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ちょっとだけ穏やかな日なのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。


 先日、学校が復活の会の教祖である神田原かんだはら明徹めいてつの弟の明正めいしょうに乗っ取られかけたが、椿直美先生の活躍でそれは阻止された。


 椿先生は校長先生に取り憑いていた明正の魂をお札に封じ込め、私の彼氏の江原耕司君のお父さんの雅功まさとしさんに渡した。


 雅功さんはそれをお師匠様に送った。


 多分、明正はお師匠様の力によって浄化されるのだろう。


 


 そして、朝。


 まだ私と綾小路さやかは、江原ッチの家に住んでいる。


 明正が封じられたとは言え、教祖の明徹はまだそのままだからだ。


「昨日は椿先生と一緒にお風呂に入っていろいろと勉強になったわ」


 布団を畳んで押し入れに入れながら、さやかが言った。


「あんたも一緒に入れば良かったのに」


 さやかは私を見て言う。私は苦笑いして、


「でもさあ、さやかだけでも落ち込みそうなのに、椿先生も一緒だと、もう立ち直れなくなりそうだから」


と応じた。するとさやかは、


「知らないの、まどか? 椿先生も、中学の時までスルペタだったんだよ」


「えええ!?」


 私は仰天した。あの巨乳は一体いつ育ち始めたというのか?


「椿先生も自分の胸が小さいのを気にして、いろいろ努力したんだって」


「そうなんですか」


 おお。また幸せになるお題目を唱えられたぞ。さやかの冷たい視線が痛いけど……。


「それから、巨乳マッサージも教えてもらったのよ」


 さやかはムフッと笑い、自分の胸をズンと持ち上げてみせた。


 心なしか、大きくなっている気がした。


「今日は私も一緒に入る!」


 私は言った。するとさやかは、


「残念ね。椿先生は今日から青森に出張よ」


「えええ?」


 巨乳が遠のいていく……。


「心配しないで、まどか。私がしっかり伝授されたから、それを覚えればいいよ」


「そうなんですか」


 もう一度お題目を唱えられるなんて、嬉しい! 何かいい事ありそう。


「バカみたい……」


 さやかに更に呆れられてしまった。


 さやかはちょっとだけそのマッサージを教えてくれた。


「リンパの流れを良くして、血行促進をすれば、大きくなるみたいよ」


「そうなんですか」


 私は本家より多めに言ってみた。


「教えるのやめるよ」


 さやかは冷たい目で言う。


「わかったよ、さやか。もう言わないから」


 私は大慌てで謝った。


 これで巨乳を手に入れれば、私はまさに無敵の美少女よ!


 え? その性格を一番に治せ、ですって? フンだ!


「あんた、誰と話してるのよ、まどか?」


 さやかが可哀想な子を見る目で私を見ていた。あああ……。




 マッサージをしたせいか、身体がぽかぽかして来て、食欲も増進し、ついでにお通じもあった。


 って、どうしても私を便秘キャラにしたいのね、作者は!


 私とさやかと江原ッチの妹さんの靖子ちゃんは身代わり地蔵を制服のポケットに入れ、邸を出た。


 門の前には、江原ッチとその親友の美輪幸治君、私の親友の近藤明菜が来ていた。


「おはよう!」


「おはよう!」


 先日とは違い、緊張感は薄い。


 雅功さんと菜摘さんも、


「明徹の気配はないから大丈夫」


と言っていたので、私達は安心して登校できそうだ。


 いつもと変わらないメンバーで、いつもと変わらない会話をかわす。


 こんな事がずっと続けられればいいのに。


 そう思ってしまう。


「どうしたの、まどかりん、元気ないね?」


 江原ッチが言ってくれた。すると明菜が、


「今日もお通じなかったの?」


ととんでもない事を言い出す。


「な、何言ってるのよ、明菜は!?」


 私は嫌な汗をいっぱい掻いて言い返した。


「みんな、先に行ってて。俺、まどかりんと話があるから」


 江原ッチが私の様子に気づいてそう言った。


「早く来いよ」


 美輪君は明菜と靖子ちゃんと一緒に歩いて行った。


「江原君、私も先に行くから、早く追いついてね」


 さやかはウィンクをして去って行く。全くもう!


 江原ッチはそんなさやかに手を振って答えてから、


「まどかりん、不安なの?」


 私は江原ッチを見上げて、


「ええ。こんな穏やかな日がずっと続けばいいのにって思って……」


 私は江原ッチの手を取って両手で包み込んだ。


「椿先生が昨日言ったの。私達霊能者は普通の生活を望んではいけないのかも知れませんって」


 もう泣きそうなくらい不安なのだ。


 椿先生とお風呂に入らなかったのは、その事もあったからなのだ。


 霊能者であるが故に、好きな人と普通に過ごせなかったり、友達と遊びに行けないのなら、もう堪えられないと思った。


「それは椿先生の覚悟だと思うよ。あの先生は、小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんと同郷で、そこをサヨカ会に襲撃された事があるから、余計そう思うんじゃないかな。でも、俺の両親みたいに、結婚して子供が産まれてっていう霊能者だっているよ」


 江原ッチは爽やかな笑顔で言った。


「それに、まどかりんは何があっても、俺が絶対に守るから。心配しないで」


「江原ッチ」


 私達は久しぶりにキスをした。長いキスだった。


「ありがとう、江原ッチ」


「う、うん」


 江原ッチは真っ赤になりながら、


「学校、遅れちゃうよ、まどかりん、じゃあね!」


と駆けて行った。私も駆け出す。


 今更そんな事をイジイジ考えてみても仕方がない。


 そうならないように最大限の努力をするんだ。


 


 穏やかな日に新たな決意を固めるまどかだった。

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