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久しぶりに霊感課の仕事なのよ!

 私は箕輪まどか。中学二年の霊能者だ。


 この前、私の元彼で、親友の一人である綾小路さやかの今彼の牧野徹君が、神田原かんだはら明徹めいてつが教祖の復活の会の一味に襲撃された。


 私の今彼の江原耕司君や私とさやか、そしてクラスの副担任でもある椿直美先生の活躍で、一味を撃退した。


 椿先生と江原ッチのお父さんの雅功まさとしさんが結界を張ってくれたので、牧野家ももう安心だ。


「着いたわよ、まどか」


 さやかが言った。


「え?」


 私は久々の妄想タイムにドップリ嵌っていた。


 今日は日曜日(お父さんが言うところの寝て曜日)。


 それなのに、G県警刑事部霊感課の仕事なのだ。


「ほら、まどか、さっさと降りろ。今日はまだ仏さんは現場なんだぞ」


 いつもと違って凛々しい霊感課長のエロ兄貴。


 どうしてかと言うと、椿先生が同行しているから。


 恋人で課長補佐の里見まゆ子さんはムッとしている。


「はーい」


 どうして私だけ、と思ったが、椿先生がいるので、抗議するのは諦めた。


 椿先生は学校では国語の先生だけど(新情報よ)、霊感課の仕事の時と違って、ポヤンとした感じ。


 いつもは気を落ち着かせて、いざという時に一気に高められるようにしているらしい。


 だから、授業の時の椿先生しか知らない他の生徒達が除霊する椿先生を見たら、びっくりしてしまうだろう。


「こちらです」


 兄貴が気取って案内しようとしたが、椿先生はすでにまゆ子さんと現場へ歩き出していた。


 間抜けな兄貴の顔を見て、私は吹き出した。


 


 現場は、新興住宅地の一角、まだ土地を整地しただけで、工事は行われていない場所。


 要するに更地ね。


 その更地の隅に捨てられていた大きなスーツケースの中に女性の遺体が入れられていたのだ。


 椿先生の提案で、遺体はそのままにされている。


 そして、現場の鑑識は一通り終わっている。


 私は、前にも言ったように霊は怖くないけど、遺体は怖い。


「拝見致します」


 椿先生はまゆ子さんとスーツケースに近づき、手を合わせた。


「まどかさんとさやかさんは、犯人の気を探ってください」


 椿先生が言った。


「はい」


 私とさやかは目配せして、付近に残っている犯人の気を探った。


「現場には遺留品の類いが一切ありません。髪の毛一本、繊維片一つないのです。どれほど注意して遺体を運んだとしても、そんな事は考えられません」


 まゆ子さんは厳しい表情で語った。


「そうですか」


 椿先生は遺体を霊視していたが、スッと立ち上がった。


「まどかさん、さやかさん、気を探っても無駄ですから中止してください」


 椿先生の言葉に、私達だけでなく、まゆ子さんも兄貴も驚いた。


「確かに犯人の気が全然感じられなかったけど……」


 さやかが言った。その通りだ。私も全く感じ取れなかった。


 最初は私の力不足だと思ったのだが、どうやら違うらしい。


「課長」


 椿先生が兄貴を見た。兄貴はキョトンとしたが、


「ああ、はい」


 多分、「課長」という肩書きに慣れていないのだろう。自分の事だと理解するのに時間がかかったようだ。


「犯人がわかりました」


「え?」


 兄貴はまゆ子さんと顔を見合わせた。意味がわからないようだ。


 それはそうだ。さっき先生は、


「気を探っても無駄です」


と言った。捜査は難航する。誰もがそう思う台詞だ。


 ところが、犯人がわかったと言われたら、からかわれていると思ってしまうだろう。


 兄貴がそう思わないのは、椿先生が類い稀な美貌と霊能力を兼ね備えているからに他ならない。


「どういう事でしょうか?」


 まゆ子さんは混乱した顔で先生に尋ねた。


 私とさやかも先生を見た。多分そうだろうと思う事はあったけど。


「犯人はこの人です」


 椿先生は遺体を見て言った。やっぱり!


「ええ!?」


 兄貴とまゆ子さんは更に混乱したようだ。


「まどかさん、さやかさん、不動金縛りの術です」


 椿先生が印を結んだ。


「はい!」


 私とさやかは同時に印を結ぶ。


「ナウマクサラバタタギャーテイビヤクサラバボッケイビヤクサラバタタラタセンダマカロシャダケンギャキギャキサラバビギナンウンタラタカンマン !」


 三人で同時詠唱した不動金縛りの術が、スーツケースの中の女性の遺体を縛った。


「……」


 何が起こっているのか見えていない兄貴とまゆ子さんは、端から見ると「バカップル」だった。


「ふおお!」


 遺体に潜んでいた霊体が雄叫びをあげる。


 この女性、復活人ふっかつびとだ。神田原明徹の「復活の会」の手によるものだ。


 要するに一度亡くなった人の身体に別の人間の霊体が乗り移り、身体を動かすのだ。


「このご遺体ごと、江原先生の道場に運んでいただけますか。ここで分離すると、ご近所に迷惑がかかりますから」


 椿先生はニコッとして兄貴に言った。


「ああ、はい」


 あまりの展開に、兄貴はいつものエロパワーを忘れ、ごく普通に返事をした。


 さすが、椿先生。兄貴のエロを封じてしまうなんて。


 まゆ子さんは未だに何が起こったのかわからない顔をしていた。


「復活の会、挑発しているようね」


 椿先生は私とさやかに小声で言った。


「今後は霊感課の活動と復活の会の調査は分割しましょう。まどかさんのお兄さんや里見さんに危険が及ぶかも知れないから」


「はい」


 兄貴に危険が及ぶのは別に構わないけど、まゆ子さんが危険なのは無視できない。


 また更に復活の会との関わりが深くなったと思うまどかだった。

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