあげるわ!」


 ちょっと、どうして悶絶してるのよ、このおじさん達? 変態なの?


「インダラヤソワカ」


 まずは帝釈天の真言で雷撃を見舞った。


「ぐはあ!」


 三人が脱落した。


「オンマカキャラヤソワカ」


 次に大黒天真言を唱えた。


「ぐはあ!」


 五人が脱落した。残るは二人だ。


「まどかさん、後ろ!」


 菜摘さんが叫んだ時はもう遅かった。


「○村、後ろ!」


 それとは違って、現実は残酷なのだ。


 黒尽くめの男達は十人ではなく、十五人いた。


 残りの五人が私の後ろに回り込んでいたのだ。


 私は三人の男に両手と両足を抑えられ、二人の男にお腹と頭を押さえ込まれてしまった。


 しかもそれだけではなかった。


 さっき真言で倒したはずの男達がムクリと立ち上がったのだ。


「全然効かないぞ、ガキ」


 リーダーがニヤリとして言った。


「まどかさん!」


 菜摘さんが私を助けようと走った。


 背後に明鈴が迫っているのも構わずに。


「私に背中を見せるとはいい度胸だ、江原菜摘!」


 明鈴の飛び蹴りが無情にも菜摘さんにヒットしてしまった。


「ぐう!」


 菜摘さんの身体は地面に叩きつけられ、ゴムまりのように弾んだ。


「罠と知りながらやって来たのは誉めてやるが、無様だな。この程度のガキをパートナーに選んで挑んでくるとは。お前を少し買い被っていたようだよ」


 明鈴は菜摘さんの背中を踏みつけた。


「く……」


 菜摘さんは小さく呻いた。


「よく見ると奇麗だな、このガキ。明鈴様、可愛がってもよろしゅうございますか?」


 涎を垂らしながら男の一人が言う。私は身震いした。


 ああ、美し過ぎるのも良くないのね。何て、バカな事を考えている場合ではない。


 今や貞操の危機なのだ。


 ところで貞操って何?


「ああ、いいとも。私はこのおば様を可愛がるけどね」


 明鈴が非情な承諾をした。


 え? 明鈴て、そっちの方なの?


「違うよ! その可愛がるではない!」


 明鈴はまた激怒した。結構楽しいおばさんなのかも知れない。


「殺すぞ、ガキ!」


 明鈴にまた心の声を読まれた。


「はあ!」


 明鈴は男の一人が持って来た黒くて長い杖を掲げると、菜摘さんに何かの術をかけたようだ。


 菜摘さんの身体がフワッと浮き上がったのだ。


「あんたを餌に江原えはら雅功まさとしをおびき出す。H山でのお礼をしたいのでね」


 明鈴は悪魔もゾッとするような笑みを浮かべた。


 H山で戦ったのは、名倉英賢というスーパーおじいちゃんなのに。


 明鈴は年のせいで記憶違いしてるのかな?


「違うわい!」


 鋭い突っ込みがあった。


「そのガキも餌だ。生け贄の間に連れて行け」


 明鈴が命じると、私は男達に抱え上げられて、運ばれた。


「ちょっと、どこ触っているのよ!」


 私はセクハラをするおじさん達に抗議したが、聞き入れられる状況ではなかった。


 


 今までで一番のピンチだと思うまどかだった。

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