仕入れの品
「ここが目的地の町、エイルードか。ここは…本当にアクル王国なのか?」
人族至上主義なアクル王国では、人族以外を見る事がとても少ないです。でも、ここでは獣人の人も何人か見かけました。それと…建物がボロボロなのも気になります。
「少し正確に言いますと今はアクル王国ですね」
ロンドが答えてくれましたが、いまいち分かりません…。
「どういう事だ?」
「この町はアクル王国とダグルール獣王国の狭間にあるんです。その所為で取ったり取られたり…いまはアクル王国ですが明日にはどうなっているか分かりません。先日アクル王国の駐屯兵が追い払われたらしいので、オーバーではなく本当にあり得る状態です」
最前線の町なんですね…。それで建物もボロボロになってるのか…。
「アクル王国の兵が追い出されたのであれば、今はダグルール獣王国なんじゃないのか?」
「ダグルール側の正式な通達がまだなのもありますが、それ以前にダグルール獣王国の兵がまだ入れておりません。そのため、ダグルール獣王国が取り返したとは言い難い状況です」
「ん?では、誰がアクル王国の駐屯兵を追い払ったんだ?」
ダグルール獣王国の軍が追い払ったんだと思ったら違うみたいです。だとしたら、アクル王国と戦っていたのは誰なんでしょう?
「実は、それこそが私の会いたい相手になります。この土地の先住民ですね」
「なるほど。アクル王国の駐屯兵を追い払ったのは地元の民なのか。強いんだな」
「元々、5年前までは先住民達がこの土地を治めておりました。そのため、まだ先住民には独立した組織力があります」
なるほど…。ついでに5年前の事とかも聞いてみようかな。
「先住民は元々独立していたのに、なぜ5年前にはダグルール獣王国に属したんだ?」
「そうですね…」
ロンドが、どう話そうか考えてくれてます。少しすると内容が固まったみたいで、経緯を話し始めました。
「まずはダグルール獣王国の話になってしまいますが、建国の理由はアクル王国からの迫害に対する一念発起です。惨殺されるか奴隷にされるか…人族以外の扱いは酷いものでした」
そう言えば、ここまで酷いのってアクル王国くらいなんですよね。何か理由があるのかな?後で聞いてみましょう。
「ダグルール様はアクル王国に対向する為の仲間を集めだしました。詳細は不明なのですがタケルという人が活躍されたと聞いています」
タケル…か。名前からすると日本人っぽいですね。アクル王国に召喚されたんだとしたら、ダグルール側に付くのも納得です。
「そして、そのタケル殿がこの土地の先住民を説得したそうです。当時、この土地の秘宝に関してアクル王国とのいざこざがあり、タケル殿が解決したらしい話を聞いた事があります。まぁ、吟遊詩人の詩なので何処まで信じて良いものかは分かりませんが…」
んー。ロンドの話を聞いてて気になる事がいくつかありますね…。
「ロンド、いくつか質問しても良いか?」
「もちろんです!」
まずは最初に気になった事を聞いてみましょう。
「アクル王国は何故そこまで人族以外を嫌うんだ?」
「そうですね…。私見ですが、勇者に傾倒しているからだと思います。アクル王国は千年前に勇者を召喚したエルザ様が起こした国です。エルザ様の子には勇者の血が入ってるとか入ってないとか噂になっております」
魔王を倒した勇者とお姫様が…か。確かに物語としてはよく有りそうな話ですよね。でも、獣人との繋がりがまだ分かりません。
「そして…千年前の戦争において、獣人は魔王側に着いていたそうです。つまり、獣人は愛する勇者様の敵。そのため、アクル王国は獣人を魔物として扱っているのではないかと」
「そうか…気持ちは分からなくはないが、現代を生きる者には関係ないだろうに…」
まぁ、千年の間で他にも色々な事があったのかもしれませんが…。とりあえず根幹は理解できた気がします。
「他にも聞きたい事があるんだが、ロンドの話し振りからして原住民は人族では無いのか?」
「はい。非常に珍しい種族なのですがエルフと言います」
おっと!ザ・ファンタジーな名前が出てきましたね!特徴も似た感じなのかな?
「エルフと言うと…耳が長くて、細身で、寿命が長い感じか?」
「ご存じでしたか。おっしゃる通りです。更に言えば魔力が高いのも特徴です」
おぉ!いかにもなイメージで正解みたいです!それは是非一目会ってみたいですね!
「最後の質問なんだが…話の途中で出た原住民の秘宝とやらは何だ?まさか仕入れたい品とは…」
「流石はライト様。鋭いですな。確かにそれこそが仕入れたい品です。その物とは世界樹の葉になります」
なるほど…。原因はそれかな…。
「そうか…。その情報は、もしかしたら漏れているのかもしれないな」
「え?どうかされたのですか?」
最初は、町に入った者全員に対してかと思ったんですけどね。人数からしてそういう訳ではなさそうです。
「もしかしたら、すぐにエルフに会えるかもな」
俺は、周りを囲む気配がどんどん増えるのを感じながら、1人呟きました。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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