エルフの里
「これから見るものは他言無用だ。誓えるか?」
「はい!大丈夫です!」
エルフの里に連れて行ってくれるという事で、東側の門から町の外に出ました。馬で移動すればすぐに着くらしいです。
という事で、みんなそれぞれの馬に乗って移動中なのですが、ディートからの確認にロンドが走りながら答えてました。
コクヨクは体格が違うから高さが合わなくて返事しづらいな…。
でも、里の場所とかバレたくないんでしょう…返事しない訳には行かないか…。
「こっちも大丈夫だ!」
「リルもいいよー!」
俺達の返事を聞いて、ディートは満足げに頷きました。
それにしても、周りは何も無い荒野です。『すぐに着く』と言える範囲には何も見えません。
ん…。何も…いや…何だか違和感があるな…。何だか、空間が歪んでる様な気がする…。
「ディート。正面だが、空間が歪んでないか?」
「!? 何だと…分かるのか?」
「ライト様。私には特に何も…」
ロンドには分からないみたいです。でも、ドーム状に歪んでると思うな…。
「たぶん、それが目的の場所だ。全く…なんて魔力感知をしてやがるんだ……」
あぁ。なるほど。魔法で里を隠してるのか…。でも、俺には隠しきれなかったみたいですね。
それからしばらく進むと、歪んでる場所の直前でディートが止まりました。ここまで来れば、俺には結界によって覆われているのが分かります。
そして、ディートが馬から降りて説明を始めました。
「ライトにはどう見えているのか分からないが、普通の人間には目の前に荒野が広がって見えているはずだ」
「あっ、はい。私には荒野に見えております…。違うんですか?」
「あぁ。実際は違う。認識阻害の結界に覆われているが、本当は森がある。この仮面を付けて前に進んでくれ」
ディートは、自分が着けていたのと同じ木製の仮面を渡して来ました。
「これは世界樹の表皮によって作られた仮面で、結界を通過する能力がある」
どうやら、この仮面を着けないと結界を通れない仕組みになってるみたいですね。でも…。
「俺はどうすれば良いんだ?」
「一時的に仮面を変える訳にはいかないか?駄目なら…試した事はないが、仮面の上に仮面を着けてみるとか?」
マスクonマスクは恥ずかし過ぎるだろ…。まぁ顔は隠れるんだし着け替えるかな…。
「分かった。着け変える。少し待ってくれ」
俺はコクヨクの陰に隠れてササッと仮面を着け変えました。戻ってみると、何だかロンドの目が泳いでます。
「ロンド。どうかしたのか?」
「あ…いえ…。ライト様の仮面は呪いか何かで外れないものと思い込んでました…」
呪いって…。でも、確かに誤解を与える様な事を言ったな…。
「あぁ…。初めて会った時に『訳ありで外せない』と言っていたな。正確に言うと、素顔を晒せないという意味だ」
「あ、そういう意味でしたか…。承知しました」
ロンドとそんな話をしていると、ディートがちょっとイライラした感じで話し掛けてきました。
「そろそろ森に進んでも良いか?」
「悪かった。大丈夫だ。馬はどうする?」
「仮面を着けた者が引けば一緒に入れる。では行くぞ」
俺達は結界を抜けて中に入りました。その瞬間、一面に緑が溢れます。そして、ずっと奥の方…中心辺りには、とてつもなく大きな木が聳え立っていました。
「な…急に森が…」
「わぁ!凄くおっきい木だー!」
ロンドとリルがとても驚いています。確かに、あんなに大きな木は地球では見たことも聞いたこともありません。
「ディート。里はどこら辺なんだ?」
「森の中心の方にある。付いてこい」
「分かった」
俺達はディートに導かれるまま、世界樹の麓に向かって歩き始めました。
…………。
………。
……。
「ここが我々の里だ。決して暴れるんじゃないぞ?特にライト」
エルフの里に辿り着くと、里のみんなは凄く不安そうな目でこっちを見て来ました。それにしても…全員が美男美女です…。
「大丈夫だ。そちらが襲いかかってきたりしなければな」
「それは、長老が会いたいと言っているのだから大丈夫だろう。では集会所へ案内する」
そして、注目を浴びながら里の中を歩いていくと、大きめの建物へと案内されました。
「長老を呼んでくる。適当に座って待っていてくれ」
「あぁ。よろしく頼む」
ディートは俺達に椅子を薦めると、長老を呼びに出て行きました。
ロンドと俺は椅子に座っているのですが、リルは窓に張り付いて外を見ています。
「おっきな木!登ってみたーい!」
「リル。怒られるから止めておこうな」
「えー。世界樹さん嫌なのかなー?」
「世界樹の気持ちもあるが、エルフ達がとても大事にしてるみたいだからな」
「そっかー」
世界樹の気持ち…。自分で言っておいて何だけど、世界樹の気持ちってあるのかな?
『バス。世界樹って意思があるの?』
『有るか無いかって言ったらあるっす!でも、人間ほどはっきりしてないし、理解するのは難しいと思うっすよ!』
『そっか。試しに聞いてみたいと思ったけど、無理そうかな』
『もし話すなら、精霊を経由した方が楽っす!』
『精霊?そんなのいるんだ?』
『いるっす!世界樹の側には樹の精霊であるドライアドがいるはずっすよ!』
『そっか。じゃあ機会があれば聞いてみようかな』
さすが世界樹。意思を持ってるみたいですね。
そうこうしていると、部屋の扉がノックされました。
「長老を連れて来た。入るぞ」
ディートの声を聞いたロンドは、急いで立ち上がると身だしなみを整えました。交渉は初対面が大事ですもんね!
そして、ディートと一緒に数人の男性が入ってきます。たぶん長老と護衛なんだと思いますが…全員が若くて誰が長老なんだか分かりません。人間で言うと全員30歳未満に見えます。
その中から、1人が前に出て来ました。
「私が長老のリュートと申します。この様な所までご足労頂きありがとうございます」
「ご丁寧にありがとうございます。私はビオス王国より準男爵位を与えられておりますボーン・ロンドと申します。本日はレイオスの領主であるアレク様の代理として参らせて頂きました。こちらの2人は私の護衛でライトとリルと申します」
「冒険者のライトだ」
「リルだよー!」
俺達の代表はロンドなんだが…リュートはロンドにあまり興味を示さず、リルの方に視線を向けています。
何だか随分と熱心にリルの事を見ているな…。
俺は嫌な予感がして、リュートを魔眼で確認してみました。
名前はリュート、種族はエルフ、年齢は…1285歳か…凄いな。スキルが……鑑定!?
ヤバい!リルは姿は人間になってるけど、ステータスは隠せてない!
俺は走ってリルとリュートの間に入ると、リュートに向かって声を荒げました。
「何のつもりだ!俺達へ敵対する意思と取るぞ!」
しかし、リュートはその場で膝をつき…平伏する姿勢になります。それを見たディートや護衛達もリュートに倣って平伏しました。
「いったい…どういうつもりだ?」
「申し訳ありません。どうしても確認させて頂きたかったのです…。しかし、確認が取れた今、我々はリル様に従います」
どういう事だかさっぱり分かりません…。とりあえず、リルがフェンリルだという事をバラすつもりは無さそうです。
ロンドは更に置いてけぼり状態で、キョトーンとしています。
「リル。どういう事だか分かるか?」
「わかんなーい!」
「…………やはりご記憶は…」
リルの反応を見て、リュートが悲しそうにしています。しかし、何かを思いついた表情をすると、リルに質問をしました。
「で…では、タケル様の事はご存知ありませんか?」
「タケル?それなら分かるよ!」
タケルって、ダグルール獣王国の建国を手助けしてた人だっけ?予想外にも、リルはタケルを知ってるみたいです。
そして…リルが指をさしました。その指先がさす方向にみんなの視線が集まります。
リルの指先は…明らかに俺をさしていました…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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