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復活の会は嫌らしいのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者。


 只今、私が住んでいるG県は県会議員選の真っ只中。


 その県議選候補者の一人である朽木くつき泰蔵たいぞう氏の次男の幸四郎さんが毎晩妙な夢を見るので調査する事になったG県警刑事部霊感課。


 課長である我がエロ兄貴とその恋人で課長補佐の里見まゆ子さん、そして霊感課のエースで、私のクラスの副担任でもある椿直美先生、更に霊感親友の綾小路さやか、彼氏の江原耕司君と一緒に朽木氏の邸にお邪魔した。


 お師匠様である椿先生の鋭い霊感で、たちどころに事件の真相が解明された。


 幸四郎さんに妙な夢を見させていたのは、私達の最大の敵対勢力である復活の会と言う邪教集団。


 椿先生の魔除けと結界で復活の会の野望は阻止されたが、


「幸四郎君への呪いは多分魔除けで排除できるでしょうけど、それで終わるとは思えないのよ」


 椿先生はまだ何かあると考えていた。


 私もそんな気がする。


 復活の会がこの程度で手を引くとは思えないからだ。


 


 朽木家を出た私達はそのまま朽木氏の対立候補である荒船善次郎氏の家へと向かった。


「選挙期間中はまずいのではないですか?」


 いろいろと気を使う立場の兄貴が言ったが、


「だからこそなんです。放置すれば、復活の会の息のかかった議員が議会に送り込まれます。そうなったら、霊感課は潰されるかも知れないんですよ」


 椿先生のその一言がお役人気質ばりばりの兄貴の心を後押しした。


「わかりました。正義が行われるのが早過ぎるという事はありませんね」


 兄貴は意味不明にカッコつけて言った。


 まゆ子さんが白い目で見ている。


「まだ復活の会の人間が荒船氏の家にいます。現場を押さえましょう」


 椿先生はいつになくやる気満々だ。


「はい」


 私とさやかと江原ッチは力強く返事をした。


 荒船邸の前にパトカーが停まると同時に、私達はドアを開けて飛び出し、荒船邸の周囲を囲むように走る。


 邸の東西南北にそれぞれ立ち、中にいる復活の会のメンバーを逃がさないように結界を張った。


「行くわよ」


 椿先生の号令で、私達は一斉に玄関から邸に踏み込んだ。


「何だね、君達は!?」


 痩せ細った白髪頭の老人が高そうな木製の杖を突きながら玄関に現れた。


 どうやらその人が荒船善次郎氏らしい。


 荒船氏の後ろには、大柄で黒のスーツを着た人相の悪い秘書らしきオジさんが立っている。


「G県警刑事部霊感課です。このお邸の中に復活の会と言うよこしまな術を使う集団の人間がいるのを察知し、お伺いしました」


 椿先生が身分証を提示し、荒船氏を睨みつけて言った。


 その気迫に荒船氏はもちろんの事、やくざと見間違いそうな秘書もビビったようだ。


「先生、地下です!」


 邸全体をサーチしていたさやかが叫んだ。


「く!」


 秘書が私達に突進して来た。


「インダラヤソワカ」


 私と江原ッチは素早く連携攻撃を仕掛ける。


 帝釈天真言により、雷撃が秘書に落ちた。


「ぐええ……」


 秘書は痙攣し、床に倒れた。


「動かないでくださいね」


 すでに目を見開いて蝋人形のように固まっている荒船氏に椿先生が告げた。


 私とさやかは玄関脇にある地下室への螺旋らせん階段を駆け降りた。


 椿先生と江原ッチを残すのは何だか心配だったけど、仕方ない。


 階段を降り切ると、そこは黄色い照明で照らされた何もない不気味な畳敷きの部屋だった。


 広さは二十畳くらいだろうか?


 その部屋の奥に黒いマントのような物を身にまとった長身の男が立っていた。


 一目でわかった。復活人ふっかつびとだ。


 要するに一度死んだ人のご遺体に別の人間が霊体を乗り移らせているのだ。


「よく見破ったな、貴様ら。誉めてやるよ」


 男はニヤリとして言い放った。


「観念しなさい!」


 私とさやかは印を結び、


「オンマリシエイソワカ」


と摩利支天真言を同時詠唱した。


「ぐげえ!」


 男は真言の力でご遺体から弾き飛ばされた。ご遺体はそのまま崩れるように床に倒れた。


「はあ!」


 さやかが間髪入れずお札を投げつけ、男の霊体を封印した。


「やった!」


 私達はハイタッチして喜び合った。


 


 その後、ご遺体は鑑識課が運び出し、復活の会の男の霊体を封印したお札は椿先生が特別なスーツケースに保管して運び出した。


 こうして、選挙絡みの事件は今度こそ解決したかに思われた。


 だが、何故か椿先生の顔は晴れやかではなかった。


「どうしたんだろう、椿先生?」


 私はさやかに尋ねた。さやかも首を傾げて、


「さあ。どうしたんだろう?」


 そして、中学生の私達には到底予測もできない事態が待ち受けていたのだ。


 


 翌日、学校が終わると、私はG県警の車に迎えに来られ、椿先生と一緒に県警本部に連れて行かれた。


 私達はそのまま本部長室まで案内された。


 そこには神妙な顔つきの兄貴とまゆ子さん、そして深刻な顔の本部長がいた。


 ふと脇を見ると、江原ッチとさやかも来ていた。


「椿先生、大変申し訳ないのですが、昨日封印した男の霊体を解放していただけませんか?」


 本部長が言った。


「え? どういう事ですか?」


 椿先生は驚いて尋ね返す。私はさやかや江原ッチと顔を見合わせた。


「荒船氏側が、選挙の特定の候補に県警が加担していいのかと抗議して来たのです」


 本部長も悔しそうだ。


「そういう事ですか。復活の会が考えそうな事ですね」


 椿先生は呆れたような顔で言った。本当はかなり怒りに燃えているはずだろうが。


「もし、あの男の霊体を解放しない場合には、今回の件を議会にはかり、徹底的に追及すると言われました」


 兄貴もまゆ子さんも拳を握りしめて本部長の話を聞いている。


 復活の会、どこまでやり方が汚いのよ!

 

 私は危うく叫びそうになった。


「許せないわ、復活の会」


 さやかが呟いた。私も同じ心境だ。


「椿先生、お気持ちはわかりますが、ここは荒船氏の要求を呑んでください。霊感課を存続させるためにも」


 本部長は懇願するような目で椿先生を見た。


「わかりました。今回は私達の作戦負けですね。次はこうならないように対策を考えましょう」


 椿先生はそう言って私達を見た。


 私とさやかと江原ッチは大きく頷いた。


 


 復活の会。今度は絶対に追いつめてやるんだから!

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