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コクヨク側の出来事

「コクヨク。こっちは終わ…った…んだが……。いったいどうしたんだ?」

「ブルルル…」


 ゲートから出てみると、コクヨクが全身タトゥーだらけの男を踏みつけていました。

 俺はコクヨクに近づくと、顔の近くで小声になって話し掛けます。


(コクヨク。何があったのか小声で説明してもらえるか?)

(はっ!承知致しました…)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



※合流する15分ほど前


「隠密行動を申し付かっておったのだが…。致し方がないのである」

「ブルルル…」


 コクヨクの前には、古臭い喋り方をする武者姿の男と人型の魔物が数体並んでいます。


「ま…魔物だぁ!逃げろー!」


 魔物の存在に気付いた住人は我先にと逃げ始めました。基本的に帝都の中では従魔以外の魔物を見る事はありません。みんなすぐに異常事態だと気付いた様です。

 そして、子供がコクヨクと一緒に遊んでいるのを何人かの親は見守っていたのでしょう。子供を抱えると急いで逃げて行きます。


(ふむ…。あの鎧は魔王様が趣味で作成されていたと言うものに似ているな。あとはレッサーデーモンか…)


 コクヨクは残った子供達を口で咥えて全員下に降ろしました。そして、立ち上がってから武者鎧の前に行き高い位置から睨み付けます。

 そんなコクヨクに対して、武者鎧は喋り出しました。


「拙者の相棒が姿を消したのである。犯人が貴公の主人である事は分かっておる。報復と邪魔者の戦力削減を兼ねてお主の首を頂く。恨むなら自分の主人を恨まれよ」


 武者鎧は自分の勝利を疑っていない感じです。

 確かにBランクに分類されている普通のアリコーンであれば勝てそうな雰囲気があります。レッサーデーモンの支援もあれば余裕でしょう。

 そう…普通のアリコーンであれば…。


「いざ!参る!」


 武者鎧は刀を振り上げてコクヨクに斬りかかりました。しかし…刀が振り下ろされる前にコクヨクの姿は消えてしまいます。

 そして大きな音が響きました。


 ドンッッッ!!!!


 激しい音がしたのは武者鎧の後ろです。武者鎧が音のした方へ振り返ると、そこには消えたはずのコクヨクと弾け飛ぶレッサーデーモンの姿が映っていました。


「な…何をしたのだ?」


 何をしたのかと言えば、ダッシュして体当たりしただけです。しかし、それは初速100キロのダンプカーに轢かれた様なものなのですが…。


「くっ!お主達、全員でかかれ!」


 残りのレッサーデーモンは、武者鎧の指示に従ってコクヨクを取り囲もうとしています。すると、コクヨクの角が淡く光り始めました。


 バチッ…バチバチッ…。


 コクヨクの角が何だか放電している様に見えますね…。

 その間にレッサーデーモンはコクヨクを囲みきってしまいました。そして、タイミングを合わせて一斉に飛び掛かります。


 バジジジジジジジジジッ!!


 しかし、そのタイミングでコクヨクの角から全周囲に対して雷撃が放出されました。角を中心に広がる雷撃の射線は、まるで雷でできた鳥籠の様です。


「グギャアアアアアア!!」


 雷撃を受けたレッサーデーモンは、黒焦げになってその場に崩れ落ちました。


「き…貴様は何なのだ…。こんなもの…既にアリコーンなどでは無いわ!」


 1人残った武者鎧は、コクヨクの後ろから刀で斬りかかります。

 馬鹿な奴です…馬の後ろに立つとは…。


「ヒヒーン!!」

 ドゴォッ!!


 コクヨクの後ろ蹴りは武者鎧に見事命中しました。いや、もう武者鎧と呼ぶ訳にはいかないでしょう。後ろ蹴りを喰らった鎧は砕け散り、中からは全身に紋様の入った悪魔風の男が(あらわ)となりました。


「ぐっ…ぐはぁ…。おのれ…」


 倒れた紋様男の後ろには…前足を1本上げたコクヨクが立っています。そしてコクヨクは…そのまま紋様男を踏み抜きました。


 ズンッ!!

「ぐへぇ!!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



(という事がありました)

(なるほど…)


 そう言えばサリオンが、怪人は全身鎧みたい(・・・・・・)な装備をしてるって言ってたな。実は複数犯でギルドが発見してたのは紋様男の方だったのか…。コクヨクお手柄だな。

 魔眼で見てみると紋様男も下級魔族でした。無謀な…。コクヨクの強さが分からなかったのか…。


 普通のアリコーンはBランクですが奈落の底にいるのは古代種なので1ランク上です。その中でも特殊個体なコクヨクはもっと強いため、初めからAランク上位の力を持っていました。

 そして…俺の魔石を吸収する事で更に強化された結果、現在はSランク下位の力を持っています。ハルトが警戒するくらい強いんですよ…。


「コクヨクありがとう。クエスト的にはこいつの方が重要だったかもしれない」

「ヒヒーン!」


 褒められたコクヨクは嬉しそうに嘶いて(いなないて)います。

 では、念のため鎧を回収してからギルドに戻ることにしましょう。


 俺は砕け散った鎧をアイテムボックスに仕舞うと、周囲の人に魔物の討伐が終わった旨を説明しました。

 その際、巻き込んだお詫びとして貯蔵してる食料から串焼きなどを渡します。もうすぐ夕食時だからね。


 そして子供達にも食糧を配ってから、俺はギルドに戻りました。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「…と言うわけで、こいつらが怪人の正体だ」

「さすが解決が早い。いや、早過ぎるね…。しかも犯人が魔族だったとは…」


 俺が今いるのはギルド本部の特別応接室です。最初は受付嬢だけだったのですが、犯人が魔族だった事を伝えるとキャパシティをオーバーしたみたいですぐにサリオンも呼ばれました。


「金を準備していたのはヘルマンという魔族みたいだ。そいつはビオス王国で子供の誘拐等で暗躍していた。今回も何か企んでいる可能性が高い」

「そんな情報まで…助かる」

「それ以外は特に聞けてない。尋問はクエスト外だと思うが認識相違ないか?」

「あぁ。尋問はこちらで行う。クエストとしては二重丸で達成だよ。特別報酬も払おう」


 なかなかの高評価を頂けたみたいですね。Sランク承認に一歩近づいたかな?


「そうか。報酬は口座に入れておいてくれ」

「了解だ。では、後は武闘大会かな?」

「そうだな。金クラスで登録しておいた」


 俺の発言を聞いて受付嬢が驚いた表情をしています。Cランクなのに金クラスで登録したからでしょうね。

 しかし、サリオンは納得してる様に頷いています。


「あぁ、ライト君ならそうすべきだね。銀クラスを荒らされても困る。大会、楽しみにしてるよ」

「期待に応えてみせよう。きっと今までで1番面白い大会になると思うぞ」


 そう言い残して、俺はギルド本部を後にしました。


 これからリッケルトでリルと合流して『コクヨク子供対応お疲れ様でした慰労会』を開催したいと思います。

 本当に今日はお疲れ様でした…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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