魔物
2023/8/1 ライトの念話の表現を間違えていたので統一しました。
『本体!闇属性の2人、近藤貴志と平野未来を見つけたよ』
おぉ!行方が分からなかった2人を発見したみたいです!さすがイト!
って、何だか自画自賛みたいで恥ずかしいですね…。いや…『みたい』じゃないのか…。
(2人は一緒にいたの?)
『バラバラだよ。近藤君はすぐに見つけたんだけど、買い物してただけだったからそのまま平野さんを探してた』
(そうなんだ?平野さんは何処にいたの?)
『それがさ…レイオスにいたよ…』
(え?なんで!?)
『さぁ?まだそこまでは…』
何でアクル王国から出てビオス王国に…。自分の意思な訳ないよね…アクル王国は出してくれないだろうし…。
(ちなみに、平野さんの様子はどう?)
『うーん…何だか鬼気迫ってる感じで怖い…』
(そっか…。じゃあ平野さん中心に様子を見てて。エイルードに戻ったらこっちから連絡するよ。よろしく!)
『了解!じゃあまた!』
アクル王国がまた怪しい動きを始めましたね。そろそろ本格的にクラスメイトの説得方法を考えないと…。勇者パーティは特に難しそうだけどどうにかしなきゃ…。
僕は隼人にムカついてる。でも、殺したいとか死ねば良いとかは考えてないんだ。日本に帰ったら正面から向き合って話し合いたいと思います。
まぁ…日本に帰るまでは、クラスの為に大変な思いをしてもらおうと考えてますけどね…。
おっと、リルが心配そうに僕を見てます。
「トール、どうしたの?」
「行方が分からなくなってたクラスメイトが見つかったみたい」
「わぁ!良かったね!」
リルがニカっと笑いました。僕はリルの頭をポンポンと撫でます。
「ありがとう!じゃあ…木登りしてから里に戻ろっか!」
「うん!」
僕達は横穴を出てから世界樹を登ってみました。
ディートは、リルがフェンリルだってことを知っています。リュートさんから教えられたらしいです。
と言う事で、リルは本来の姿になって世界樹を駆け登りました。
「わぁ!たかーい!!」
「ぎゃー!世界樹様に爪を!うわぁ!枝がぁ!!」
リルが爪を突き立てたり、細目の枝に乗って折っちゃったりする度にディートが絶叫しています…。細目の枝って言っても普通の木より太いんだけどね…。
ディートごめん…。まぁ世界樹の許可は得てるから許して…。
せっかくなので、リルの折った枝ごと世界樹の葉を回収させていただきました!枝は僕の魔道具素材として使わせてもらおうと思います!
それから里に戻ると、世界樹から許可を得た事と葉を回収した事についてリュートさんに伝えました。
リュートさんも納得してくれたので代金の話をしようとしたのですが……リュートさんから『無償で持っていけば良い』と言われてしまいました。
理由としては『世界樹はエルフの物では無い』『世界樹当人が良いと言ってる』と言う事で、お金を渡されても困ると言うんです。
確かに彼らの理屈だとそうなりますよね…。ここでお金を払うのも物扱いになって失礼か…。
ここは、いったん僕の心の中で借りにしておく事にしました。
では、目的も達成できたのでエイルードに戻りましょう!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ライト様。何だか町民の様子がおかしいです…」
「確かにそうだな」
町に戻ってみると、何だか騒がしくなっています。俺は町行く人を捕まえて聞いてみました。
「何だか騒がしいが、どうした?」
「ア…アクル王国の兵士が来たらしい!早く逃げねーと!」
「駐屯兵が戻ってきたのか?」
追い払われた駐屯兵が奪い返しに来たのかな?と思ったんだけど…。しかし、ディートが怪訝な表情をしています。
「駐屯兵は王都へ向かった事を確認済みだ。そいつらではないだろう」
「では、王都からの増援か?」
「王都から来たんだとすると随分と速い…。駐屯兵を追い出す前に出発してるはずだ」
時空属性があればその限りでは無いな…。イザベラ王女が絡んでるのかもしれない。
しかし、そんな話をしていると近くにいた別の町人が情報連携してくれました。
「奴ら何かを探してるみたいだ…魔物がどうとか言っていた…」
おや…。もしかしたら町の占拠とは別の目的で動いてるのかもしれないですね…。
「ロンド殿。ライト。宿は取ってあるんだろう?情報収集してくる。宿で待機していてくれ」
「分かりました。宿は豚の尻尾亭です」
「了解だ。では行ってくる」
「ディート。気をつけてな」
「あぁ」
ディートは町の中央に向かって走って行きました。なかなか速いです。
「ライト様。宿に行きましょう」
「そうだな。分かった」
ディートが心配ですが、ひとまず信じて待ってみましょう。
俺達は予約していた宿に向かい、里に向かう時に置いていったメンバーと合流しました。
「ライト様。これがライト様の部屋の鍵になります」
「ありがとう。では俺は部屋にいる。何かあれば呼んでくれ」
「承知致しました」
俺は部屋に入るとイトに念話を送りました。平野さんの状況が気になるし約束でしたからね!
『イト、聞こえる?』
『うん。大丈夫だよ』
『平野さんはどんな感じだった?』
『えっと…それがね…』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ここから数時間前のイト視点になります。
ライトがエイルードの町に戻る数時間前。世界樹の祭壇から出た頃、イトは平野さんの部屋を探していました。
「さて、本体にも言われたし平野さんの様子を確認しないとだね。平野さんは何処かな…。いた。騎士と話してる」
僕は光学迷彩状態で空を飛び、窓から宿の部屋を覗いています…。変態じゃないよ?仕方なくやってるんだよ?完全に犯罪者スタイルだけど…。
平野さんは何だか揉めてるっぽいと言うか…何かを騎士に訴えています。更に変質者っぽいけど耳を当てて聞いてみましょう。
「本当に貰えるんだよね!?」
「当然だ。王女様は嘘をつかぬ」
えー。嘘だらけだと思うけど…。
「約束を果たせば元の世界に帰る事ができよう。……まぁ、お前だけだがな」
「うぅ……」
「神話級の秘宝なのだ。1つでもある事を奇跡だと思え。仲間の事は諦めるんだな」
「別に仲間なんかじゃない…」
「神話級の秘宝と交換なのだから、しっかり働いて貰わねば困るぞ?あの魔物は常に制御しておけ」
平野さんが何だか納得していない顔をしています。
「あんな事で…何か役に立ってるの?」
「あの魔物が出す瘴気によって大事なものが隠せている。悪国からの妨害工作を防げている。更に魔物を強化できている。十分に役に立っているぞ」
「そう…。だったら絶対に約束を守ってよ?」
「くどいな…。分かっておる…」
そう言うと、騎士は部屋から出ていきました。1人残った平野さんは、しゃがみ込んで床を見つめています。
「みんな信用できない…少しでも備えを増やさなきゃ…」
すると、平野さんは部屋中に魔物の死体を並べ始めました。更に、ナイフを出して指先を刺すと、ブツブツと何かを呟きながら指から滴る血を使って紙に文字を書いていきます。
呪符とか呪具とかを作ってるぽいかな…。
「こっわ…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ここから通常時間のトール視点に戻ります。
『って感じだったよ…』
(ホラー映画みたいだね…)
でも、秘宝って何だろう?平野さんはアクル王国と取引をしたみたいだけど…本当に帰る方法なのかな?
平野さんは先行的にアクル王国から引き離した方が良いかもしれません。お金も十分にできたから本当は全員そうしたいんだけど…ほぼ信じてくれないと思うので段階的にやって実績を積まないとだね…。
平野さん、説得に応じてくれるかなぁ…。
(イト、ありがとう。怖いかもしれないけど引き続きよろしく!)
『仕方ない…頑張るよ!』
そしてイトとの念話が終わると、ちょうど良くロンドから声が掛かりました。
「ライト様。ディート殿の遣いが来ました。急ぎ中央広場に来て欲しいそうです」
「分かった。リルと行ってくる。ロンドはここで待機しててくれ」
「承知しました。お気をつけて」
俺は西門から東門へ行く時に中央広場を通ったので、ゲートを使って一瞬で向かう事ができます。
「リル。行くよ」
「うん!」
俺とリルがゲートから出ると、中央広場には人が集まっていました。
「町に侵入した魔物をトレイラル伯爵家の嫡男であらせられるグリード様が捕らえたぞー!!」
何だその説明口調は…。どうやら周囲に喧伝する為に言ってるみたいです…。
広場の中心には兵士が100人ほど整列していて、その周りを群衆が囲んでいます。
「これよりグリード様が捕らえた魔物の処刑を執り行う!!」
グリード様とやらの権威を見せたいみたいだけど…無抵抗の魔物を殺した所で何になるって言うんだろう…。正直、気分良くはないですね…。
すると、兵士の中から身なりの良い男が出てきました。こいつがグリードみたいです。グリードはずた袋の様に見える何かを引きずっています。
「はははは!今から僕がこの魔物の首を刎ねてやる!お前達には良い見せ物だろう!」
そして俺は、グリードが引きずっていたものが何なのか…やっと理解できました…。
「ふざけるなよ…。まさかそれが魔物だと言うのか?」
グリードは、引きずっていたうさぎ耳の少女を群衆の前に放り投げました…。
ムカムカされてる方…続きは夜までお待ちください。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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