瑠希弥さんとお別れかもなのよ!
私は箕輪まどか。中学生の霊能者だ。
先日、某作者の策略で、天敵のメイドと遭遇してしまった。
いや、天敵ではない。
私の誤解だった。
御徒町樹里さんは、とっても素敵なお姉さんだった。
気絶した私を心配して、脈拍を計ってくれたり、体温を計測してくれたりした。
樹里さんは、旦那さんの杉下左京さんの話によると、看護師と介護士の資格を持ち、その他たくさんの資格を有する資格マニアなのだそうだ。
でも、決して西村知美ではない。若干、性格に共通点はあるが。
何しろ、私のお師匠様である小松崎瑠希弥さんをして、
「西園寺先生よりレベルが上です」
と言わしめたのだ。
今回、セリフがやたらに難しいのは、作者が私に舌を噛ませようとしているからだ。
え? 思い込みも大概にしろ、ですって? うるさいわね!
そんな訳で、「NGワードだ」とか言って、嫌うのはやめにした。
これからは、一日一度、
「そうなんですか」
を唱えようと思うまどかである。
変わり身が早過ぎるとか言わないでよ。
そんなある日、いつものように私の絶対彼氏の江原耕司君と下校デートをしている時の事。
「あ」
瑠希弥さんからメールが入った。
「瑠希弥さんから?」
嬉しそうに覗く江原ッチを一睨みし、私は携帯を開いた。
「西園寺先生が東京に戻ったと遠野泉進様からメールがありました」
遠野泉進て、山形の修験者のお爺ちゃんで、覗きが日課の人よね。
え? 違うの?
あの爺ちゃん、いつ瑠希弥さんとメル友になったんだ?
江原ッチより凄い女好きかも。
「まどかりん、酷い事言わないでよお」
江原ッチが言った。私はいつの間にか声に出していたようだ。
「アハハ」
笑って誤魔化した。
「え?」
続きを読んで、私はギクッとした。
「先生が長野県の宗教団体に狙われています。場合によっては、私も東京に行くかも知れません」
「えええ!?」
私より江原ッチの方が大声を出した。
「瑠希弥さんが、東京に行っちゃうの?」
涙ぐむ江原ッチを見て、私は呆れた。こいつ、懲りてないと。
だが、私も寂しさが込み上げて来た。
最初は、瑠希弥さんの魅力に嫉妬してしまい、江原ッチを盗られるのではと警戒した。
でも、瑠希弥さんは全然そんなつもりはなくて、自分を恥じたほどだ。
その瑠希弥さんが、蘭子お姉さんを助けるために東京へ行く。
これは私の思い過ごしかも知れないけど、瑠希弥さんが東京に行ったら、もうG県になんて戻って来てくれないかも知れない。
だって、G県は「影の薄い県」のトップ争いをしているほど知名度低いし、地下鉄もないし、空港もない。
瑠希弥さんが、「こんな県嫌だ」と逃げ出すのも無理はないのだ。
え? 違う? わかってるわよ。ボケたのよ。気づいてよ。
「まどかりん、瑠希弥さんと話をしよう。俺達も一緒に行くって」
江原ッチは久々に凛々しい顔で言ったが、鼻の下が伸びているので下心丸出しだ。
まあ、それは目を瞑ろう。今は瑠希弥さんと話がしたいのは、私も同じだから。
私達はデートを中断し、江原ッチの家に急いだ。
江原ッチの邸に着くと、瑠希弥さんが出迎えてくれた。
「待っていました」
瑠希弥さんは私達が来るのを予測していたようだ。
私達は、奥の道場で、江原ッチのご両親の雅功さんと菜摘さんを交え、瑠希弥さんと話をした。
「今度の敵はある意味では、サヨカ会以上ですね」
雅功さんが言った。菜摘さんが、
「瑠希弥さんは行かない方が良いでしょう」
すると瑠希弥さんは二人を見て、
「私の命は、西園寺先生と共にあります。行かせてください」
雅功さんと菜摘さんは顔を見合わせる。私と江原ッチもだ。
「今回の敵は、感応術を使うようです。瑠希弥さんには不向きです」
雅功さんが厳しい表情で言った。瑠希弥さんはビクッとした。
「しかも、教団の教祖は、若い女性に自分の子を産ませるため、あらゆる邪法を使うようです」
菜摘さんが付け加えた。それには私もギクッとした。
「瑠希弥さんは、淫術には耐性がない。行かせる訳にはいかないよ」
雅功さんは優しい目で瑠希弥さんを見る。
「でも……」
瑠希弥さんはそれでも食い下がろうとした。
「これは、西園寺さんの願いでもあります」
菜摘さんのその一言が、瑠希弥さんの頑なな思いを止めた。
「貴女はもうしばらくここで修行を続けてください。いつか、西園寺さんと共に戦うために」
雅功さんが更に言う。瑠希弥さんは目に涙をいっぱい浮かべて、
「はい」
と答えた。私は瑠希弥さんより先に泣いてしまった。
「まどかりん」
江原ッチが優しく後ろから抱きしめてくれた。
「瑠希弥さん、もうしばらく、私達をしごいてください」
私は涙を拭いながら言った。瑠希弥さんもポロッと一粒涙を流して、
「はい。共に励みましょう」
と応じてくれた。そして、私と瑠希弥さんは、抱き合って泣いてしまった。
それを羨ましそうに江原ッチが見ていたのを知らないまどかだった。




