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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
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恐怖体験をしたのよ!

 私は箕輪まどか。中学二年の美少女霊能者だ。


 もうそれでいいわ。私の負けよ……。


 


 先日、私の彼氏の江原耕司君とクラスメートの柳原まりさんが私を賭けて対決した。


 結果は、小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんの一人勝ちだった。


 え? 違うの?


 何しろ、江原ッチは瑠希弥さんに助けられて大喜びだし、柳原さんはターゲットを瑠希弥さんに変更するし。


 何だか、私は柳原さんにもてあそばれた気分だ。


 


「ふう」


 暑さと期末テストの結果とで、フラフラしている私。


「溜息吐いても、何もいい事ないよ、まどか」


 親友の近藤明菜が言う。それはわかっているけど、出てしまう。


「元気出せよ、箕輪。可愛い顔が台なしだぞ」


 肉屋のリッキーが言う。冗談なのだろうけど、笑えない。


「そうですよ、まどかお姉さん。お兄ちゃんが見たら、悲しみますよ」


 江原ッチの妹さんで、リッキーの彼女という奇特な女の子、靖子ちゃんが言ってくれた。


「そうね」


 何とか笑顔になれた私。その時、携帯が鳴った。


 このスチャラカな着メロは、エロ兄貴が勝手に登録したものだ。


「何よ、お兄ちゃん?」


 私は恥ずかしくて素早く電話に出た。明菜達がクスクス笑っている。


「おう、今日はいい事があったから、みんなにご馳走してあげようと思ってさ。H和町のH嶋屋に四時に集合な」


「は?」


 それだけ言うと、兄貴はサッサと通話を切ってしまった。


 H嶋屋? 確か、G県名物焼きまんじゅうの名店だ。


 どういう風の吹き回し? 世界が滅びる前兆?


 取り敢えず、私は明菜達にその事を告げた。


「美輪君も呼んでいいかな?」


 明菜が尋ねる。私はあのメイドに負けない笑顔で、


「もちのろんよ」


と言った。一瞬、周りが凍りついた。お父さん直伝のギャグは不発に終わった。


 こうなったら、兄貴への日頃の恨みを晴らしてやろう。


 たくさんみんなを呼んで、兄貴にいっぱい払わせてあげるんだから。


 私は江原ッチに連絡した。


「瑠希弥さんも誘っていいかな?」


 江原ッチがすかさず訊いて来る。


「誘ってもいいけど、一緒に来るのは許しません」


 私は先手を取った。


「ううう」


 電話の向こうで江原ッチのうめき声が聞こえた。


「柳原さんも呼んでいいですか?」


 靖子ちゃんが目をキラキラさせて言う。途端に蒼ざめるリッキー。


「いいわよ。みんなで食べた方が、きっと美味しいし、楽しいから」


 私は快諾した。明菜は顔には出さないが、嬉しそうだ。


 こいつ、美輪君と柳原さんで二股かける気?


「あ」


 しかし、大変な事に気づく。


「柳原さんの連絡先を知らない」


 そう。誰も聞いていないのだ。ところが、


「俺、知ってるよ」


 あまり乗り気でないリッキーが渋々口を開いた。


「さっすがリッキー! 大好き!」


 靖子ちゃんは大喜びだが、リッキーは「大好き」と言われても手放しで喜べないみたいだ。


 そしてしばらく、靖子ちゃんと明菜で、どちらが柳原さんに連絡するかを巡って激論があったが、


「連絡しといたよ」


とあっさりリッキーに言われ、二人は項垂れた。


 こうして、総勢八人が参加する事になった焼きまんじゅう会。


 兄貴の泣き顔が目に浮かび、私は悪い魔女のようにヒッヒッヒと笑った。


 


 途中、いつものコンビニで江原ッチと柳原さん、美輪君と落ち合い、瑠希弥さん以外が揃った。


「江原君とは、これからもライバルだね」


 柳原さんが爽やかな顔で言う。すると何故か江原ッチは酷く慌てて、


「あ、いや、そんな事はないと思うけど……」


 しきりに私を気にしながら話す江原ッチを見て、二人の間にどんな会話があったのか、推理できた。


「江原耕司君、後でゆっくりお話しましょう」


「ひいい!」


 江原ッチは蒼ざめていた。


 


 私達はH嶋屋に到着し、兄貴を待つ。まだ三時四十分だけど、かまわない。


「さあ、今日は私の兄貴の奢りだから、思う存分食べてね」


「はーい!」


 みんなは気持ちのいい返事をしてくれた。


 柳原さんを挟んで座る靖子ちゃんと明菜。その二人の隣に、ションボリして座るリッキーと美輪君。


 私と江原ッチは固い絆でしっかり並んで座る。


「いらっしゃいませ」


 その時、宮川さんと同年代くらいの男の人と瑠希弥さんと同年代くらいの女性が入って来た。


 女性は妊娠しているらしく、ゆったりした服を着ている。


 歩き方も妊婦さんぽい。


 でも、奇麗な人だ。笑顔も素敵。誰だろう? 何故か、知っているような気がするのだけど。


「おお!」


 リッキーも美輪君も、そして江原ッチまでもがその女性を見て鼻の下を伸ばしている。


 全く、男って奴は!


「江原耕司君、後でお話があります」


 本日二度目。江原ッチは焦りまくっている。その時だった。


「そうなんですか」


「い!」


 おお! NGワード。その女性がNGワードを言った。思わず叫んでしまった。


 他の誰に言われるのより、衝撃が大きい。


 どうして?


「あ!」


 連れの男の人が入って来た瑠希弥さんに気づき、デレッとしている。


 本当に、男って奴は!


「間に合いましたね」


 今度は瑠希弥さんにデレデレする男共。もう!


 ふとさっきの女性を見ると、男の人に焼きまんじゅうをアーンしてあげている。


 親子かと思ったけど、どうやら夫婦のようだ。


「あの人、子供みたい」


 明菜がクスクス笑う。靖子ちゃんも釣られて笑っている。


「遅れちゃったな」


 そこへようやく兄貴が、何とG県警鑑識課最古参でロリコン疑惑の宮川さんと共に現れた。ギクッとしてしまう。


「遅いよ、お兄ちゃん! 私達、お金持ってないんだからね」


 私はすかさず文句を言った。すると兄貴は私の言葉をまるっきり無視して、


「あ」


と妊婦さんに近づく。あんた、ホントに見境ないな、と言おうとした時だった。


「奇遇ですね、御徒町さん。お父さんとご旅行ですか?」


 御徒町さん? まさか!?


「誰がお父さんだ!」


 旦那さんは当然怒り心頭だ。実際、兄貴は失礼過ぎる。


「いえ、左京さんは夫です」


「夫?」


 女性の言葉に兄貴はクラッとしたみたいだ。バカ兄貴め。しかし、立ち直りも早いのが兄貴の兄貴たる所以ゆえんだ。


「おい、まどか、この女性がお前の大好きな御徒町樹里さんだぞ」


 その言葉に私は衝撃を受けた。


「ええ!?」


 江原ッチ達が女性に駆け寄るのを見たのが最後。私はそのまま気絶してしまった。


 みんなはその女性、御徒町樹里さんにサインをもらい、握手をしてもらい、楽しく過ごしたらしい。


 ああ。まさか、本物に出会うなんて……。


 作者の悪巧みにしてやられたまどかだった。

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