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美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理  作者: 神村 律子
小松崎瑠希弥さんと一緒なのよ!
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瑠希弥さんと捜査に協力するのよ!

 私は箕輪まどか。中学生の霊能者。そして人もうらやむ美少女である。


 だから、ノーコメントだって言ってるでしょ!


 いい加減、諦めなさいよね。


 


 今日は土曜日。


 久しぶりにエロ兄貴の仕事の手伝いだ。


 しかも、今日は何故か、私のお師匠様である小松崎こまつざき瑠希弥るきやさんも一緒。


 よく兄貴の恋人の里見まゆ子さんが許したなあと思ったら、G県警の上層部の関係者が事件の被害者で、私だけだと心もとないので、瑠希弥さんを呼んだのだという。


 多分兄貴の作り話だ。だから悔しくない。


 兄貴は、小倉冬子さんが幼馴染の濱口わたるさんと結婚して北海道に行ってしまってから、様子がおかしいのだ。


 日本中の美人は自分の虜だと思っている節があり、一度脳を調べてもらった方がいいと思う。


 兄貴の裏工作はそれだけではない。


 まゆ子さんは研修のため、沖縄に行っているのだ。


 警察学校時代の友達が石垣島にいて、その友達に頼んで研修を組んでもらったらしい。


 何も知らないまゆ子さんは、兄貴の手回しの良さに感激し、嬉しそうに出かけた。


 さすがのエロ兄貴も、まゆ子さんの笑顔には胸が痛んだだろう。


 と思ったら!


 瑠希弥さんを助手席に乗せ、嬉しそうに車を運転している。


 どうしようもない奴だ。我が兄貴ながら、情けない。


「いやあ、瑠希弥さんが来てくれれば、もう事件は解決したようなものですよ」


 バカ丸出しの笑顔で言う兄貴。


「そうなんですか」


 いきなりNGワード炸裂の瑠希弥さん。


 それだけでなく、最近その性格まであのメイドに似て来たような気がして、心配だ。


 


 やがて、私達は現場に到着した。


 そこはM市郊外の田園地帯。


 G県の県庁所在地であるM市は、度重なる合併で巨大化し、山奥まで広がっている。


 その麓付近の元はH村と呼ばれた地区だ。


 何となく、「田舎の香水」の臭いが漂って来る。


 え? 今時「田舎の香水」なんて言わないですって? 


 うるさいわね! いいでしょ、別に!


「こっちです」


 兄貴は瑠希弥さんの手を取り、道案内をする。


 私は何か言おうと思ったが、瑠希弥さんが嫌がっていないので、口をつぐんだ。


 まさかとは思うけど、瑠希弥さん、兄貴に「ほの字」?


 そこ! また「死語の世界」とか言わないでよね!


 殺人事件が起こったのは、水田に水を引き込むための水門を管理している事務所の一角にある水門の開閉をするモーターがある建物だ。


 その中で、事務所の作業員の人が首を絞められて殺されていたのだ。


 別に霊視するような事件じゃないと思うんだけど。


 あれ? 変だな。どういう事だろう?


 私は思わず瑠希弥さんを見上げた。瑠希弥さんも私を見た。


「気づきましたか、まどかさん?」


 瑠希弥さんはニコッとして言った。


「おお!」


 その笑顔に兄貴が歓声をあげる。バカ兄貴め!


「はい。私達は試されたって事ですよね」


 私は兄貴を睨みつける。要するに殺人事件なんて起こっていないのだ。当然、霊もいない。


「な、何だよ、その目は?」


 兄貴はビクッとして私を見た。妙だ。兄貴からは何も感じられない。


 兄貴は何も知らないのか。下っ端だから、そんなものか。


「ほう。どうやら、我々の意図を感じ取ってくださったようですね、お二人共」


 そう言って現れたのは、確かG県警の本部長。そしてその後ろで揉み手しているのは、鑑識課長だ。


「さすが、君が見込んだお二人だね、箕輪君」


 本部長は兄貴を見て言う。


「は?」


 兄貴はポカンとしている。すると鑑識課長が、


「本部長、箕輪には何も伝えていないのです。妙な先入観を抱かれないために」


「なるほど」


 本部長は瑠希弥さんと私を見てニッとした。


「どういう事でしょうか? 何となくは想像がつきますが」


 瑠希弥さんが笑顔を封印して尋ねる。おお! 凛々しい顔の瑠希弥さん、素敵!


 江原ッチが見たら、鼻血の海ができてるな。


 兄貴もどうやら鼻血が出たらしく、慌てて背を向けた。


「我がG県警は、刑事部に正式に霊感課を作る方針で動いているのです。是非、お二人にはご協力を賜りたい」


 本部長はにこやかな顔で説明してくれた。


「そうなんですか」


 本日二度目の瑠希弥師匠のNGワード。倒れそうになった。


 


 本部長は帰りは県警の高級車に同乗させてくれた。


 兄貴は鑑識課長と二人でドライブだ。フフフ、正義は勝つのよ。


「昨今の事件の凶悪化、巧妙化により、G県内の犯人検挙率は驚くほど低下しています。それに歯止めをかけるために、貴女方のお力をお借りしたいのです」


 本部長は後部座席に両手に花状態で乗り、話をしている。


 え? お前は花じゃないですって? う、うるさいわね!


「科学だけでは人間は計れない。そう思っているのです」


 本部長は、私の気のせいかも知れないけど、瑠希弥さんばかり見ている。


 まあ、仕方ないけどね。兄貴みたいにならないだけ、本部長は凄いと思うし。


「わかりました。微力ながら、協力させていただきます。ね、まどかさん?」


 瑠希弥さんが私を見て言う。私は笑顔全開で、


「もちろんです」


と返した。


 私達はそのまま県警まで行き、制服を貸与された。


 むむむ。


 本当に本部長は、私達の力が借りたいのだろうか?


 瑠希弥さんが貸与された制服は、女性警官のものとほぼ同じ。


 でも、超ミニスカートで何だかエロい。


 私の制服も、エロくはないけど、非常に派手派手な色合い。


 赤に金の刺繍つき。音楽隊の制服の使い回しじゃないの、と一瞬思ったけど、生地は新しい。


 こんな格好で捜査に協力するのは恥ずかしいぞ。


「似合ってますよ、まどかさん」


 屈託のない笑顔で瑠希弥さんに言われると、


「そうですか?」


とその気になる。


「うーん、予想以上のできですな」


 私達を見る本部長は、只のエロオヤジにしか見えない。


 


 本当に大丈夫なのだろうかと不安になるまどかだった。

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