偶然?
誤字報告して頂いた方、ありがとうございます!非常に助かります!
「何やってるんですの?やり過ぎない様に言いましたわよね?」
何故かミレーヌからお説教されています…。
「怪我人も出さずに頑張ったと思うんだが?」
「怪我人を出さずに完勝してしまうのがやり過ぎなんですわ」
ミレーヌ…難しい事をおっしゃる…。
「怪我をさせずに勝つって事が結構な格下扱いなのは分かりますわね?Aランク、Bランクの100人がかりが格下である事を証明してどうしますの?」
そうなんだけど…証明する必要はあるんですよ。それをミレーヌに説明しようと思ったらハルトが先に説明してくれました。
「ははは。ミレーヌ様、目指してる所が違うんですよ」
「どういう事ですの?」
「Aランク100人が格下であること。それがSランク相当である証明の1つになるんです。更に言うと、Sランクに上げないと来年も金クラスを荒らすぞ?っていう無言の圧力にもなりますね」
そこまで言う気は無かったんだけど…。来年になる前に日本に帰りたいし…。
「あぁ、そういう…。ライトっていま何ランクでしたっけ?」
「Cランクだな」
「それは歪ですわね…。殆ど詐欺ですわ」
いや、俺が意図的にやってる訳じゃないし…。
「バルトロ帝国に移籍すれば私の権限ですぐSランクにさせますわよ?」
「別に今のままで構わない。どうせすぐにSランクにはなる。俺の専属受付嬢は優秀なんでね」
「バレッタだっけ?噂には聞いてるよ。レイオスには勿体無いってね。どうせなら2人で本部に移籍しないか?」
「バレッタを説得できたらな」
「お、ライト的には有りなのか。ちょっと頑張ってみるかなぁ」
生まれ育った町みたいだしバレッタにも色々と都合があると思います。既にバレッタ以外の専属は考えられないので、バレッタがいるなら俺は何処でも良いかな。
「先程の予選見せてもらった。なかなかの強者の様だな」
移籍について考えていると、知らない男…男だよね?たぶん男から話し掛けられました。後ろには予選9組を突破したアマンダさんがいます。
性別があやふやなのは…外見が虎で分からないんですよ…。でも喋り方とか雰囲気からすると、たぶん男性だと思います…。
「そうか。お前は?」
「ふはは。知らぬか。冒険者には知られていると勝手に思い込んでいた。俺にも驕りがあった様だ」
「ライト。さっき話した神狼の牙のリーダーだよ」
「あぁ、優勝候補筆頭の」
「ダグルール獣王国のAランク冒険者ダリルだ。よろしく頼む」
「あぁ。こちらこそ。後ろはアマンダだな?」
「な……」
あれ、何だかアマンダさんが引いてます。早く挨拶しようと思って聞いただけなんだけど…。
すると、ダリルが笑いながら揶揄ってきました。
「かかかかっ!俺の事は知らぬのにアマンダの事は知っているのか!どうやらライトは随分と女好きの様だな!」
しまった…。リーダーの事を知らないのに女性メンバーだけピンポイントに知ってるって、確かに誤解を与えるかもしれない…。
すると、アマンダさんがちょっと顔を赤らめながら俺の質問に答えてくれました。
「私は確かにアマンダですが…。ただ、我々は現在敵同士です。色事に現を抜かしている場合では無いと思います!」
おぉ…。やっぱり思いっきり誤解させてました…。これは俺が悪いですよね。
「悪い。違うんだ。予選9組を見ていた時にハルトに教えて貰ったんだ」
「え…?」
「あぁ、本当だぜ。俺がライトに教えたんだ。ライトがアマンダ嬢を狙ってると思われたのなら誤解だ」
「えぇ…?」
勘違いに気付いたアマンダさんが段々と赤くなっていきます。そして、ダリルがトドメの一言を放ちました。
「くくく…。アマンダも驕りがあった様だな」
「う…ううぅ…」
暗に自意識過剰だと言われたアマンダさんが真っ赤になってしまいました。これはこれで可愛いかもしれません…。
「ライト!本戦で当たったら叩きのめしますから!覚えておきなさい!」
えー。それは流石に酷くないですか?でも、本気で掛かってきてくれるのは望む所です。
「あぁ、掛かってこい。アマンダもダリルも俺が倒してみせよう」
「何ですって!?」
「ほほぅ。大きく出たな。俺もか」
「優勝するつもりだからな。2人とも途中で負けてくれるなよ?」
「むむむむむむむむ…!私はこれで失礼します!本戦では精々吠え面を描かない様に気をつける事ですね!」
あらら…。アマンダさんは怒って行ってしまいました。でも、何故かダリルさんは残っています。
そんな俺達を見て、黙って聞いていたミレーヌが呟きました。
「やっぱりライトって結構好戦的じゃありませんこと?」
「ミレーヌ様。確かにそうですね」
いや、目的のために敢えてそうしてるだけですから…。そんな話をしていると、急にダリルさんが謝ってきました。
「アマンダが機嫌を悪くしてしまいすまなかった。あの程度の戦前口上で冷静さを失うとは」
ダリルさんは戦闘前の煽り合いも風情の1つだと捉えてるみたいです。まぁアマンダさんが冷静さを失った原因はダリルさんの余計な一言だと思いますけど…。
「大丈夫だ。それよりダリルに聞きたい事があるんだが良いか?」
「構わんぞ。なんだ?」
「ダグルール獣王国についてだ。申し訳ないがあまり知らなくてな」
「気にするな。出来たばかりの国だから仕方がない」
「獣王国という事はダリルの様な獣人が多い国なのか?」
「あぁ。9割方は獣人だ。ちなみに初代国王のダグルール様はライオンの獣人でいらっしゃる」
「ライオンか。強そうだな」
「強いぞ。Sランクには届かないが俺よりは強い」
ほう…。それはいつか戦ってみたいものですね。でも、今それ以上に気になるのはモフモフパラダイスについてでしょう。
「獣人というのは、みなダリルの様に…その…何と言うか…モフモフなのか?」
「ん……?まぁ、5割程だな。もう半分は耳だけとか耳と尻尾だけとか…血の濃さによって様々だ」
「そ…そうか…」
ダグルール獣王国。近い将来、必ず行きましょう。俺が心のメモ帳に赤字で『重要!』と記入した所で、ミレーヌが冷たい目線で名誉毀損な事を言ってきました。
「メイドロボといい。ライトの性癖はなかなかマニアックですわね」
「性癖とはちょっと違う」
「あら、ちょっとなんですのね…」
この話題は危険だ!
「そろそろ本戦組み合わせのくじ引き時間だ。本戦会場に移動しよう」
「もう少し時間がありますけど…。まぁ、そういう事にしてあげますわ…」
と言う事で、ダリルも一緒に本戦会場に向かいました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「これより、金ランクのトーナメント抽選を行います!」
既に鉄、銅、銀の抽選は終わりました。どうやらシードの6枠は偏らない様に場所が決められていて、6枠内での抽選と残り10枠での抽選に分けてやるみたいです。
トーナメント表はA面とB面に分かれていて、各面8人ずつという感じですね。
しかし、トーナメントの組み合わせで観客が盛り上がりを見せる中、観客席では不穏な笑みを溢している人もいました。
「くくくく…。これで仮面野郎の優勝はありえねぇ。悔しがる姿を見るのが楽しみだぜ…」
そして、まずはシード6人のクジが始まりました。1人引く事に会場から歓声が上がります。
なかなか偏りましたね…。この大会では誰が優勝するのかという賭けも行われているのですが、オッズ1位のダリルがA面、2位から4位がB面、5位6位がA面となりました。ダリルに楽な展開です。
あ、ちなみに俺は自分の優勝に全財産を賭けてます。当然ですね!
「ダリル、俺がB面になれば決勝進出は大丈夫そうだな」
「ライトがA面でも大丈夫だ。何なら引いてみろ」
「そうしたいのは山々だが、残念ながら俺にその機会は無い」
「あぁ…10組か…」
残り10枠のくじ引きは組順にやるらしいんです。なので、予選10組からの勝ち上がりである俺はラス1を引くだけなんですよね…。
と言う事で、予選1組からどんどんクジが引かれて行きます。ダリルはA-8なんだけど、なかなか対戦相手が決まりません。あれ…本当にA-7が引かれないな…。
あと残すは2人だけ、つまりはアマンダさんと俺だけです。そして、残っている枠がA-7とB-7…。アマンダさんがA-7を引いてしまうと同パーティ対決になってしまいます。
そして、アマンダさんがくじを引いて司会者に渡しました。
「あ…アマンダ選手は……A-7!A-7です!なんと初戦から神狼の牙対決になりました!!」
観客席からは大きなどよめきの声が上がりました。
トーナメント戦は怪我をしない事や疲労を抑える事が重要になります。同パーティだと本気で戦えるのでしょうか?ダリルの優勝を第1に考えると、アマンダさんは棄権する可能性がありますね。
それと、トーナメントが順当に進んだ場合、俺の対戦相手は全員シード選手になります。オッズ順位で言うと、4位、3位、2位、1位の順番で戦うことになりそうです。
「偶然なのか?なんだこの組み合わせは…」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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