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あずささんはまゆ子さんのライバルなのよ!

 私は箕輪まどか。中学二年の霊能者だ。


 今日は寝て曜日(お父さん風に)。


 遅くまで寝ていたかったのだが、そうもいかない。


 美少女にはゆっくりする時間はないのだ。


「まどか、力丸君から電話よ」


 お母さんの声が階段の下から響いた。


 力丸君とは、クラスメートの力丸卓司君の事だ。


 日曜日なのにこんな朝早くからって思ったら、もうすでに十時を過ぎていた。


 リッキーは携帯電話を持っていないので、家電にかけて来る。


 面倒だ。早く携帯を持てと言おう。


 いや、それより私に電話して来るなと言った方が手っ取り早い?


 でもそれはあまりにもひどいだろう。


「まどか、何してるの? 早くしなさい」


 お母さんの声が怒気を帯びて来た。


 どきといっても、縄文や弥生ではない。


 え? 今時そんな駄洒落、酔っ払ったサラリーマンでも言わない?


 うるさいわよ!


 私は眠い目を擦りながら、階段を降りた。


「お電話代わりました」


 私は起き抜けのオジさんみたいな声で出た。


「あ。慶一郎君? 私、あずさよ」


 あまりにも酷い声なので、兄貴と間違われた。


 さっきお母さんは確かに力丸君て言ったよね? あずささんはリッキーのお姉さんだ。


「あれ、あずささんですか? ごめんなさい、私まどかです。てっきり卓司君からだと思ったので……」


 私は慌てて言った。するとあずささんは、


「ああ、まどかちゃんだったの? 違うの、最初に電話をかけたのは卓司なの。私がかけると慶一郎君に迷惑をかけるから」


 何だか意味がよくわからない。するとあずささんは私の様子を察したのか、


「ごめんね、まどかちゃん。事情を説明するね」


 あずささんの要件は私宛だった。


 何故最初に弟の卓司君が電話をかけたのかと言うと、電話に出るのが私とは限らないからなのだ。


 私のエロ兄貴には里見まゆ子さんという婚約者がいる。


 その手前、他の女性が箕輪家に電話すると、エロ兄貴に疑いがかかると思ったのだという。


 リッキーとは大違いの気遣いのできるお姉さんだ。


 あずささんの話はお得意様であった怪奇現象についてだった。


 そのお得意様というのが、現在G県下全域で行われている県議選の候補者なのだ。


 候補者の名前は朽木くつき泰蔵たいぞう氏。


 対立候補の三島健一氏と議席を争っている。


 朽木氏の息子の幸四郎さんは、大学受験を控えた高校三年生。


 もうすぐ本命の私立大の試験らしいのだが、毎晩妙な夢に悩まされているのだそうだ。


「その夢って、どんな夢なんですか?」


 すっかり目が覚めた私は、あずささんに尋ねた。


「黒い影が枕元に立って、『受験に失敗しろ』って言うんですって」


 あずささんは声を低くして臨場感を出して言ってくれた。


 思わずゾッとしてしまう。


「受験が近いからそんな夢を見てしまうだけなんじゃないですか?」


 私は言ってみた。するとあずささんは、


「最初はそう思ったらしいの。でも、毎日その夢を見るんですって。それももう十日も続いているそうなの」


「十日も?」


 只の夢にしては回数が多い気がする。


「ちょっと待ってくださいね」


 私は朽木幸四郎さんの気を探ってみた。


 確かに受験を目前にして緊張しているのが感じられたが、そんな変な夢を十日も続けて見てしまうほど追いつめられている様子はない。


 確かにあずささんの言う通り、妙だ。


「わかりました。兄に言って正式に霊感課で調査してみます」


 私はお母さんが聞き耳を立てていないか探ってから言った。


「ありがとう、まどかちゃん」


 あずささんには後日報告すると言って電話を切った。


 あれ? あずささん、何だかすごく親身になっている気を出している。


 おかしいなと思ったら、幸四郎さんのお兄さんが兄貴やあずささんと同級生だ。


 あずささん、そのお兄さんといい感じみたいだ。


 これはエロ兄貴には伏せておこう。


 やる気をなくしそうだから。


 


 早速私は兄貴の携帯に連絡した。


「何だ?」


 休日出勤をしているので、兄貴は不機嫌そうな声で出た。


 私はかい摘んで事情を説明した。


「そうか、わかった。すぐに迎えに行くから、サッサと食って出すもん出して待ってろ」


 酷い事を言われた。


 可愛い妹に言う台詞ではない。


「お兄ちゃん、まゆ子さんにあの事ばらすよ」


「ひ!」


 兄貴の顔が引きつったのがわかった。


 


 私は迎えに来たパトカーに乗り、G県警に行った。


 そして霊感課のフロアで改めて事情を説明する。


「そうか、力丸さんの頼みか。優先して処理しよう」


 兄貴はニヤけ顔で言う。後ろでまゆ子さんが闘気を出しているのに気づいていない。


 バカ兄貴め。


 あずささんにはいい人がいるのよ、と教えてあげたい。


 でもそうするとやる気をなくすからできない。


 私はまゆ子さんに、


「あずささんには好きな人がいますから心配しないで」


と耳打ちした。するとまゆ子さんは顔を赤くして、


「や、やだ、まどかちゃん、別に私、何も言ってないわよ」


ととぼけた。


 いやいや、さっき世紀末霸王も逃げ出すような闘気を出していたじゃないですかと言いたかったが、まあいいや。


「椿先生にも来てもらおう」


 更に嬉しそうに言う兄貴。もう救いがたい阿呆だ。


 またまゆ子さんの闘気が凄まじくなる。


 一度痛い目に遭った方がいいと妹ながら思った。


 実はこの時、現場に行けばすぐに解決すると思っていたのだが、そうは問屋が卸さない展開になるとはまさしく夢にも思わないまどかだった。

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