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魔法修行

2023/02/25 間を少し見直しました。

2023/06/01 誤字を修正しました。

 『ゴブリンでも10日で覚える魔法入門』か…。この世界の本にしてはふざけたタイトルだけど、なんかしっくり来た。


「くくくくっ。楽しみで笑いが込み上げて来ちゃうね…」


 さっそく内容を読んでみようと、僕は本を開いた。


『最初に言っておくな。この本は常識とか度外視して俺なりの意見で書いてるから。まぁ信じられないなら普通の先生に教えてもらえ。』


 おぉ?いきなり大丈夫か?初手でヤバイ本を引いてしまったか?僕はかなり不安になった…。


『一応魔法を使えない奴向けに書いてるが、使える奴でも根本が変わるかもな。まぁ読んで損はさせないと思うぜ。』


 とりあえず、読み進めてみよう…。


『まず、基礎の基礎だが。魔法で重要なのはイメージと慣れだ。』

『この世界にはアニメとか無いから、魔法が発動してる姿を俯瞰して映像的にイメージするのが苦手みたいだな。お前もそうか?』

『この世界では詠唱が主流で、詠唱してる奴に聞いてみたら「逆巻く炎って言ってるんだから、炎が逆巻いてるんだろ?」とか言ってやがった。』


 ちょ…ちょっと待て!この世界?アニメ?この本を書いた奴は転移者か!?著者名を探してみる…が、見つからない。出版してる感じでもないし、個人的な物なのか…。

 仕方がない…続きを読もう。


『別に映像でも詠唱でも魔法は発動する。あくまでイメージする為の手法が違うって話だ。だから、イメージできるなら無詠唱で覚えていけ。詠唱なんて時間の無駄だしな。』

『あー、イメージって言葉だと正しく理解できてないかもしれねぇな。』

『ただ思えば良いって話じゃない。思い込まないと駄目だ。その現象が発生するって、本気で認識してないといけないんだ。』


 なるほど…。想像だけで魔法が発動するって信じてなきゃいけないし、『こんな感じになるのかな?』くらいの思いで想像しても、魔法は発動しないのか。


『そこで重要になるのが慣れだ。詠唱に慣れてる奴が、戦闘中に意識替えて頑張って映像で思い込む……なんてやってたら死んじまう。』

『そうだな…日本語で考えてから英語に変換してる様じゃ駄目って感じだな。自然に英語で思考できないとって事だ。』

『だから…1度詠唱に慣れちまったら、無詠唱に切り替えるのは骨だぜ?出来なくは無いがな。だから最初から詠唱は覚えるな。映像イメージを母国語にするのがおすすめだ。』


 うおぉ、マジか…。これ、最初に普通の本を読んでたら終わってたかもしれない…。


『とは言っても、どういう事が出来るのかは知っておいた方が良いから色々な魔術本は読んでおけ。呪文は無視して内容説明や修得条件だけな。』

『過去に魔法考えた奴全員の発想力を漏れなく上回れって言われてもキツイだろ?』


 確かにそうだな…。後で他の魔術本も探してみよう。


『あと修得条件だが、発生させる事象によってはその系統の熟練度…まぁレベルだな。が、必要になる。』

『例えば氷を出すのは水属性なんだが、水属性レベル5になってないとできない。つまり、どんなに本気で鮮明にイメージしても、1レベルでは氷塊を飛ばす様な魔法は使えない。』

『ひとまず俺的オススメ魔法を乗せとくから、この順番で習得してみな。』


 そして、そこからは各属性のオススメ魔法が修得順に記載されていた。親切にも、魔法毎に注意点等も書かれている。例えば…。


『ファイアウォール:地面から炎を吹き上げさせる魔法で、横幅とか厚みは魔力次第だ。魔力制御を鍛えれば複雑な紋様も描けたりする。』

『燃焼範囲が広いから洞窟とかで味方がいる時には使うな。酸素消費が激しくて酸欠の危険がある。逆に言えば敵だけなら効果的だ。土魔法で密閉空間にしてやると更に効果絶大だぜ。』


 なかなか良い性格をしている…。

 更にページを読み進めて行くと、最後に意味深な一言と、その後ろに空白のページが続いていた。


『最後に、これは該当しない奴は無視してくれ。もし読んでるお前が全属性持ち(・・・・・)なら、この本に魔力を込めてみろ』


 該当…しちゃってますね…。魔力を込める…か。

 身体の中を巡る魔力は何となく実感できていた。目を瞑り、その魔力が本へと移動していくのをイメージする。


 僕の魔力が本に流れ込むと、本が光り出し、そして空白だったページに文字が浮かび上がる。


『マジか。お前も災難だったな。』

『ここからはお前に合わせて書いておくから、まぁ頭の片隅にでも置いておいてくれ。』


 え…。まさか全属性持ち限定の特別レッスン?これは助かる!


『まず1つ目だ。』

『一番重要な話なんだが、魔法の威力は魔力の強さによる。そして、お前の魔力は桁違いだ。』

『あー、勘違いするなよ?コレは良い話をしてる訳じゃない。初心者のお前は殺戮しか出来ない悲しい存在だって話だ。』


 ん?どういう事だ?僕は殺戮とかしたくないけど…。


『例えば、普通の魔術師なら対個人向けに使用する魔法があるとして、お前が使った場合は大量殺戮魔法になるだろう。』

『魔力を繊細に制御できない限り、お前の下限は大量殺戮だ。』


 うっそ…それは困る…。実質的に魔法が使えないのと同じじゃないか…。


『そうだなぁ…。目的が卵割りだとして、お前はそれをパワーショベルでやらなきゃいけないって感じだ。』

『ただただ卵を叩き潰したいんだったら気にする必要は無いが、そうじゃなければ最初はひたすら魔法制御を磨け。緻密な制御を覚えろ。』


 なるほど…これは確かに有難い教えだ。人がいる所で普通に魔法を教わってたら大被害だったな…。


『次に2つ目だ。』

『まぁこれはお前限定って話じゃないが、複合魔法について軽く書いておく。』

『一言で言えば、複数の属性を同時に発動するんだ。複数属性持ってる奴は少ないからな、一般向けには書かなかった。』

『9つの魔法適性のどれに該当するのか分からない現象ってあるだろ?そういうのが、実は複合魔法で実現できたりする。自然現象の再現みたいな感じだな。』

『例えば、俺はこの世界の奴で雷魔法を使ってる奴を見た事が無い。どの属性だと思う?』


えー…確か雷って…雲の中の氷がぶつかり合って発生するんじゃなかったっけ?


『正解は水属性と風属性の同時発動だ。但し、水属性は5レベル以上じゃないと駄目だけどな。』


水属性5レベルから氷が出せるって書いてたから、どうやら正解だったみたいだ。


『あ、因みに魔物は別な。あいつらは魔法じゃなくてスキルとして雷とか使ってくるから気を付けろ。』

『後は自分で色々試してみてくれ。』


 くっ…これは僕の学力が試されるな…。つまりは負け確定って事じゃないですか…。


『次に3つ目。これで最後だ。』

『もう称号は持ってるのか?まだ持ってないとしても、いずれ持つ事になるだろうから覚えておけ。』

『お前が持つ特別な称号は、自身のレベル上昇と共に色々なスキルを覚えていく。最低でも10レベルまでは上げておけ。おすすめは30だな。』

『30まで上げれば鑑定に対抗できるから、何をやるのも自由になるぜ。』


 自由かー。何て良い響きだ。それなら早く称号が欲しいな。


『魔法レベルと魔法系スキルはガンガン上がるだろうから、まぁ頑張れ。』

『あと、城の中の物は何でも持って行ってくれて構わない。何なら全部持ってってくれ。アイテムボックスがあるんだから余裕だろ?』

『それじゃあな。お前の未来に幸あらんことを。』


 パタンッ!


 最後まで読み終えた僕は、本を閉じた。ふぅ…。何てことだ……。


「アイテムボックスの存在…忘れてた……」


 時空属性の存在を隠してたし、自分で持ち歩かなきゃいけない物も無くて使う機会が無かったからな…。

 えっと、確か時空属性のオススメ魔法欄に記載があったな。僕は改めて本を開く。

 えっと、時空属性欄の先頭だな。


『アイテムボックス:厳密には魔法じゃなくてスキルだ。時空属性を持ってると、このスキルが発現する。』

『出現した闇に対象を近づければ収納され、出したい対象を考えれば出て来る。何が対象になるかは自分の意思だ。』

『時空属性のレベルが上がれば小から特大まで拡張するし、時間制御や発動距離も成長する。最終的には時間を早めたり、視界内のどこでも出せる。』

『容量だがレベルの他に魔力によっても変化する。魔力が強ければ小でも結構な広さだったりするな。』

『後は、魂を持つものは入れられない。魂がある生物かは、思考するかどうかって感じみたいだ。菌は魂が無いが、ハエは有るらしい。』


 へぇ…なかなかややこしいな…。慣れる為にも、さっそく使ってみるか…。

 僕は目の前にアイテムボックスが出て来るのをイメージする。


 ブォン……


 おぉ、僕の目の前に黒い空間が現われる。

 さて、じゃあ読んでみたい本を片っ端から入れてみよう!どれくらい入るかなぁ…

 タイトルを見て、気になった本を入れて行く。入れて行く…入れて行く……入れて………。


 全然…限界が…来ない……。面倒臭くなってきた……。

 そう言えば、出す時って対象を考えるんだよな…タイトルなんてほとんど覚えられてないけど…。

 試しに『ゴブリンでも10日で覚える魔法入門』を考えて、出ろ!と念じてみる。


 ポトッ…


『ゴブリンでも10日で覚える魔法入門』1冊が出てきた。


 もう1度アイテムボックスに入れて、次は『魔法に関する本よ出ろ!』と念じてみる。


ボトボトボトボト……


『ゴブリンでも10日で覚える魔法入門』を含む6冊が出てきた。


 これ…もしかして超便利じゃない?

 本全部入れたら、探したりしなくても条件に該当する物が選び取れるじゃん…。


 全部入るか分からないけど、選んで入れるの面倒だし……とりあえず突っ込んでみよう!!


…………。

………。

……。


 結論として…10万冊くらいあった本は全部入った。

 まだアイテムボックス(小)(・・・)なんですけど…。


「ふぅ…。では実践編…行ってみますか!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「よし!じゃあここら辺で魔法を使ってみよう!」


 僕は城の近くにある平原に来ていた。


「じゃあ本に書いてあった順番通りにやってみようかな」


 えっと、ウォーターボールか…。本来は30センチメートルくらいの水球を相手にぶつける魔法みたいだね。僕は、目の前に水球が生まれ、前方に飛んでいくのをイメージする。どうだっ!!

 そして僕の目の前に水球が生まれた。


「やった!発動したっ!はつど……はつ…は…。うわぁああああ!」


 水球がどんどん大きくなっていく。3メートル…4メートル…5メートル……。

 最終的に直径10メートル程の大きさとなった水球は、地面を削りながら前方の方へと飛んで行った。そして…大量の魔物が水球に巻き込まれたみたいだ……。

 うーわぁー…。なるほど……下限が大量虐殺…ね……。


 今やっと、本当の意味で本の内容を理解しました…。

 食べられたり何かに使えるかもしれないので、倒した魔物はひとまずアイテムボックスに回収する。

 うん…じゃあ気持ちを切り替えて…。


「よし!魔法制御を練習しよう!!」


 僕は目の前に水球が生まれるのをイメージする。但し、前方には飛ばさない。僕の前には、また10メートル程の水球が発生した。


 これを…小さく…ぐぅ…抑えるんだぁ…。ぐあぁ…これ…キツーい!


 ありがたい事に、いくら練習しても魔力が尽きる事は無かった。これを頑張らないと先に進まないので…僕は体力の限界が来るまで頑張る。

 しかし…今日の成果は7メートルが限界だった。


「しばらくは、ひたすらこの練習だなぁ…。その後は各属性を強めて、複合魔法とかも試して……やる事盛沢山だ」


 僕は1か月くらいはココで修行をする覚悟を決めた。


「さっき倒した魔物の中に食べられるのがいたから、帰ってご飯食べて寝よう…。リルにはお肉のお土産だな。さて、今日の成果は…っと」


 僕は無詠唱でステータスを表示する。


<ステータス>

■名前:高杉 透

■種族:人族

■性別:男

■年齢:16

■レベル:8

■魔法

 火:1

 水:3

 風:1

 土:1

 光:1

 闇:1

 聖:1

 時空:2

 無:1

■スキル

 刀術:1

 体術:5

 魔法感知:1

 魔法制御:3

 苦痛耐性:3

 アイテムボックス(小)

 自己再生

■称号:魔王


「あー、はいはい。まぁ何となく分かってましたとも。称号魔王ね……」


 自己再生か…これが称号で付いた最初のスキルっぽいな…。だとすると、僕が死なずに回復した理由がこれで、リルに介抱される前から魔王だったのかな……。


 やる事増えたなぁ…。30までレベル上げなきゃ…。そして………やっぱり双葉達の元に帰る訳にはいかなくなっちゃったなぁ……。


 僕は重い足取りで、リルの待つ城へと戻っていった。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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