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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
中学三年生編なのよ!
163/235

エロ兄貴をエロ姉ちゃんから取り戻すのよ!

 私は箕輪まどか。中学三年の美少女霊能者だ。


 ……。


 だからもう突っ込まないって言ったでしょ?




 私の兄でG県警霊感課の課長である慶一郎が復活の会の三代目宗主を名乗る神田原かんだはら明鈴めいりんに拉致された。


 エロ兄貴の事だから、明鈴の露出の多いコスチュームに見とれてあっさり捕まったのだろう。


 妹として非常に恥ずかしい。


 その時、彼の江原耕司君の邸の道場で作戦会議中だったので、江原ッチの妹さんの靖子ちゃんが兄貴の危機を探知してくれたのだ。


 靖子ちゃんはお母さんの菜摘さんと共に状況を詳しく知るために感応力を全開にしている。


 もしここに靖子ちゃんと何故か付き合っている力丸ミートの御曹司の卓司君がいたら、靖子ちゃんに襲いかかっているかも知れない。


 靖子ちゃんの感応力は、あの暴力的なスタイルの小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんに匹敵するのだ。


 一つだけ救いがあるとすれば、靖子ちゃんにはあのスタイルがないという事。


 もしスタイルまで瑠希弥さんに追いついてしまったら、私はどうしたらいいのかわからなくなってしまう。


「こら!」


 親友の近藤明菜は、靖子ちゃんをエロい目で見ていた彼氏の美輪幸治君の頭を叩いた。


「ご、ごめんよお、アッキーナ」


 付近の不良達が避けて通るほどの強さを誇る美輪君も、明菜には敵わないのだ。


「また心配事が増えそうだ……」


 江原ッチは靖子ちゃんの力が向上しているのは嬉しいのだが、副産物の魅力がアップするのは困るようだ。


 私はまゆ子さんに連絡を取ってみた。


「まどかちゃん……」


 予想通り、まゆ子さんは涙声だった。


「一体何があったのですか?」


 私はまゆ子さんを落ち着かせながら尋ねた。


 すると衝撃の事実が語られたのだ。


 兄貴は明鈴に拉致されたのではなかった。


 セールスレディのフリをして現れた彼女にあっさりたぶらかされ、ついて行ってしまったのだ。


 だから、まゆ子さんは兄貴が復活の会に拉致されたとは思っていなかったようだ。


 更に情けなくなった。兄貴は霊感課の課長を辞めた方がいいと思った。


 真相を知ったまゆ子さんは固まってしまったのか、いくら話しかけても返事がない。


 だが、決して「しかばね」になった訳ではない。


「切りますね、まゆ子さん」


 携帯の通話料が凄い事になってしまうので、私は一方的に通話を切った。


 まゆ子さんサイドからの情報はそれ以上望めない。


 後は靖子ちゃんと菜摘さんの感応力に賭けるのみだ。


「慶一郎さんの居場所がわかりました」


 菜摘さんが言った。私はハッとして菜摘さんを見た。


「但し、あまりにもはっきりとわかったので、罠の可能性も否めません」


 菜摘さんは真剣な表情で私達を見渡した。


「危険が伴うって事ですね。だったら、決まりだ。アッキーナと靖子ちゃんは待機。俺と江原で……」


 美輪君が作戦を取り仕切ろうと喋り始めた時、


「いえ、今回は耕司と美輪君は待機してください」


「え?」


 美輪君はもちろん、江原ッチも唖然として菜摘さんを見た。


「何でだよ、母さん?」


 江原ッチは納得がいかないのか、菜摘さんに食ってかかった。


「理由が思い当たらないのであれば尚更です。自分達の弱点を自覚していない人には待機してもらうしかありません」


 菜摘さんがいきなり気を高めて江原ッチを退けた。


「あ……」


 江原ッチは思い当たったようだ。美輪君はまだキョトンとしている。


「耕司も美輪君も、明鈴の魅了チャームの術にかかってしまうので、足手まといになるからです」


 菜摘さんは美輪君を見て告げる。明菜は呆れ顔で美輪君を見ていた。


「但し、貴方達を二人きりにすると、今度は貴方達が狙われるでしょうから、靖子を置いていきます」


 菜摘さんの提案に今度は靖子ちゃんは驚いた。


「ええ? お母さん、私、一緒に行きたいよお」


 靖子ちゃんは口を尖らせてクネクネしている。


「ダメです。貴女は確かに感応力は瑠希弥さんに迫るほどになりましたが、攻撃真言や防御真言はまだまだです。ここで耕司と共に待機しなさい」


 菜摘さんは有無を言わせない迫力で靖子ちゃんに言った。靖子ちゃんは泣きそうになりながら、


「わかった」


 何とか同意してくれた。え? という事は?


「そうです。私とまどかさんの二人で慶一郎さんの救出に向かいます」


「そうなんですか」


 私は思わずお題目を唱えた。何とかなりそうな気がして来た。


「近藤さん」


 菜摘さんは優しい顔になって明菜を見た。明菜は少しビビリながら、


「な、何でしょうか?」


 菜摘さんは明菜に近づいて、


「もし、復活の会の手の者が襲撃して来ても、耕司と美輪君が守ってくれます。貴女は靖子と共に二人の弱点のカバーをしてください」


「え? でも私、霊感ないし……」


 明菜は戸惑っていた。何をカバーするのかわからないのだろう。


「貴女は霊感はありませんが、美輪君を思う気持ちは誰にも負けないでしょう? その気持ちを靖子に貸してください。そうすれば、きっと敵を撃退できます」


 菜摘さんはまるで菩薩様のような暖かな笑みと眼差しだ。


「はい」


 明菜はウットリした顔で頷いた。


 感応力とは、それ自体が攻撃や防御ができるものではない。


 何かと融合して力を持つものなのだ。


 靖子ちゃんの感応力と明菜の愛(または嫉妬心とも言う)が融合すれば、確かに凄い力を発揮するかも知れない。


「では、行きましょうか、まどかさん」


 菜摘さんが真顔になって私を見た。


「はい」


 鼓動が高鳴るのを感じながら、大きく頷いた。




 私は菜摘さんの運転する四駆車の助手席に乗り、兄貴がいる場所へと向かった。


「怖いですか、まどかさん?」


 菜摘さんがハンドルを切りながら尋ねて来た。私は呼吸を整えて、


「はい。でも、大丈夫です」


「無理はしないようにね。ダメだと思ったらすぐに逃げてください」


 菜摘さんは前を向いたままで言う。逃げる? 逃げられるのか?


「神田原明鈴は男には強いですが、女との戦いは苦手のようです。だからこそ、慶一郎さんを拉致して人質にするつもりなのです」


「はい」


 その言葉で、改めて兄貴の身が危ないのを思い知らされた。


「私が絶対にお兄さんを助けます。まどかさんはお兄さんと逃げる事だけを考えていてください」


「え?」


 私は嫌な予感がして思わず菜摘さんを見つめてしまった。死亡フラグが建ったような気がしたのだ。


「心配しないで、まどかさん。耕司も靖子もまだ未熟です。それに雅功まさとしを残して先に逝くほど私も傲慢ではありませんから」


「あ、ええ、はい」


 そうか、すっかり忘れていたけど、菜摘さんはあの綾小路さやかと同じく、心の声を聞けるんだった。


 さやか、元気かな? え? 誰の事、ですって? みんな、薄情なのね。


「今回は慶一郎さん救出を最優先にしますが、次は打倒明鈴を最優先にします。その時は力を貸してくださいね」


 菜摘さんは信号待ちで車を停止させて私を見た。


「はい」


 お母さん、と言いたかったが、気が引けたのでやめた。


 


 やがて、車は未舗装の道に入り、深い森の中に分け入った。


 近い。兄貴の気を微量ながら直接感じられるようになった。


 これすら罠なのだろうか?


「あ!」


 森がいきなり終わり、広々とした場所に出た。


 そこには、真っ黒な建物が建っていた。


 形は教会だ。但し、屋根の天辺にあるのは普通の十字架ではなく黒山羊の顔をした人間がはりつけになったものだ。


 窓にはめ込まれたステンドグラスの模様も悪魔をモチーフにしたような図柄で、不気味だ。


 菜摘さんは四駆車を停め、降りた。私もそれに続いた。


「ようこそ、お二方。私の家にようこそ」


 爬虫類のような飾りがあしらわれた観音開きの大きな扉を軋ませて開き、明鈴が姿を見せた。


 不敵な笑みを浮かべ、以前霊感課に現れた時と同じように露出の多いコスチュームを身にまとっている。


「挨拶はいいでしょう。貴女がチャームで連れ去った箕輪課長をお返しいただきましょうか」


 菜摘さんはいきなり闘気全開で言った。私がビビッてしまったほどだ。


「あらあら、喧嘩腰ね、おば様。年を取ると気が短くなるのかしら?」


 明鈴は憎らしい笑みを浮かべて菜摘さんを挑発した。


 


 壮絶な女の戦いが始まる気がするまどかだった。


 

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