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久しぶりに実家に帰ったのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。


 学校が冬休みに入り、例の復活の会も鳴りを潜めたので、私と親友の綾小路さやかは、一旦自分の家に戻る事になった。


「実家に帰らせていただきます」


 私は、クスクス笑いながら、久しぶりに自分の家に戻れた彼氏の江原耕司君に行った。


「まどかりん、そんな怖い事、笑顔で言わないでよ」


 江原ッチは顔を引きつらせて言った。


「バカみたい」


 さやかは冷めた目で私達を見ていた。


「休み中、いっぱいデートしようね、江原ッチ」


 私は門の外まで見送りに来てくれた江原ッチに言った。


「じゃあ、車を出しますよ、まどかさん、さやかさん」


 江原ッチのお父さんの雅功まさとしさんが運転席で言う。


「はい」


 後部座席の私とさやかは見事にハモって応じた。


 まずはさやかの家へと向かう。


 そう言えば、さやかの家には行った事がなかったのを思い出した。


「デートなら、ダブルデートにしようよ」


 さやかがまた心を読んで言って来る。私は苦笑いして、


「私はいいけど、マッキーが気まずくない?」


 マッキーとは私の元彼の牧野徹君の事。今はさやかの彼だ。


「大丈夫。今は私にメロメロで、貴女の事なんか、ミジンコほども気にかけてないから」


 さやかは得意そうな顔で言った。ちょっとムカつくけど、こういう子だから何も言い返さない。


「何か言いなさいよ、そのために言ったんだから」


「はいはい」


 そう言い合いながら、大笑いしてしまう。


 ちょっと前まで考えられなかったくらい、私とさやかは仲良しになった。


 


 やがて、さやかの家の前に着いた。


 お父さんが亡くなっている事を知っていたから、お母さんと苦労しているのかと思ったら、さすが名字が綾小路だけあって、家は私の家よりずっと大きかった。


 ちょっとだけ悔しいまどかだった。


 というのは冗談だけど。


「じゃあね。電話するね」


「うん」


 さやかは見えなくなるまで手を振ってくれた。


 私も振り返した。


「まどかさん、休み中くらいは、復活の会の事や霊感課の事は忘れて、普通の中学生として、耕司と仲良くしてください」


 雅功さんがルームミラー越しに言ってくれた。


「はい」


 お父さん、と言いたかったが、何となくわざとらしい気がしたので、やめておいた。


「この前、西園寺さんのところに行って来たのですが、あちらも事件続きで大変のようです。瑠希弥るきやさんに戻ってもらって正解でした」


 どうやら、蘭子お姉さんは、小松崎瑠希弥さんに助けてもらっているようだ。


 瑠希弥さんの感応力は、江原ッチのお母さんの菜摘さんを上回るらしい。


 その上、霊媒師としての素質も飛び抜けているので、蘭子お姉さんには欠かせないパートナーだという。


「最初は椿さんに西園寺さんと合流してもらおうかと思ったのですが、瑠希弥さんの西園寺さんに対する思いを考えると、それも酷かと思って、椿さんにこちらに来てもらったのです」


 雅功さんの話が驚きだった。そんな事情があったのか。


 瑠希弥さんて、やっぱり蘭子お姉さんの事を好きなのかな? 


 二人が再会して抱き合っているところを見た時、そんな気がした事もあったけど。


「もしかして、椿先生がこちらに来たのは、あの……」


 言いかけてやめた。それは椿先生の個人的な話だからだ。すると雅功さんは苦笑いして、


「椿さんが私に好意を寄せてくださっているのはわかっています。それは貴方に隙があるからだと、菜摘に叱られましたが」


「そうなんですか」


 おお! さり気なくお題目。今日もいい事ありそうだ。


「若い女性に好意を寄せられて、それを邪魔だと思うほど、私も聖人君子ではありませんから、椿先生の思いを裏切らないようにしようと思っています」


 雅功さんは真顔で言った。


 椿先生、希望あるかも。いや、ないか……。


 ところで、聖人君子って何?


 そう言えば、椿先生もアパートに戻ったんだ。


 しかも、先生を送って行ったのは、菜摘さん。怖過ぎる!


 菜摘さんが椿先生を問い詰めたり、怒ったりする事はないだろうけど、椿先生、緊張しているだろうなあ。


 菜摘さんと二人きりなんて、どんな心境なのか想像もつかない。


「着きましたよ、まどかさん」


 そんな妄想を繰り広げているうちに、車は我が家の前に着いた。


 決して、お笑い芸人の前ではない事を改めて付記する。


「わざわざ送っていただいて、申し訳ありません」


 お母さんがいつになく念入りにお化粧をして、妙に着飾って出迎えてくれたのには引いた。


 さすが、あのエロ兄貴の産みの親だ。え? お前の親でもあるだろう、ですって?


 そうなのよね……。


「いえ、ご協力いただいたのですから、これくらいはさせてください、お母さん」


 雅功さんが車から降りてそう言うと、


美里みさとって呼んでください、雅功さん」


 お母さんは近過ぎるくらい顔を寄せて言った。恥ずかし過ぎる。


「そうですか」


 雅功さんは嫌な汗を掻いていた。


 


 冬休み早々、何だか波乱の予感のまどかだった。

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