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前夜祭(再会)

2023/06/01 誤字を修正しました。

「兵士以外まで…。酷いな…」

「全くだ。ただ、やられてからそんなに時間は経ってない。被害が広がる前に急いで犯人を捕まえるぞ」


 俺達が城の中に入ってみると何体かの死体が転がっていました…。殆どが兵士なんだけど執事の様な人も混じっています。何故だかみんな抵抗した様子が見当たりません…。

 ミレーヌとハルトは王城で生活してるみたいだから顔見知りもいたんでしょう…。2人から怒りの感情が溢れているのを感じます…。

 でも、ミレーヌにはそれ以上に気掛かりな事があったみたいです。


「お…お父様が心配です!」


 そう言って突然ミレーヌが走り出しました。凄い勢いで大階段を駆け上がります。そう言えばミレーヌ自身も一人前の冒険者なんでしたね…。


「ミレーヌ様!いけません!」

「ミレーヌ!危ないから1人で行くな!」


 俺とハルトは急いでミレーヌを追いかけます。しかし、追いつく前にミレーヌは階段を登りきりました。そして、何かに気付いた様子で急に声を上げます。


「なっ!何者です!!」


 これは走ってる場合じゃない…。

 俺は転移でミレーヌの前に瞬間移動しました。そして…ミレーヌが見たものを俺も確認します…。子供だ…。

 そこにいたのは、お城見学を案内してもらっていた迷子の少年でした。


「う…うわーん!怖かったよー!」


 少年は泣きながらこちらに走ってきます。俺は少年を抱き止めた後、両肩を掴んで質問をしました。


「俺達と一緒に居れば大丈夫だ。君は何で城の中にいるんだ?」

「えっとね…。兵隊のおじちゃんに連れられてお城の周りを回ってたんだけど…門の所に着いたら怖い人達が現れて兵士のおじちゃん達と戦いになったんだ…」

「それで君達はどうしたんだ?」

「兵士のおじちゃんが城の中に逃げろって…。城の中に入ったら他の子とはぐれて…更に道に迷っちゃって…。1人で怖かったんだよ…」


 俺は少年の事を正面からしっかりと見つめた(・・・・)。これは…じっくりと情報を聞き出したいな…。


「ライト!お父様が心配です!」

「ミレーヌ。ちょっとは冷静になったか?全員で行くぞ」

「その子を1人にする訳にも行きませんわね。わかりましたわ」


 ハルトもとっくに合流していたので、ここから全員で奥へ進むことになりました。俺は歩きながら少年に質問をします。


「君の名前は?」

「僕はトーマだよ!」

「トーマは帝国生まれなのか?」

「んーん。違う国から来たんだ」


 トーマは首を横に振って否定しました。そんなトーマの発言にミレーヌが補足の様な話をします。


「バルトロ帝国は亡命や難民も受け入れております。スラム街に居らっしゃったという事でしたら、難民の可能性が高いですわね」


 なるほど。そういう可能性もあるんですね…。でもたぶん…。


「生まれ育ったのはビオス王国じゃないか?更に言えば…ドルツ(・・・)な気がするんだが?」

「え?おじちゃん凄い…何で分かったの?」


 やっぱりか…。


「ビオス王国の後は何処に住んでたんだ?」

「え…その後…その後は…あ…ああ…あ…」


 少年が何故か震え出しました…。何かのトラウマに触れてしまった様です…。


「ライト。もう到着しますわ」

「あぁ。分かった。トーマ、大丈夫か?」

「う…うん…ごめんね。大丈夫だよ!」

「じゃあ扉を開けるぞ?」


 トーマはどうにか落ち着いてくれました。ひとまず質問はここまでかな…。

 そして、玉座の間の大きな扉をハルトが開くと、中の様子が見えて来て…ミレーヌが声にならない声を出しました…。


「お…お父…さま?」


 目に飛び込んできたのは、玉座に座る皇帝の姿と、その腹部から床へと広がるおびただしい量の血でした。


 皇帝の姿を確認した俺達は皇帝の元へと急ぎます。そして、俺はすぐに聖域を展開しました。しかし…見た瞬間に分かってはいたのですが…やはり治療は開始されません。


「ミレーヌ…悪いが手遅れだ…」

「そんな…。お父様!お父様!」


 皇帝に声をかけるミレーヌ。止血しようとするハルト。治療魔法をかける俺。俺達は皇帝に意識を集中しすぎていて隙だらけになっていました。

 と言うか、俺はそう見せて(・・・)いました。


 ピュウイイイアアアアアアウウウン!


 俺達の背後から…光の束が飛んで来ました。しかし、俺の左手に遮られて拡散・湾曲し、周囲に霧散していきます。

 俺の左手に光属性の魔力を集中させて受け止めた結果、それが相手の光属性魔法を弾き返したみたいです。


「な…なんで…」

「バレバレだ」


 不意打ちで光魔法を放った相手…トーマは驚愕の顔をしています。

 門衛は自分達を逃して戦ったと言っていたが、戦闘の形跡はありませんでした。王城の人間に保護されずに1人でいたのもおかしいと思います。王城の人間に情報が渡っていればもっと警戒した跡があるはずです。

 トーマの話は、嘘を吐くにしてもとても稚拙な嘘でした。


「じゃあ…何ですぐに捕まえなかったのさ?」

「情報が欲しくてな…」


 発言が怪しかったのでトーマのステータスを確認した訳なんだけど…なんでこんな事になっているのかが不思議だったんだ…。それで、ヒントが出てこないかな?と思って雑談の様にトーマと話してみたんです。


 <ステータス>

 ■名前:トーマ

 ■種族:人族

 ■性別:男

 ■年齢:10

 ■レベル:16

 ■魔法

  光(劣化):2

 ■称号:勇者(人工)


 勇者…人工(・・)…?


「やっぱりおじちゃんは悪人なんだね。悪者退治を邪魔する悪人なんだ!」

「何を言ってるんだ…」

「本当はもっとお城の中の悪者を退治するはずだったのに…。こんなに早く来たって事は暴動も止めちゃったんでしょ?コイン配るのも邪魔をするし…。もっと良い事をいっぱいやらないとお家に帰れないじゃないか!」


 イザベラ王女…。ドルツから誘拐した子供に何をしたんだよ…。この子にはもっと色々と聞かないといけないな…。


「ミレーヌ。この子は俺に預け…」

 あれ…。声が…反射してくる…。


 俺は即座に隼人の言葉を思い出していた。

『相手の声が聞こえない状態にして倒すから、沈黙とか呼ばれてるみたいだな』


 剣を抜いている時間は無さそうです…。俺は首の横に光の剣を生み出しました。俺の首を落とそうと横凪された剣は…光の剣によって真っ二つとなり、高い音を立てて床に転がります。


 あなたは…いったい何度僕を殺そうとすれば気が済むんですか…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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