聖樹の守人
「お前達は…何者だ?何の目的でエイルードに来た?」
囲んでる気配の1人が姿を現して質問をしてきました。深くローブを纏って顔には木製っぽい仮面を付けていますが、声からすると男性みたいです。
他の囲んでる人達は姿を現すつもりがなさそうですね。
今回の仕入れ部隊のボスはロンドなので、商談はお任せしましょう。
「私はビオス王国の準男爵であるボーン・ロンドと申します。聖樹の守人の方々でしょうか?」
「貴族なのに…腰が低いのだな…」
ロンドが商人モードですね。状況に合わせた対応ができるのは、1人の大人として尊敬できます。
しかし、出てきた男は剣呑な空気に変わりました。
「だが、その呼び名を知っているとなると……。このまま帰す訳には行かぬな」
「はい。我々もこのまま帰されては困ります。ご相談したい事があるのですが、代表者の方にお会いできますでしょうか?」
おぉ!相手のプレッシャーを受け流して対応するロンドさん!カッコいいです!
「…………。里の外における代表者は俺だ。里には俺が認めた者しか連れていけない。まずは俺に説明しろ」
「分かりました。それでは、何処か落ち着いて話せる場所に移動しましょう」
「ここで問題ない」
相手はココの方が良いみたいです。一般人は避難させて、周りを取り囲んでますもんね…。いつでも襲える状態ですか…。
「さぁ、お前達の目的を言え」
ロンドは『仕方がないな…』という表情をして、ローブの男に説明しました。
「世界樹の葉を売って頂きたい」
「駄目だ」
うわぁ…問答無用です…。
「とりあえず理由だけでも聞いていただけませんか?」
「必要ない」
んー…話を聞く気がないみたいですね…。会話になりません…。
「そこを何とか…」
「くどいっ!!」
男の声と同時に、ローブの裾から光る物が飛び出しました。それはロンドに向かって真っ直ぐに飛んでいきます。
俺はロンドの目の前に転移すると、光る物…放たれたダガーを指で挟んで受け止めました。
軽いな…致命傷にはならなかったかもしれない。でもさ…いけない…。それはいけないよ…。
「1つ…言っておこう」
俺は魔王覇気を垂れ流しながらローブの男に向かって話しかけました。
「隠れて取り囲んでる奴も含めて、お前達を倒す事は容易だ」
「う…ぐぅ…」
ローブの男は魔王覇気を浴びて苦しんでいます。
「しかし、ロンドは商談に来ていたし、俺はそんな事をする気は毛頭ない。そして、商談が不成立で終わるのも良いだろう」
「だったら…」
自分たちに何の問題も無いって?それは違うと思うな…。
「だがな、お前達が商談相手ではなく俺たちの敵になると言うのなら…俺が全力でお前達の相手をしてやる。覚えておけ…」
「わ…分かった…」
ローブの男は汗だくで、膝から崩れ落ちそうになっています。理解してくれたらしいので魔王覇気は解除しましょう。そして俺は、ローブの男に話しかけました。
「そうか。ならば、言うべき事があるだろう?」
「あぁ…そうだな。ロンド殿、申し訳なかった」
随分と素直ですね。自分でも早計だったと後悔してたのかもしれません。
「ライト様、助けて頂いてありがとうございます」
「仕事の範囲だ、気にするな。ただ、力尽くで契約を成立させる気はないからな?」
力で脅して契約する様な事には協力できません。それをロンドに言うと、ロンドはにっこりと微笑みました。
「当然です。ロンド商会は変わりましたから!」
変わる前はやってたのか…。
今度こそ恨みから呪われるかもしれませんね…。
「さて、ちょっとしたイベントもありましたが、時には衝突することも仲を深めるためには必要なものです」
「あぁ…そうかもな…」
「と言う事で、仲も深まった事ですし、お話を聞いて頂けますでしょうか?」
「……はぁ」
ローブの男は溜め息を吐くと、フード部分をめくって木の仮面を外しました。
おぉ!耳が長いです!そしてイケメン!!
「名乗っていなかったな。エルフのディートだ。とりあえず話だけは聞こう」
「ありがとうございます!」
「着いてこい」
やっぱり場所を変えるみたいですね。俺たちが黙ってディートに着いていくと、ディートが歩きながら質問してきました。
「お前は何なんだ?」
「冒険者のライト。ただの人間だ」
「お前が人族における普通だとしたら、世界は既に人族の物になっている事だろう」
「と、言われてもな」
異世界人とか魔王とかを説明する訳には行きませんからね…。
「では質問を変えよう。お前とビオス王国の関係は?」
「そうだな。冒険者登録をしたギルド支店がビオス王国にあった。というだけだ」
「そうか…。では、特に思い入れがある訳では無いのだな」
最初は…ね。でも、今となってはちょっと違います。国家に思い入れはありませんが、そこに住んでる人達には…。
カインを始めとした冒険者の人達、ドミニクさんやエルマさんやギルマス達とか…。バレッタ…ロンド…セリア……。改めて考えると、凄く助けられてるな…。
でも、それを言うとライトの弱みになってしまいます。だから、僕は対外的にはこう言うんです…。
「あぁ。特に興味は無い」
「………分かった。ひとまず言葉のまま取っておく」
むむ…。言葉のまま取らないとどうなるんでしょうね…。
それにしても、随分と奥まで歩いてきました。町の反対側まで来てると思います。目の前には平屋が並んでいて、ディートはその中の一軒に向かっています。
「ここだ。入れ」
「承知しました。馬などはどちらに預ければ宜しいでしょうか?」
「あー…その大きなアリコーン以外は隣にある厩舎に繋げてくれ」
「分かりました」
説明されたロンドは、部下達に指示を出していきます。えっと…で、コクヨクは?
俺はディートを見つめました。
「そのアリコーンが入れる建物は無い。その辺にでも留めておけ」
確かに、見る限り外に留めておくしかなさそうです。まぁ、頭の良いコクヨクを繋いでおく必要なんて本当は無いんですけどね。
「分かった。リル、コクヨクから降りてくれ」
「はーい!」
「!?」
ん?何だかエルフ達の雰囲気が変わりました。どうしたんだろう?
「ライト…。その娘は名をリルと言うのか?」
「あぁ、そうだが…どうかしたのか?」
「リルはリルだよー!」
「…………いや。何でもない」
いやいやいやいや。その反応は何かあるでしょう?
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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